千葉県内を拠点に注文住宅を手がける工務店が集まり、家づくりの考え方から営業的な手法まで、情報交換しながら企業力と工務店認知の向上を目指す「千葉good工務店会」。千葉に暮らす人たちの幸せのために、家づくりを越えた街並みづくり、暮らしづくりに取り組む工務店会チームのメンバーに、千葉の家づくりの「今」と「これから」をお聞きしました。

左:須藤建設(株)東関東支店 支店長 須藤 誠さん(以下、須藤)/中:(株)工藤工務店 代表取締役社長 工藤一行さん(以下、工藤【K】)/右:(株)スタジオ・チッタ 代表取締役 工藤武士さん(以下、工藤【C】)

住まいづくりの
選択肢として知らせたい
工務店の存在

須藤

 

2015年に地域工務店の情報や悩みを共有するため、各社のモデルハウスやオフィスを巡回するというセミナーに各社が参加したことがきっかけで「千葉good工務店会」を立ち上げました。住宅設備メーカーさんの主催でしたが、各社の代表が集まってお互いの住宅を見たり、プレゼンを聞いているうちに意気投合したんです。

工藤【K】

 

工務店の存在意義という同じ悩みを共有する者同士として、「何か一緒に面白いことがやれたらいいよね!」ととにかく盛り上がって。10月にセミナーがあって、その年の12月には会をスタートさせました。

設計・施工 工藤工務店

須藤

 

それ以前も各社で「お客さんに良い家を提供しよう」と努力を重ねていましたが、家づくりのパートナーとしての工務店の存在はまだまだ希薄でした。「工務店との家づくり」自体の認知を上げていくためには、複数社で集まって情報共有したり宣伝したりすることが重要ではないかと考えていました。

工藤【K】

 

14区画ある土地に、当時参加していた6社で一棟ずつモデルハウスを建てて、工務店だけの住宅展示場「はぐくみの杜 LIFE DESIGN Village」をつくったのが最初のプロジェクトです。

工藤【C】

 

弊社は2020年から会に参加したのですが、もちろんそれ以前から会の存在は知っていて、活動の様子も聞いていたので、ただただ「羨ましいな」と思っていました。同業の工務店さんがどのようなことを考え、実行しているのか見せていただける機会なんてなかなかありませんから。

須藤

 

プロジェクトに反応してくれた住まい手の方がたくさんいたと同時に、一つのプロジェクトで終わらせるのではなく、関係を継続的に続けて、地域において「工務店」の存在感が増していくことが大切だと考えていました。

設計・施工 SUDOホーム関東(SUDO建設)

工藤【K】

 

コロナ前までは月1回定例ミーティングをして情報交換していましたよね。合同見学会を開催したり、イベントに会として出展したりといった外向きの活動だけではなく、お互いのレベルアップのための情報共有といった内側の活動も同時にしています。

工藤【C】

 

まだまだ「工務店」の良さを知らないお客さんもたくさんいます。お互いライバルではありますが、工務店全体のレベルアップにつながれば、お客さんにとっても私たちにとってもメリットは大きいのではないでしょうか。

設計・施工 スタジオ・チッタ

変化するニーズや市況に合わせて
求められる性能とデザインとは

須藤

 

最近多いご要望としては平屋、コートハウス、ファミリークローゼットというあたりでしょうか。

工藤【C】

 

シューズクローク、ファミリークローゼット、パントリー、室内物干しスペースなど、1階に動線を集中させるケースが増えていますね。平屋が人気なこともありますし、共働きのご家庭が多いので家事動線をなるべく短くしたいというのは皆さん要望されます。

工藤【K】

 

都内に勤めていて千葉に家を持ちたいという方は、都内から少し離れて広い土地で自然とつながりながら暮らしたいという希望を持っている場合が多いので、平屋は自然と人気になりますよね。

工藤【C】

 

とはいえ住宅街などに建てる場合は外からの視線が気になりますから、外に閉じて内に開くというコートハウスの要望が多くなるのも必然のように思います。

須藤

 

洗濯物を陽に当てて干したいというご要望もまだありますが、室内で干してそのままクローゼットへという動線でも問題ないことが浸透してきて、洗濯物を干すためにバルコニーを設けることは減ってきています。「これが必要」と思い込んでいる場合も、実際の暮らしを想起して考えてもらって提案することで、納得していただけることが多いです。

工藤【C】

 

ライフサイクルコストの面でも「性能」のことを気にする方は増えてきているように思います。わたしたちも標準性能は国の基準などに合わせて一定程度上げつつ、デザインやインテリアなど「暮らし」の側面を彩る提案を重視しています。今はSNSの影響でたくさんの切り取られたイメージを持っている方が多いので、そのイメージと実際の暮らしの要望をすり合わせることが難しいと感じることもあります。

須藤

 

基本的な性能は確保した上で、それぞれの土地や暮らし方に合わせて柔軟にプランニングすることが重要ではないでしょうか。情報があふれている時代なので、性能にしてもデザインにしてもたくさん手に入ってしまう情報の中からどれを選べばいいのか迷ってしまう人も多いと思うんです。性能を上げるために暮らし方を犠牲にするのは本末転倒なので、まずは暮らす人にとって心地がいいこと、快適なことを優先するべきだと考えています。

工藤【K】

 

確かに。いろいろな情報を目にして「これはできますか?」と条件を優先してしまう人もいますが、「何のためにするのか」の方を大切にしたいですね。性能を限りなく上げていくことはできなくありませんが、コストにも跳ね返ってくるので、快適な暮らしのために今必要だと思われる性能は備えた上で、暮らす人の優先順位に沿って提案しています。自分たちの考える「その人にとってのいい家」を真剣に考えて提案しますから、一般的なセオリーからは外れているかもしれません。それを共有できる方と家づくりができればと考えています。

これからの家づくりに対して
地域工務店だからできること

須藤

 

注文住宅に求められる「その人らしい暮らし」を実現するためには、性能とデザインそしてライフスタイルをバランス良く提案できる工務店の存在が重要だと考えています。家づくりの選択肢の一つとして「工務店との家づくり」を知ってもらうことは、ユーザーにとっても意義のあることだと考えています。

工藤【K】

 

私の会社は年間の建築棟数を増やして大きくすることは考えていません。自社大工ができるだけの棟数を丁寧につくって提供していくために、自分たちの家づくりに共感してもらえるお施主さんにいかに出会うかをこれからも重視していきたいと考えています。そのために必要な情報発信はしていきたいし、工務店会のような共有と競争の場は必要です。

工藤【C

 

千葉good工務店会は見学会などのプロモーションを共同で行うだけでなく、社内で使う書類やツール、技術的な情報交換など、会社の経営に関わるような部分まで共有したりアドバイスをし合ったりする関係です。弊社も参加させてもらって、社内スタッフの意識がだいぶ変わってきました。

工藤【K

 

仲間ではありますが、同じ街区でモデルハウスを建てるとなれば、「カッコ悪いものはつくれないぞ」と気合が入りますし、良い刺激を与え合える関係ですね。

須藤

 

コロナ禍を経て、また定期的に集まれる環境になってきたので、積極的に活動をして「地域工務店と家を建てる」ことの意義を伝えていければと思っています。まだ道半ばですが、世の中における「工務店」の存在が変わるまで活動は続けていきたいですね。


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家づくりを始める際に重要となるのがパートナー選び。自分に合ったパートナーにたどり着くためには、まず、どのような選択肢があるかを知ることが重要です。

大きな住宅展示場にモデルハウスを持ち、多数のメディアで大々的に広告している大手ハウスメーカーに比べ、地域の「工務店」は、興味はあってもなかなかその実情を把握しにくいのが現状です。

そこで今回は、それぞれに特徴や強みの異なる工務店との家づくりをご紹介。工務店をパートナーに選んで建てた実例と住まい手の声を通じ、その魅力を紐解きます。

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