『デザイン・建築でお客様を幸せにすることがポリシー』と語るT-planの代表・相澤 剛さん。2004年に建築設計事務所を開設し、2008年に法人化。家づくりにとどまらずグローバルなフィールドで豊かな暮らしづくりを提案する同社の歩み・現在・未来についてうかがいました。

T-plan 代表・相澤 剛さん
T-plan 代表・相澤 剛さん

設計と技術力を駆使した全工程に関わる家づくり

リプラン
 
最初に、相澤社長が建築の道を志したきっかけを教えてください。
相澤
 
小学2年生のときに、毎日の通学路で家を建て替える過程を見ていて「大人になったら、こんなかっこいい家をつくりたい」と思ったことを鮮明に覚えています。それから家に興味を持ちましたが、あるとき、外国人に「日本の団地は同じ家ばかりで、ウサギ小屋みたいだ」と言われて「デザイン性や遊びがある街並みを自分でつくりたい」と思いました。
リプラン
 
それから設計を学んで個人で設計事務所を開いたんですね。
相澤
 
建築のプロになるために幅広く建築を知りたいと思い、最初は首都圏のゼネコンで約13年間ビルの建築の現場監督をしました。その後、地元の仙台市に戻り、設計事務所、デザイン事務所で木造住宅の設計などを経験して、自身の設計事務所を開設しました。

ただ、設計とデザインに加え、家を建てるところまで関わることでコストコントロールできたほうが、お客様のメリットを最大化できると思い、設計事務所と工務店の役割を担う今のスタイルに変わっていきました。


お客様の幸せを第一に帰りたくなる家を提案

リプラン
 
T-planが目指す家づくりとはどんなものですか。
相澤
 
対話を大切にして、お客様の価値観に合ったデザイン、住みやすく、帰ってきたくなる家をご提案します。自分たちがつくったものに触れるご家族の幸せを第一に考えることがポリシー。スタッフやお客様と話し合い、楽しいことを建築に落とし込んで、関わる全員が楽しくなる家づくりをしています。建てた後に子ども部屋の壁をつくりに行ってお子さんの成長を見たり、お客様の人生を共有させてもらえることがこの仕事の醍醐味です。

T-plan Housing Case.01 自然をたのしむ家

ご夫妻と子ども3人が暮らす登米市の新築住宅です。自然豊かな環境に立つスタイリッシュな四角いフォルムが印象的な平屋で、白い外構は家族のプライバシーを確保しながらデザイン性を演出。玄関に入ると奥行きのある土間が現れ、つながるLDKの北側には大きく開いた窓があり、季節の借景を楽しむことができます。

キッチンは景色を見ながら料理ができる壁付けで、キッチンに立つ人と対話が弾むダイニングテーブルは、室内の雰囲気と合わせて造作しています。また、収納についても入念に聞き取り、廊下の壁面やウォークインクローゼットなど、大容量の収納スペースをつくり、片付けがしやすくスッキリと暮らせるプランにもこだわりました。

リプラン
 
T-planの家はかっこいいイメージがあります。
相澤
 
デザイン性の高い家は得意ではありますが、見た目より使いやすさ、動きやすさ、メンテナンスのしやすさ、予算やランニングコストを考えた家が、いいデザインと言われます。さらに、お客様の要望どおりにつくるだけでなく、遊び心をプラスします。例えば、壁をボルダリング用のクライミングウォールにしたり、リビングの中に愛車を入れたり、壁にペット用のくぐり穴をつくったり。変形地、狭小地で他社に依頼を断られた方の相談も非常に多いです。

T-plan Housing Case.02 緩やかにつながる二世帯の家

岩手県北上市の大自然に佇む2棟が連なるシンボリックな外観の、大人4人、子ども1人が暮らす二世帯住宅です。玄関アプローチには足元を照らすライン照明を設け、帰宅する家族や来客を歓迎する仕掛けにしました。親世帯と子世帯は完全に分離しながら、玄関からテラスに続く広々とした土間空間が緩やかに二世帯をつないでいます。ランドリールームを兼ねた広い洗面スペースには大容量の収納も設け、使い勝手を追求しています。

大きな吹き抜け、スケルトン階段がある仕切りの少ない空間ですが、全館空調システムで家中どこにいても冬は暖かく夏は涼しく過ごせます。デザイン性を重視した家ですが、使い勝手や動線、プライバシー、家からの眺めなどをトータルでデザインした暮らしやすい家です。

リプラン
 
リノベーションの事例も多いですね。
相澤
 
T-planは、柱の数を減らしても耐震性、耐久性に優れ、将来大幅なリノベーションがしやすいSE構法も対応可能です。古いものを壊さず現代風にリノベーションするなど、価値の再生を大事に、古民家再生にも取り組んでいます。

住宅ではありませんが、フルリノベーションの事例で群馬県の「温泉グランピングShima Blue」があります。オーナーさんから温泉のリノベーションを依頼されましたが、グランピングという自然と一体になった新しい形の宿泊施設をご提案し、2018年度グッドデザイン賞を受賞しました。


地域活性を支援したいと大郷町に事業所を開設

リプラン
 
リノベーションといえば、黒川郡大郷町の「パストラル縁の郷」の改修も手がけましたね。
相澤
 
縁の郷は「都市部から農業をつなぐ」をコンセプトに、貸し農園で栽培した食材を収穫して調理して食べて泊まる施設でしたが、十分活用されていませんでした。大郷町には企業向けの賃貸物件も少なかったので、施設で使われてない部分をサテライトオフィス、コワーキングスペースなどに改修すれば、企業が大郷町に入りやすくなるとご提案しました。
リプラン
 
2023年3月には大郷町にスタジオを開設されました。
相澤
 
2024年1月から実務もスタートして、町民や県北の方から相談しやすくなったと言われます。営業担当は家づくりの相談や困りごとに応えるスタンスで、電話や訪問による営業は一切していません。私もスタッフも人と話して元気をもらえることが大好きなので、家づくりに関係なく気軽に声をかけていただきたいし、お茶飲み話をしながら、ここで足場をつくり末永くいい関係を築いていきたいです。
T-plan 宮城大郷スタジオ
T-plan宮城大郷スタジオの外観
T-plan 宮城大郷スタジオ
T-plan宮城大郷スタジオの打ち合わせスペース
リプラン
 
大郷町に興味を持ったのはなぜですか。
相澤
 
大郷町は国の過疎地域に指定されている町の一つで、過疎化に歯止めをかけたいという町の方の思いを聞いて、微力ながら何かお手伝いできないかと思ったのがきっかけです。すでに発展している町より、過疎化にあえいでいる町が今後どう生まれ変われるのかを体感したいという思いもありましたし、建築に携わる者としてゼロから形をつくっていく過程がすごく好きで興味が湧きました。
リプラン
 
大郷町の将来に期待することは何ですか。
相澤
 
企業誘致も指定事業地も遊ぶ場所もない大郷町のいろいろな所に人口を増やす仕掛けをつくり、楽しい場所になればと考えています。家づくりに関しては、大郷町は土地購入費用の負担が少ないので、その分住宅にこだわることができるのが最大の魅力です。国も、平日は都市部で仕事をして週末は地方で暮らす「二地域居住」を推進しているので、大郷町のような仙台近郊の町にも人は流れると思います。

自治体などと連携し未来をつくるモノづくりを

リプラン
 
相澤社長は、T-plan以外でも地域創生、まちづくりに関わっているとお聞きしました。
相澤
 
2023年2月に自治体と民間企業をつないで、地域を活性化するまちづくりをご提案しサポートする宮城県地域観光資源開発推進機構という会社を設立しました。水を循環しながら植物と魚を育てる水耕栽培と養殖を掛け合わせた「アクアポニックス事業」や、未来志向のサステナブルな体験型事業として、大郷町の食材を使った食の開発や古民家改修プロジェクトなどに取り組んでいます。
リプラン
 
T-planとして今後まちづくりに関わっていきたいとお考えですか。
相澤
 
大郷町以外の町からも、地域を活性化するまちづくりについてご相談をいただいています。一つの事例ができれば、今後そういう事例を他の地域でも落とし込めるのではと思っているところです。丁寧に取り組みながら、町の住民や行政との信頼関係をつくっていきたいですね。

ウサギ小屋ではない、いい街並みをつくりたい、という思いはずっと前からありましたが、家づくり単体ではできないことがあります。自治体と関わらないと根本的にまちづくりはできないと気づいたのはここ十年のこと。建築に限らず行政とも手を組みながら、視野を広げたビジネス形態を進めていきたいと考えています。

リプラン
 
T-planの今後の展望、夢を教えてください。
相澤
 
今後もトータルな家づくりでお客様と末永くお付き合いしながら、お客様の暮らしをより豊かにするお手伝いがしていきたいです。また、空き家対策も、行政書士、解体業者、不動産業者と連携してワンストップで解決する体制を整えているので力を入れていきたいです。

建築は車のように何年かして乗り換えるものではなく、一生使い、代々受け継がれるもの。モノづくりとは、未来を見据えて、次の世代にどう受け継ぐのかまでを考えて取り組む必要があると思います。自分でも未知数の部分もありますが、今後も建築に限らずいろいろなことにチャレンジしていきたいです。