自然素材の持ち味を大切にした内装やインテリア、光と陰影を楽しむ照明計画。住まい手の暮らし方に合わせて空間とインテリアをトータルコーディネートしたアクト建築工房の住まいは、それぞれに個性的でありながら流行に揺らぐことのないデザイン哲学が息づいています。その端正な「暮らしの器」をつくり続けている代表の澤田和宏さんに、エイジレスな魅力を持つ住まいづくりの秘密をお話しいただきました。
この記事の目次
アクト建築工房の家づくり
注文住宅の実例紹介
時の経過で価値が増す普遍的なデザイン
フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトが、妻のアイノとともに1936年に設計し、40年間暮らし続けた自邸は、まさにそのお手本のような存在です。アアルト夫妻は「建築は家具と補完し合うもの」と語り、生涯の間に数多くの名作と呼ばれる家具や生活雑貨をデザインしました。数々のプロダクトは今も世界中の人に愛され続け、時を経てなおビンテージとして市場価値を保ち続けています。
住まいも20年、30年で古くなったら建て替えるという日本のスタンダードを脱し、いつまでも美しさを失わず、住み継ぎたいと思わせる普遍的な住宅をつくりたい。その想いをカタチにするため、空間とインテリアプラン、照明計画などをトータルでご提案しています。
自然素材でつくる人に優しい空間
新築の動機の多くは子育てや出産。無垢床はお子さんが傷をつけるのではと心配される方も多いのですが、無垢材のシミや汚れはセルフメンテナンスが可能。合板のフロア材に比べ、ローコストで維持することができ、生活の痕跡も経年変化とともに味わいになります。
このほか、造作部分には普通に扱えて、空間のアクセントになり、使うほどに趣を増すタイルや石材、真鍮も採用。自然素材を多用した空間はいつまでも気持ちがよく、経年変化が付加価値にもなります。
陰影の移ろいを描く塗り壁を基本に
空間の色使いが巧みな北欧やヨーロッパの住まいをお手本にしたグレーに近いブルー、くすみ感のある白などを選んで塗装。目に優しいやわらかな色で仕上げた壁に描き出される繊細な光の変化や陰影のグラデーションは、水性塗料ならでは。見る角度によっても印象が変わりますが、その違いはひょっとするとすぐには分からないかもしれません。
しかし、さまざまな生活体験を重ねていくうちに見えてくる景色もあります。そのときに改めて「いい家」だと感じていただきたい。そのためにも、仕上げや素材を真剣に吟味して、10年、20年後も住まい手が心地よく暮らせる住まいづくりを心がけています。
精度の高い造作で、空間に統一感を演出
設計のヒントになるのが、足を踏み入れた瞬間に心地よく感じられるホテルの客室。調度品の寸法や配置を記録し、その後のプランづくりや、造作デザインの参考にしています。こんな旅先のささやかな積み重ねも、気持ちのよい住まいづくりにつながっています。
また、機能と見せ場をしっかりつくり分けられるのも、造作の良さ。費用対効果を考えた造作プランはコストの調整にもつながり、予算を最大限に生かすことができます。
心地よさの演出の仕上げは照明計画
アクト建築工房では、プラン打ち合わせの際に、メンテナンス性とデザイン性に優れ、空間とインテリアのテイストに合う照明器具も提案しています。そして、その空間にサイズ感がフィットし、コストバランスにも優れている北欧デザインの家具なども併せておすすめしています。
長く住み継がれるエイジレスな住まいは、再生可能な社会づくりが求められる今の時代性にもマッチしていると感じています。私たちはこれからも、時を経ても鮮度を失わないデザインと素材で形づくられた、いつまでも気持ちよく暮らせる普遍性のある住まいをつくり続けていきます。
住まい手に寄り添いながら、アクト建築工房の家づくりへの哲学を具現化した注文住宅の実例をご紹介します。
Case.1 徹底したゾーニングと家族一人ひとりが快適なパーソナルスペースを持つ家
役割の異なる空間たちがしっかりとゾーニングできることにこだわってつくり上げた、3人の子どもたちの個室のほか、キッズリビング、ピアノルームにパパルーム、オフィス機能も備えた住まいです。また、月日の経過とともに味わいを増す自然素材や、耐久性が良く普遍的なデザインの家具を積極的に採用し、経年変化を楽しめる空間を実現しました。
Case.2 平屋感覚で暮らす美しく開放感あふれる夫婦の住まい
デザインを大切にした家を建てたいというご夫妻の希望を叶えた、素材感を生かした造作キッチンが主役の平屋風の住まいです。眺めの良いリビング・ダイニングに設えられた天井高を生かしたロフトや、一直線に並べた水まわりと回遊動線など、機能性も追求したくつろぎの空間は、ご夫妻自慢のもてなしの場となっています。
Case.3 素材感のこだわりと南の高窓からの採光が降り注ぐ心地よい家
大きな三角屋根の形状を活かしたボリューム感たっぷりの大空間の2階LDKが特徴。大空間を明るく照らし、北側の大きな窓へと抜けていく南側の高窓から入る陽射しでいつも明るく、どこからでも室内全体が見渡せる爽快さに満ちた住まいです。シンプルでナチュラルな白を基調とした空間を、ナラ無垢フローリングやカラマツなどの自然素材が引き立てます。
Case.4 仕事も暮らしも快適に。牧草地に立つ畜産農家の住まい
遮るものが一切ない雄大な牧草地の一角に立つ住まいです。片流れと三角屋根を組み合わせた外観が印象的で、自然界の中にある色を使うことで、周辺環境と調和することを意識しています。家族全員で使う造作収納を設えた広い土間玄関をはじめ、汚れた作業着のまま出入りできる勝手口からの裏動線、ご夫妻それぞれのスペースなど、働きやすさと暮らしやすさを両立させたプランニングが嬉しいです。
Case.5 恵まれた眺望を楽しみ、暮らしの豊かさも叶えた農家住宅
十勝岳連峰の尾根が広がる大パノラマが癒やしをもたらす大きな片流れ屋根の住まいです。裏玄関や事務スペースなど、農家住宅に必要な機能性を重視しながら、ご夫妻が所有していた古い耐火煉瓦、取得した土地にあった納屋の古いタモ材を使用するなど、さまざまな素材を絶妙なバランスで配したデザインも見どころです。
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