新陳代謝を促進し、疲労回復や免疫力向上に期待ができるなど、「ととのう」という表現と共に空前のブームを巻き起こしている「サウナ」。最近では、自宅でより気軽にサウナを楽しみたいと考える人も増えてきているそう。そこで今回は、自宅でサウナに必要な設備や留意点についてご紹介します。
サウナの魅力と効果とは
サウナってどんなもの?
サウナとは、高温の室内で体を温めて発汗を促す温浴方法のこと。昭和時代に第一次、第二次ブームが訪れ、現在は第三次サウナブームだと言われています。第三次ブーム前の主流は、遠赤外線ヒーターの放射熱で直接体を温める「昭和のカラカラサウナ」と呼ばれるもの。対して、現在の主流は「フィンランド式サウナ」で、遠赤外線サウナと同じく「ドライサウナ」として括られますが、熱したサウナストーンにアロマ水をかけ、発生した蒸気で香りを楽しみながら体を温める「ロウリュ」と呼ばれる入浴法です。
ヒリヒリとした熱さの遠赤外線サウナとは異なり、空気を通して伝わるフィンランド式サウナは熱の伝わり方が優しく、息苦しさもありません。また、遠赤外線サウナの施設は、商用の三相電源さえあればヒーターの入れ替えだけでフィンランド式サウナに転換することが容易。普及のしやすさも、第三次サウナブームの後押しになったと言えるでしょう。
フィンランドでのサウナ事情
フィンランドはサウナの発祥地。諸説はありますが、6000年以上前からサウナの原型があったとされています。緯度が高いので夏は太陽が沈まない白夜が続きますが、冬は太陽が昇るのが遅くて沈むのが早い厳しい環境。暗くて寒い冬が長く続く気候の中で、サウナは自然健康法の一つとして長く受け継がれていきました。自宅や別荘にサウナがあるのは当たり前で、人口550万人に対して、サウナの数はなんと約300万台あると言われ、日本のお風呂のように暮らしの一部としてなじんでいます。
日本のフィンランド式サウナの室内温度は80〜100度ですが、フィンランドでは60〜80度が主流。大人だけではなく、赤ちゃんも入ることができる温度なので、昼寝や度数の低いアルコールを楽しめる過ごしやすい環境であることも、長く親しまれる理由の一つではないでしょうか。
サウナで「ととのう」とは
サウナ愛好家が口にする「ととのう」ですが、実はこの感覚は日本独自のものです。サウナ→水風呂→外気浴による休憩の1セットを何度か繰り返すことで「ととのう」という感覚が訪れると言われますが、明確な定義はなく個人差によるもの。熱いサウナから冷たい水風呂に移動する「温冷交代浴」は、交感神経と副交感神経を強制的に切り替える活動で、この強制リセットによって頭がシャキッとしたり、リラックスできる感覚を「ととのう」と捉える方が多いのではないでしょうか。
対して、本場のフィンランドにとってのサウナは、楽しいのが一番。サウナ後に湖に飛び込んだり、常温のシャワーを浴びたり、温水プールに入ったりと過ごし方も自由。その日の体調や気分に合わせて、おおらかにサウナを満喫しています。「ととのう」というのは目標ではなく結果。捉われることなくサウナを楽しむことを何よりも大切にしているのです。
サウナで得られる「脳疲労の解消」
認知症予防や美肌効果、睡眠の質の向上など、サウナにはさまざまな効果があるとされていますが、なかでも「脳疲労の解消」は大きな魅力のひとつ。常にネットに接続されている現代人は、視覚や聴覚などさまざまな外部からの刺激を浴びていて、脳疲労の解消が難しい環境にあります。意識的にリラックスしようとして、何もせずにぼーっとしてみても、仕事で抱えているタスクについて無意識下で思考を巡らせてしまうなど、脳は常にエネルギーを消費しています。
その点、サウナはスマートフォンやノートパソコンといった電子機器を室内に持ち込むことができません。薄暗いので刺激も少なく、室温が高いので思考も止まりがち。デジタルデトックスの状態に身を置けるサウナ室は脳を休めるに適した環境といえます。また、熱い環境から冷たい環境へと移行する「温冷交代浴」は、厳しい環境から抜け出したという安堵感や高揚感をもたらし、この状態も脳をリラックスに導く効果があると考えられています。
自宅でサウナを楽しむ方法
「自宅サウナ」の良さとは
自宅サウナの最大のメリットは、なんといっても自分の好きなタイミングで利用できること。例えば心身がリラックスしている副交感神経が優位な状態の起床時は、サウナを利用することで交感神経にスイッチし、活動的に行動できるようになります。睡眠前は副交換神経を優位にして入眠をスムーズにするなど、ライフスタイルに合わせたサウナの利用が可能です。自分の好きな温度に設定できたり、サウナ前後の身支度も不要など、メリットは他にも多数。
また、フィンランドでは自宅サウナはコミュニケーションの場としても使われています。お風呂とは異なり、性別関係を超えて一緒に楽しむことができるので、友人や親子、夫婦が顔を合わせて会話を交わすなど、自宅サウナはもう一つのリビングと呼んでも良い大切な居場所として機能しています。
自宅に設置できるルームサウナの種類
ルームサウナは大きく分けるとインドアタイプとアウトドアタイプがあります。アウトドアタイプは庭などの屋外に設置するもので、インドアタイプは建物内に設置するもの。サウナ室の熱を逃さないようにするため、インドアタイプは壁天井に断熱材を入れて施工します。電源は一般家庭だとエアコンと同じ動力の200ボルトの単相電源で設置が可能。床は防水されていることが大前提で、タイルや土間コンクリートなどで仕上げます。
サウナの導入方法としては、オリジナルでサウナ室を造作する方法と規格モデルのルームサウナを導入する方法があります。規格モデルを導入する場合はスペースさえ確保できていれば施工期間が1〜2日程度。日本の住宅サイズに合わせてつくられた省スペースなものや、商用利用にも適しているラグジュアリーなデザインのものなど、種類も豊富です。
リノベーションで自宅にサウナを導入する
既存住宅へのルームサウナの後付けは難しいと思われがちですが、環境さえ整えれば設置が可能です。まずはルームサウナを設置するためのスペースを確保すること。設置場所に制約はないので使用していない部屋を流用することもできます。ただ、サウナ室で熱した熱が建物内に排出されるため、近くに排気口を設けることが必須です。電源環境は、200ボルトの単相電源を使用するため、場合によってはブレーカーの増設工事が必要なことも。
また、設置場所の床は防水加工がなされている必要があるので、既存の床の状態によっては周辺のリフォームも欠かせません。ルームサウナは重量があるので、海外では設置時に床の補強をする家もありますが、昨今の日本の住宅であれば補強を必要としないケースがほとんどです。
新築で自宅にサウナを導入する
新築時にルームサウナを合わせてプランニングすると、希望に合わせた動線を考慮して適切な場所に設置することができます。電源や床の仕上げ、換気の計画など、ルームサウナの設置を前提に計画することができるので、非常に効率的。
なお、造作ではなく、既成のルームサウナを使用する場合は、ルームサウナの組み立てが新築工事の終盤での作業になるため、搬入・搬出ができる出入り口の確保が必要です。サウナ後にお風呂に入りたい、庭で外気浴をしたいなど、新築時のルームサウナの計画は、サウナ前後の動線をイメージしながらビルダーとともに相談をし、思い描いた理想のサウナライフを叶えることができます。
マンションで自宅にサウナを導入する
マンションへのルームサウナの導入は、基本的な考え方は既存・新築と同様で、まずは電源や床の仕上げ、スペースの確保といった環境を整えること。さらに、ブレーカーの増設などもあるためマンションの管理組合への許可が必須条件。また、商業施設に設置する場合と同じく消防署への届け出も必要になります。ハードルが高く感じるマンションへの導入ですが、老舗サウナブランド「HARVIA(ハルビア)」のルームサウナ「SÖPÖシリーズ」は、電気用品安全法の基準をクリアしていることを証明する「<PS>E認証」を表示しているので、消防の規制が緩和される場合も。マンション×ルームサウナは、戸建てよりも許可・申請などで手間はかかりますが、決して不可能ではありません。
「自宅でサウナ」についてもっと知る!
自宅に入れられるサウナをショールームで見る
2023年にリニューアルした「ハルビア サウナ スタジオ」には、ヒーターを含めて36機種・39台が展示。インドア・アウトドアともに発売予定の新商品も含む、さまざまなタイプのサウナを実際に体感することができます。サウナブランドの老舗、HARVIA JAPAN直営のショールームは札幌と東京だけ。専門スタッフが、予算や設置環境、必要なスペースなどを丁寧にヒアリングし、お客様に合わせたセレクトや、アドバイスをしてくれます。他にも、サウナハットやアロマオイルなど、サウナツールも多数展開。国内最大規模のサウナショールームで、理想のサウナをぜひ探してみてください。
工務店・建築家向け|サウナのある住まいを建てるセミナー
HARVIA JAPANと住宅雑誌を発刊するReplanが合同でイベントを開催します。データを分析を通じて『住宅業界の今』を正しく認識しつつ、『選ばれる工務店』でいるための次の一手を考えるためのセミナーとなっています。
HARVIA JAPAN×Replan ~住宅業界の未来・「サウナ」を通じた差別化戦略
【日時】2024年11月29日(金) 15:00〜18:00(開場14:30)
【会場】HARVIA SAUNA STUDIO HOKKAIDO
札幌市手稲区前田9条11丁目7-40
【参加費】無料
【対象】住宅会社ご担当者様
【講演】
『サウナをブームから文化へ 一家に1台サウナの時代へ』
講師 株式会社HARVIA JAPAN 代表取締役 笠間聖司氏
『住宅業界の現状と今後の生き残り戦略』
講師 株式会社札促社 代表取締役 小林大輔氏
『実際の事例から学ぶ自宅サウナ提案とは。提案のメリット、コスト・施工』
講師 株式会社HARVIA JAPAN マネージャー 根岸浩史氏
【お申し込み】参加ご希望の方は、以下のページよりお申し込みください。
https://replan.co.jp/2182
ハルビアジャパンとは
「HARVA(ハルビア)」はフィンランドの老舗サウナメーカー。1950年にサウナの本場・フィンランドでサウナヒーターメーカーとして創業して以来、着実に実績を伸ばし世界的なブランドへと進化を遂げました。世界に8ヵ所の生産工場を有し、90ヵ国以上・200社を超えるパートナーと共に、熱と癒やしを提供しています。ハルビアジャパンは2023年に日本法人として設立。国内100拠点を目指して、ショールームの運営と販売・施工・メンテナンスを行うハルビア サウナ ディーラーを全国に展開し、日本のサウナシーンを牽引しています。
日本にサウナが広がった背景には、古くからお風呂文化が根付いていることも関係していると考えられます。家族や友人で銭湯に通っていた時代を経て、家庭用風呂の普及が60パーセントを超えたのは1960年代頃のこと。飛躍的なサウナブームの中で、さまざまな施設が誕生し、日本独自のサウナ文化が根付きつつある今は、まさにサウナの過渡期。近い将来、家庭用風呂と同じように、「一家に一台サウナ」が当たり前になる時がやってくるかもしれません。
(文/Replan編集部)
取材協力/株式会社HARVIA JAPAN