大雪山の麓にあり、豊かな自然に恵まれた東川町。写真の町としても知られ、芸術文化が盛んな土地でもあります。小西健二音楽堂に置かれたピアノにほれ込んで6年前に関西から東川町に移住してきた長尾さんご夫妻。ご主人の匡祐さんがボーカル、奥さんのyokoさんがピアノのアコースティックユニットを組み、「ドートレトミシー」という名前で音楽活動を行っています。
移住当初は賃貸住宅に住んでいましたが、ご夫妻にはどうしても暮らしたい土地がありました。地元での音楽活動や人々との交流で東川町のコミュニティーになじんでいく中で縁が生まれ、運良く念願の土地を購入することができ、家を建てる準備が整いました。
「この場所でなければ家を建てようと思わなかった」と語るほど思い入れのある土地を手に入れ、自分たちのやりたいことを実現できる家をつくりたい。そう考え工務店を探しましたが、これが難航。諦めかけた頃に思い出したのが、知人が素敵な家を建てた芦野組の存在でした。「芦野組の家は珪藻土の塗り壁や無垢フローリングが標準仕様というのも大きな魅力でした。なるべく自然素材で体に優しい家で暮らしたい私たちの理想に合っていたんです」。
新居のコンセプトは「人が集う家」。自宅でありながらスタジオとしてピアノやボーカルのレッスンを行ったり、時にはミニコンサートもできる空間を希望。また将来的にはゲストハウスやカフェとしても使えるような設備も整えたい、と夢は膨らみます。この家で叶えたいことを伝え、間取りのイメージ図を描き、限られた予算の中でも見えない部分にもこだわり、打ち合わせを重ねて完成したのは、吹き抜けのリビングの窓から緑あふれる庭を望む開放的な家です。
1階をパブリックスペース、2階をプライベートスペースに分けているのが特徴の一つ。リビング・ダイニングは北海道らしい森をイメージし、塗り壁と木を使った内装で外の景色との調和が見事です。2階にはゴロンと横になれる本畳敷きの居間兼寝室を設けています。
照明類やタイルなどにもこだわり、デザインも機能も妥協はしなかったというご夫妻。「実際に住んでみたらコンパクトながら細かく調整されていて、夢を具現化する力のすごさに驚きました。オンとオフの切り替えもできて、とても暮らしやすいです」とyokoさん。願ったとおり友人たちもたくさん訪れ、ミニコンサートも開くなど人が集まる家となりました。隅々まで二人のこだわりが詰まった空間に、今日も包み込むような優しい歌声やピアノの音が響いています。