2023年夏の北海道地方の平均気温は、1946年の統計開始以降、過去最高となりました。札幌では真夏日といわれる最高気温30℃以上が29日間、熱帯夜といわれる最低気温が25℃以上が7日間となり、冷房なしでは寝苦しい日を経験した方も多いのではないでしょうか。  

「冬暖かい家」が普及した北海道で、この猛暑を乗り切る「夏涼しい家」にはどんな特徴があるのか。そして「涼しい家」はどのように実現すればよいのか。構造や間取り、プラン段階での工夫や設備など、家づくりの際に注目したいポイントをご紹介します。

HOW TO 夏涼しい家

高断熱・高気密の家

夏の冷房効率と冬の暖房効率のいずれにも大きく影響するのが、建物の断熱性能と気密性能です。夏に温度の高い外気を室内に入れないことと同時に、冷房でつくった室内の冷気を外に出さないためには、家全体の断熱性・気密性を高めることが重要です。

高断熱・高気密にするためには、屋根・天井や壁に十分な断熱材を施す、窓などの開口部に高断熱仕様のものを選ぶなどの方法があります。北海道には高断熱・高気密住宅に関して経験豊富な工務店・建築家が多く活躍していますので、そのような設計・施工に慣れたパートナー選びも重要になります。

日射遮蔽

夏の室温上昇を防ぐためには、日射遮蔽を適切に行うことが重要です。南側に大きな窓を設置する場合、軒を出して夏の高い陽射しが室内に届かないようにしたり、日射侵入率の低い窓ガラスやシェード、外付けブラインドなどで遮蔽する方法もあります。  

日射のコントロール計画は敷地条件や周囲の環境によっても大きく変わります。土地の周囲に遮るものがなく、どの方角も陽当たりのいい土地の場合と、住宅街で開けられる方位が決まっている場合では、住宅のプランはまったく異なります。また、森など自然環境が豊かな場所では、夏の陽射しを木の葉で遮るように設計することもできます。当然、夏の日射遮蔽だけでなく、冬の日射取得にも留意して計画することが重要になります。

自然の力を活用する

夏の暑い日でも、朝夕は気温が低く、外気が室内に入っても快適な時間帯です。熱帯夜が何日も続く場合は難しいものの、昼夜の気温差が大きい場合には、吹き抜け上部など天井に近い場所に通気用の窓を設け、1階の窓と同時に開けることで朝夕の涼しい空気を室内に取り込むことができます。反対に気温が上昇する日中は窓を閉め、日射遮蔽しながら室内の冷気を外に漏らさないようにすることで、室内の空気を一定に保つことができます。  

床下換気などで夜に蓄冷した空気を日中に室内へ放出するなど、空気の通り道を計画することで、自然のエネルギーを活用することができます。自然の力を適度に取り入れることで、人工のエネルギーを最小限にしながら快適な室内環境をつくることも「涼しい家」へのひとつの道です。

エアコン・空調を上手に活用

ここ数年で北海道の住宅でのエアコン導入率が上がっています。ただし、エアコンを使い慣れていないと、運転効率が悪くエネルギーを無駄遣いしてしまう場合や、住まいの環境にそぐわないサイズのエアコンを設置してしまうなどのリスクがあります。適したエアコンのサイズや運転の方法は、住まいの大きさや性能、暮らしの習慣によって変わりますので、帖数設定のみを参考にせずに、事前によく検討して導入しましょう。  

高断熱・高気密の住まいでは、建物全体からの熱の出入りが少ないので、一旦冷やした空気が逃げにくいというメリットがあります。この特徴を利用して、全館空調システムによって家の中の各部位をまんべんなく冷やす方法もあります。全館空調には屋根裏にエアコンを設置して冷気を全室へ行き渡らせる方法や、空調室を設けてダクト式で全館を冷やす方法などがあります。

温度と湿度のバランスが大切

室内の温度だけではなく、湿度によって体感温度や不快感は変化します。温度が同じでも、湿度が高いと暑く感じ、低いと寒く感じます。一般的に人が過ごしやすい温度・湿度は、夏場で気温25~28℃・湿度40~70%とされており、温度と湿度を上手にコントロールすることが夏の室内の快適性につながります。  

温度や湿度を調整してエアコンを上手に使う方法のほか、放射式の冷房システムも有効な暑さ対策といえるでしょう。パネルの中に冷水を循環させて空間全体を冷やし、除湿も行う冷房方式は、温度と湿度のコントロール面以外にも、エアコンの風や音が苦手な人にとっても嬉しい仕組みです。

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夏の室温が高くなることで、室内での熱中症など健康を害する危険性が高まると同時に、冷房のための電気代など光熱費の上昇というリスクも発生します。北海道ではいまや「冬暖かい家」は当然のこととなっていますが、これからは「夏涼しい家」にも着目する必要がありそうです。

夏涼しい家についてもっと知る!こちらの記事にも注目

◎夏はますます暑くなる。冷房の備えを忘れずに|いごこちの科学
https://www.replan.ne.jp/articles/48263/

◎夏の暑さ対策はエアコン一択? 健康で快適な環境づくりで猛暑を乗り切る
https://www.replan.ne.jp/articles/34496/

(文/Replan編集部)

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【特集】 涼しい家
これまで北海道では、快適な住環境の第一条件が「冬暖かい家」という時期が長らく続いてきました。住宅性能の向上や住設機器の性能向上を経て、今や「暖かい家」はあたりまえに。同時に、夏の気温の上昇により冷房としてのエアコンの導入が増えています。

「Replan北海道145号」では、涼しい家を実現した事例やエアコンの上手な使い方など、夏を快適にする住まいのアレコレをお知らせしています。

これまで第一条件として考えていなかった「夏涼しい家」について、一緒に考えてみましょう。

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