ステップ3:必要な断熱レベルを決める
これは結構難しい話です。だけど設計者や施工者に「なめられない」ためには、やはり知識の武装が必要です。省エネルギー基準では推奨する断熱のレベルを昭和55年に初めて定め、平成4年と平成11年、平成25年に3度大きく改正し、平成28年には建築物省エネ法による基準となり今に至ります。平成11年や平成25年の基準がよく「H11基準」「H25基準」、または「等級4」と言われます。
この等級4が「過剰な性能」とか「十分すぎる性能」であると言う業者も少なくありません。図5を見ると、住宅ストック全体ではたったの5%にしか過ぎず、新築でも半分の家がクリアしている程度、という状況です。中小工務店対象のアンケートでは、実に半分以上が等級4の家を「建てたことがない」と答えています。
しかしこの等級4、H11基準ははるか昔に推奨とされたレベル。現在の視点からみると、少しもハイレベルではありません。もはや「H11基準は最低限のレベル」、と認識するべきでしょう。
より高みを目指す人にとっては、建築環境のエキスパートが定めたHEAT20のG1・G2のレベルが参考になるでしょう。G1レベルはH11基準からわずかな初期コストアップで達成できるレベル、G2のは多少の初期コストはかかりますが、より大きなメリットを感じることができます。断熱のメリットを感じたければ、少なくともG1レベル、できればG2のレベルがおすすめです。
なお、断熱のレベルは一般に「熱損失係数Q値」や「外皮平均熱貫流率UA値」で示されます。この数字が小さいほど熱は逃げにくくなります。オススメはH11やH25基準・G1・G2レベルの数字を覚えておくこと。後で設計者・施工者と議論する時に(かなり)プレッシャーをかけられます。寒冷地を中心に、最近では温暖地でもQ値が1を切る物件も続々登場しています。そのレベルでは圧倒的な暖かさ・省エネ効果を感じることができるはず。イニシャルコストは若干高くなりますが、「最高の家」をぜひ検討してみてください。
ステップ4:気密のレベルは現場力にあり
必要な断熱レベルは見えてきましたが、はじめにお伝えしたように「断熱だけ住宅」は危険です。気密のチカラで空気の流れをコントロールしてこそ、はじめて暖かくて長持ちする家が手に入るのです。断熱レベルは図面である程度分かりますが、気密は分かりません。気密のレベルは現場での施工の「技術レベル」と「丁寧さ」で決まるのです。
先に、等級4、H11基準は最低限の断熱レベルと言いました。だけど、気密レベルがしっかり確保されればそれなりに暖かい家にはなります(図6)。大事なのは、現場の施工力なのです。逆に図面上の断熱レベルがいくらよくても、気密が伴わなければ無意味です。残念ながら国の省エネ基準では、気密の性能は規定されていません。現場で測ってみなければ分からない気密性能を、国は途中で基準から外してしまったのです。率直なところ、世の中には気密性能を伴わない「なんちゃって高断熱住宅」が溢れかえっています。気密をキチンととるということは、骨が折れる丁寧な作業の積み重ねです。本当に満足したいなら現場力が絶対に不可欠なことを理解しておきましょう。
気密性のレベルは、相当隙間面積C値で規定されています。数字が小さいほど気密性が高く、真面目な業者はちゃんと計測して把握しています。C値が小さいことは、設計と施工の総合的なレベルの高さを端的に表している、という専門家も多くいるのです。C値は、まずは「1」を目安にしましょう。今どき3とか5とかではスカスカ過ぎ、0.5とかだったら立派、という感じに判断して大体正解です。
ステップ5:いよいよ設計者・施工者と対決!
こうして理論武装した上で、いよいよ設計者・施工者を決めていくことになります。間取りやデザイン・予算…。たくさんのことを議論したいでしょうが、ちょっとだけ断熱・気密のことも聞いてみてください。相手によって驚くほど違った答えが得られるでしょう。ここでのポイントは、「相手の立場になって考える」ことです。人はだれでも、得意なことは大事そうに、苦手なことは適当に話したがるものです。業者も人間。もちろんあなたよりも家づくりに詳しいですが、ビビることはありません。
しつこいですが適切な設計と施工がセットにならないと、これまで議論してきたことは絶対に現実のものになりません。そのためには信頼できる業者を探すこと。それができるのは、あなただけなのです。自分と家族の幸せのために。グッドラック!
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