「家を建てたら犬を飼いたい」とお考えの方がいれば、すでに犬を飼っていて、新居でも一緒に暮らす予定の方もいるでしょう。どの動物を飼うかによって家づくりで考えておきたい工夫やポイントは異なります。今回は「犬と暮らす家づくり」の間取りの工夫や造作アイデアを、5つの実例を通してご紹介します。
愛犬と快適に暮らす!家づくりのポイント5
犬と快適に暮らすには、人と犬、両者の心地よさを実現したいところ。そこで特に抑えておきたい家づくりのポイントが5つあります。
1. 愛犬専用の居場所(ペットコーナー)をつくる
犬を飼うと、飲水やトイレシートなどを置く定位置が必要です。ご家庭によっては、就寝時やお留守番のときの愛犬の居場所はケージ内やペットコーナーとするケースもあるでしょう。プランニングでは、愛犬の居場所(ペットコーナー)をあらかじめ想定しておくことが必要です。
飼っている(または飼う予定の)犬のサイズによって、必要な広さはまちまちですが、リプランの取材先ではリビング土間や階段下を愛犬の居場所にしている例がよく見られます。
半外空間のリビング土間は、もし愛犬が粗相をしてしまっても掃除がしやすく、家族の団らん空間に近いのでお互いに姿が見えて安心感があります。空間のかたちがいびつで、天井高が低い階段下はデッドスペースになりがちなので、愛犬の居場所として利用しやすい空間です。
2. 走り回りやすい回遊動線を計画する
回遊動線は愛犬のため、というよりも、自分たちの暮らしやすさのために設計されるものなので、あくまで副次的な使い方ですが、小型犬が家族と追いかけっこをしたり、投げたおもちゃを取りに行ったりする遊びで家の中を駆け回るのに、回遊動線はとても役立ちます。
家のいろいろな空間とつながる回遊動線が上手にプランニングされた家は、家族が暮らしやすいと同時に、愛犬も楽しみやすい間取りと言えます。
3. 愛犬用のグッズを置く収納スペースを想定する
犬を飼っていると、トイレシートのストックやおしりや脚を拭くためのウエットティッシュ、トイレットペーパー、ペットフードや薬といった消耗品から、ついつい買い与えて増えていくおもちゃ、愛犬用の洋服などの収納スペースが必要になります。
散歩用のリードや雨具は玄関、ドッグフードはキッチン、トイレ関係はリビングの一角など、それぞれ使いやすい場所に必要な量の収納スペースをあらかじめ計画しておくと、使い勝手が良く、すっきりと片付けやすいですね。
4. 滑りにくい床材、消臭機能のある内装材を選ぶ
犬は滑りやすい床を全力疾走すると、股関節を痛めやすいといわれます。そのため、特に愛犬が駆け回る範囲の床は、できるだけ滑りにくい素材が推奨されます。
例えばタイルカーペットは、滑りにくく、汚れたら部分的な交換がしやすいというメリットがあります。最近は小型犬の足腰に優しいという専用のフローリングや、犬用コルクシートなども販売されていますので、内装選びの際に検討してみるのも一案です。
また、ペット特有の臭いが悩みの種になることも。ペットコーナーの周囲の内装仕上げ材に消臭効果のある壁紙や塗り壁、エコカラットなどの建材を用いて対策をすると、臭いの悩みを軽減できるかもしれません。
5. 散歩などで汚れた脚や体を洗いやすい水場を設ける
犬は多かれ少なかれ、お散歩が日課になります。外を歩き回り、電柱や草むらを嗅ぎ回って帰ってくるので、家の中に入れるにあたっては、脚やお腹、顔まわりを洗うのが一般的です。また屋内でのトイレの失敗(!)など、さまざまな理由で日常的に愛犬を洗う場面が発生し得ます。
そこで必要なのが水場です。特に大型犬は、抱きかかえて移動させるのが難しいので、玄関や勝手口まわりに水場があるととても便利です。
小型犬は、抱きかかえて家族用の洗面台や浴室へ連れて行って洗いやすいので、必ずしも専用の水場は必要ありませんが、洗面台で洗うことを想定している場合は、愛犬の体勢が安定しやすい底が平らな洗面ボウルがおすすめです。
6. 外を眺められる窓を設ける
外を眺めるのが好きな犬が多く、特に留守番をしているときは、飼い主の帰りを窓際で今か今かと見張っていて、帰宅に気づくと、ちぎれんばかりに尻尾を振ってお出迎え、というシーンもよく見ます。
そのため、家の間取りによりますが、愛犬が多くの時間を過ごす空間に、無理のない体勢で外を眺められる窓があると、外の様子が分かり、安心感を与えられるでしょう。
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「愛犬と快適に暮らす家」5実例
①シニア犬と夫婦の暮らしやすさを考えた38坪の平屋
Sさんご夫妻が子犬の頃からかわいがってきた愛犬、ラブラドールレトリバーのギンくんは、歳を重ねて腰を痛め、階段の上り下りが難しくなってしまいました。
そこでご夫妻は、お二人の終の棲家として新築したのが、ギンくんも暮らしやすい約38坪のゆとりの広さの平屋です。
玄関は、カーポート側と庭側の2方向からアクセスできる設計で、庭側にはギンくんが無理なく家に入れるよう緩やかな勾配のスロープを設けました。
スロープから中に入るとそこはタイル張りの土間。すぐ脇にシャワー付きの洗い場もあります。ギンくんサイズのゆとりのある広さで、水はねを気にせずに散歩後の脚まわりや体を洗うことができて便利です。
木をふんだんに用いたLDKは遮るものがない広々としたつくりで、ギンくんものびのびと過ごせているよう。ご夫妻も愛犬も安心で心地よい平屋の住まいとなりました。
②ドッグルームにドッグラン。2頭の大型犬と健やかに暮らせる家
Yさんご夫妻は2頭の大型犬と暮らしていました。小型犬は、抱え上げて洗面台へ運んで散歩帰りの汚れた脚を洗うことができますが、大型犬は大きくて重く、なかなかそうはいきません。
また健康を維持するために必要な運動量も、小型犬の比ではありません。そこでご夫妻が新築にあたって希望したのが、「シャワー付きのドッグルーム」と「リードなしで走り回れるドッグラン」のある家でした。
玄関からシューズクロークを介して隣に、4.5帖の広さのドッグルームを配置。散歩から帰ったらすぐ脚まわりをシャワーで洗うことができます。
ご夫妻が外出する際は、2頭はこの部屋で過ごしているそうで、室内は掃除のしやすさも考えられています。愛犬たちの目線の高さに横長の窓が設けられているのにも、優しさを感じます。ここからじーっと外を眺めながら、ご主人たちの帰りを待っているのでしょう…。
ドッグルームからは、物干し場を兼ねたピロティと木の塀で囲われたドッグランへ直接出ることができます。散歩へ行けなくても、このような広い庭が自宅にあれば、犬も飼い主も気軽にリフレッシュできますね。
実は、引っ越し後に1頭が病気で下半身が不自由になってしまいました。トイレの世話も必要になりましたが、愛犬たちが快適に過ごせる住環境が整っていたのでずいぶんと助かったそうです。
普段は、2階のLDKまわりで愛犬たちと過ごすYさんご夫妻。LDKとフラットにつながる屋根付きのバルコニーは眺望も抜群で、みんなのお気に入りの場所になっています。
③愛犬の動線に配慮し、家族とゆっくり過ごせる住まい
家を建てる前から大型犬を飼っていたKさん一家。新築に当たっては、愛犬がストレスなく動き回れて、家族とのんびり過ごせるスペースをつくりたいと考えていました。
コンパクトな建築面積を有効活用した新居は、1階面積の半分がタイル敷きの土間空間。その一角には薪ストーブやソファも置かれていて、ゆったりと愛犬との時間を過ごせます。ひんやりしたタイルは、暑い夏に嬉しい愛犬の居場所にもなります。
建物の周囲を半周できるドッグランへと続く愛犬専用の小さな出入り口や、散歩から帰るとすぐに洗えるドッグシャワーなど、犬との暮らしを楽しむ工夫やアイデアが随所に見られます。
④トリミングスペースまで完備!人もペットも心地よい家
6歳の愛犬、4歳の愛猫と暮らしている共働きのHさんご夫妻。実家の隣に建てた新居には、ペットたちと心地よく過ごすためのさまざまなアイデアが見て取れます。
愛犬との暮らしのための工夫でまず目を引くのは、シューズクロークの一部を利用したトリミングスペース。ご自身でトリミングができるという奥さんの要望で造作したもので、愛犬の散歩帰りのケアやシャンプーが手軽に行えます。
階段下のデッドスペースを利用し、愛犬のためのペットコーナーもつくりました。壁には防臭・防湿効果のあるエコカラット、床には掃除がしやすいクッションフロアを用いて、悩みの種になりやすい臭い対策や清掃性に配慮しているのもポイントです。
⑤リノベーションで実現。愛犬たちとのびのび暮らせる戸建て住宅
中古住宅リノベーションで、愛犬との暮らしを楽しめる家を手に入れた例も。コーギー犬を2頭飼うIさんご夫妻は、マンション暮らしは何かと不便なことが多いと感じ、庭付きの一軒家で愛犬たちとのびのび暮らそうと新居を求めました。
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そんなご夫妻の目に留まったのが、高台の住宅街に立つ築49年の家。敷地の広さも申し分なく、周囲を愛犬たちと散歩する姿がイメージできたことから購入を決めました。
リノベーションでは、既存建物を減築。庭を広くし、その一角に散歩帰りの愛犬たちを洗うことができる水場を完備しました。
LDKの横には、木の柵と腰高の壁で仕切った愛犬専用ルーム。階段は脚が短いコーギー犬でも上り下りしやすいように段差を緩やかに設計するなど、ペットファーストな工夫が随所に見られます。広々とした玄関土間には、犬用の散歩グッズなども収納できる造作棚を設けました。
「無垢の床は犬の脚にも優しく、漆喰の消臭効果でペット臭も気になりません」とIさん。近々3頭目の犬をお迎えする予定だそうです。
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犬種や犬のサイズ、普段の世話の仕方や、家での愛犬との過ごし方などによって、取り入れる工夫やアイデアは異なる部分もあります。愛犬も人もストレスなく暮らしやすい間取りや仕上げをプランニング時によく検討して、ペットとの楽しい時間が過ごせる家づくりを実現してくださいね。
(文/Replan編集部)