(株)アトリエマルム / 郡山市・Kさん宅 夫婦30代、子ども3人


郡山市内の利便性の高い住宅街の一角に、 3人の子どもたちの楽しげな声が響く白い家があります。ビルトインガレージを除くと延床面積は30坪に満たない広さですが、 屋内にはスキップフロアを生かした のびやかな空間が広がり、冬には薪ストーブの暖かさに包まれる…。親子の心地よい距離感に配慮した設計で 住まい手の思い描くライフスタイルに ぴったりと寄り添った、 笑顔あふれる住まいを訪ねました。


家族の暮らしへの願いを詰め込んだ
スキップフロアで繋がる心地よい距離感

郡山市西部。幹線道路にも近く通勤、通学、買い物にも便利な住宅地の一角に、白いシンプルな外観が目を引くKさんの家は立っています。1階には自動車が2台(軒下を入れると3台)駐車でき、建物の南側に回り込むと玄関があります。

小さな子どもがいるご夫妻にとって、車は生活に欠かせない移動手段。天気が悪くても気にせずに車に乗り降りできるビルトインガレージは、家づくりの優先条件でした。

ビルトインガレージを組み込んだKさん宅。玄関は建物の南面に配し、同じ敷地内にある親世帯との行き来もしやすい
ビルトインガレージを組み込んだKさん宅。玄関は建物の南面に配し、同じ敷地内にある親世帯との行き来もしやすい
ガレージから玄関へのダイレクトな動線も確保。天候を気にせず出入りがしやすい。土地に高低差があるガレージと玄関は、小階段でつながる
ガレージから玄関へのダイレクトな動線も確保。天候を気にせず出入りがしやすい。土地に高低差があるガレージと玄関は、小階段でつながる

Kさん宅の大きな特徴はスキップフロアを効果的に組み込んだ間取りです。敷地内の高低差も生かし、ガレージから4段上がると玄関土間と寝室、土間から7段上がるとLDK、さらに5段上がると子ども室と、各空間が高さの違いで緩やかにゾーニングされています。

玄関土間には、リビングを正面に見上げるように薪ストーブが据えられています。「実は、私の父が長年薪ストーブを販売していて、子どもの頃から薪ストーブが身近にある生活でした」と奥さん。新居で一冬を過ごした今では、Kさんもその魅力にすっかりはまったそうです。

玄関土間には大きな薪ストーブが置かれている。写真正面のドアの先は寝室とウォークインクローゼット
玄関土間には大きな薪ストーブが置かれている。写真正面のドアの先は寝室とウォークインクローゼット
1階の玄関土間の奥には、寝室として使う和室。広さ3帖ほどのウォークインクローゼットを併設している
1階の玄関土間の奥には、寝室として使う和室。広さ3帖ほどのウォークインクローゼットを併設している
玄関から幅広の小階段を上がって中2階のLDKへ。階段まわりの開口が広く、玄関土間まで上階の光が行き渡る
玄関から幅広の小階段を上って中2階のLDKへ。階段まわりの開口が広く、玄関土間まで上階の光が行き渡る
薪ストーブの炎の前に家族が自然と集まる。玄関ホールの段差やLDKへの階段は、ベンチのようにも使える
薪ストーブの炎の前に家族が自然と集まる。玄関ホールの段差やLDKへの階段は、ベンチのようにも使える

2階の中央に配したアイランドキッチンは、家族みんなの憩いの場所。キッチンの背面収納は引き戸付きで、生活感を隠すことができます。スキップフロアでつながるオープンなフリースペースや子ども室、水まわり上部のロフトは、LDKを囲むように回遊できる設計で、今は子どもたちの絶好の遊び場に。

中2階に配したアイランドキッチンが中心のLDK。奥さんが食事の準備をしながらでも、家族とコミュニケーションが取りやすい
中2階に配したアイランドキッチンが中心のLDK。奥さんが食事の準備をしながらでも、家族とコミュニケーションが取りやすい
白いアイランドキッチンが木の空間に映える。背面収納は扉付きで中が見えず、キッチンまわりをすっきりした印象に保てる
白いアイランドキッチンが木の空間に映える。背面収納は扉付きで中が見えず、キッチンまわりをすっきりした印象に保てる

LDKの隣に配した水まわりは、コンパクトながらも必要な広さと十分な収納を備えている
LDKの隣に配した水まわりは、コンパクトながらも必要な広さと十分な収納を備えている
子ども室はスキップフロアでLDKとつながる
子ども室はスキップフロアでLDKとつながる

住まい全体に一体感があって、どこにいても音や家族の気配が伝わってくる。そんな新居での生活にご夫妻は「幸せを感じています」とにっこり。今日も家族の心豊かな時間が紡がれています。

設計者より

今から20年前にK様の奥様のご実家を設計したご縁から、今回のご相談をいただきました。当初は同じ敷地内にあるK様の実家を解体し、二世帯住宅に建て替える予定で設計が始まりましたが、打ち合わせを進める中で「それぞれの世帯のライフスタイルや価値観を尊重しよう」と、敷地を分割して子世帯を新築。親世帯は既存の建物をリフォームすることになりました。  

K様邸の設計ポイントとしては主に、「ビルトインガレージ」「スキップフロア」「玄関土間の薪ストーブ」「子ども室のつながり」「明るく開放的なLDK」が挙げられます。

キッチン側からリビング方向を見る。テレビまわりは天井が低く、落ち着きのある空間に。ハイサイドライトからの光がLDK全体に明るさをもたらす
キッチン側からリビング方向を見る。テレビまわりは天井が低く、落ち着きのある空間に。ハイサイドライトからの光がLDK全体に明るさをもたらす
水まわりの上部にレイアウトした広いロフト。子ども室とLDKのそれぞれとはしごで行き来ができる設計
水まわりの上部にレイアウトした広いロフト。子ども室とLDKのそれぞれとはしごで行き来ができる設計

かつて倉庫が立っていたこの敷地は地面が道路より高かったので、今回はその段差を利用して空間構成を考えました。1階には車2台を駐車できるビルトインガレージ、そこからスキップフロアでつながる玄関土間、寝室とウォークインクローゼットをレイアウト。ガレージ上部にLDKと水まわりをまとめました。

玄関土間と寝室の上にはフリースペースと子ども室。この2つの空間は一続きですが、個室にもできます。こういったフレキシブルなつくりは「家族の適度な距離感と子どもたちの協調性を育みたい」というご夫妻の希望によるものです。

2階のフリースペースと2つの子ども室は、今のところは扉を開け放してワンルームで活用。子どもたちの絶好の遊び場になっており、今日もにぎやかで楽しげな気配と声が響いている
2階のフリースペースと2つの子ども室は、今のところは扉を開け放してワンルームで活用。子どもたちの絶好の遊び場になっており、今日もにぎやかで楽しげな気配と声が響いている
天井が高く広々として、明るく開放的なLDK。中2階にあって窓の配置も検討されているため、外からの視線を気にすることなくのびのびと過ごせる
天井が高く広々として、明るく開放的なLDK。中2階にあって窓の配置も検討されているため、外からの視線を気にすることなくのびのびと過ごせる
薪ストーブはLDKからよく見える場所に設置。1階の土間に置くことで日常の手入れや薪の搬入がしやすく、熱効率も良い
薪ストーブはLDKからよく見える場所に設置。1階の土間に置くことで日常の手入れや薪の搬入がしやすく、熱効率も良い

薪ストーブについては奥様のお父様に基本設計の段階から相談させていただきました。薪ストーブ本体の選び方から配置、さらに薪の保管や補充の動線、煙突の保守管理など、私自身も改めて多くを勉強させていただきました。

DATA
家族構成:夫婦30代、子ども3人
延床面積:134.97㎡(約40坪)
敷地面積:124.88㎡(約37坪)
竣  工:令和5年2月
構造形式:在来工法

<主な外部仕上げ>
屋根:ガルバリウム鋼板 一部塩ビシート防水
外壁:ガルバリウム鋼板 一部マホガニー羽目板

<主な内部仕上げ>
天井:構造用合板素地
壁 :ビニールクロス
床 :オークフローリング