山登りが大好きなKさんご夫妻が、山を眺めて過ごす老後を見据えて美瑛に家を建てたのは今から30年前のことです。

三角屋根の2階建ての住まいは、十勝連峰を背に美瑛の丘が目の前に広がる好立地。豊かな自然を眺めて暮らす日々は充実していましたが、奥さんにはどうしても叶えたい夢がありました。それは、新築時に予算の都合で断念した「薪ストーブのある暮らし」です。

Kさん宅の目の前の風景。十勝連峰と美瑛の丘が一望できる
Kさん宅の目の前に広がる風景。十勝連峰と美瑛の丘が一望できる
三角屋根とグリーンの外壁が目を惹くKさん宅。Kさんは大手メーカーの元設計士で、この家も自ら設計した
住宅は、三角屋根とグリーンの外壁が目を惹く。Kさんは大手メーカーの元設計士で、この家も自ら設計した

大きな吹き抜けと絶景を望む大きな窓のあるKさん宅は開放的な反面、冬はFFストーブだけでは十分に暖まらず、1階の寝室で眠るKさんが「手袋をして布団に入っても、まだ寒いくらい」と言うほどに、冬の寒さはご夫妻にとって大きな悩みの種でした。

「子どもの頃、自宅の暖房は石炭ストーブで、石炭をくべてガンガンと燃やす炎の勢いやあの暖かさを懐かしく思っていました。薪ストーブも直接炎で暖まる暖房機器。ご近所にも薪ストーブユーザーが多く、皆さん口々に暖かくて快適だと話していて、一度は諦めたものの憧れは募る一方でした」という奥さんは一念発起。「薪ストーブのあるセカンドライフ」を目標にコツコツと貯金をして、薪ストーブ導入の資金を確保しました。

機種選びでKさんご夫妻が重要視したのは、とにかく操作がシンプルであること。奥さんは、テレビ番組でドイツ製の薪ストーブを使っている人が「単純な操作で扱えるので便利」と話していたのが印象に残っていて、薪ストーブを入れるならドイツ製にしたいと考えていました。「私たちは若くはないので、複雑な操作のストーブだと使い続けることが難しいですから」。

いくつかの薪ストーブ専門店を見て回った末に出会ったのが、旭川の薪ストーブ専門店「コロポックル」で取り扱うドイツ製の薪ストーブ、IRONDOG(アイアンドッグ)です。

美しい炎と緑が映えるLDK。薪ストーブを導入してから、窓の結露がほとんど無くなったそう
美しい炎と緑が映えるLDK。薪ストーブを導入してから、窓の結露がほとんどなくなったそう

「担当の橋口さんは押しつけるタイプの営業ではなく、とても親身に相談にのってくださいました。IRONDOGを気に入ったのはもちろんですが、その人柄にも惹かれ、コロポックルにお願いしたいと考えました」と、信頼を寄せたKさんご夫妻。

同店は母体が建築会社のため、薪ストーブの後付け施工も安心してお願いできるのも大きな決め手になりました。

コロポックルの橋口さんとKさんご夫妻。来シーズンに向けてのアドバイスや、薪ストーブ話に花が咲く
コロポックルの橋口宏二さんとKさんご夫妻。来シーズンに向けてのアドバイスや、薪ストーブ話に花が咲く

「シンプルな操作」を大前提にしたKさんご夫妻の要望を聞き、コロポックルの橋口さんが提案したのは、IRONDOGの「 Nº07」です。

「『Nº07』は、ご希望どおりのシンプルな操作性と、広い室内を暖めるのに充分なスペックを備えた機種です」と橋口さん。すっきりとしたデザインと、炎が楽しめるガラス面の大きさも特徴で、サイドに付いているレバー1本で空気の調整ができるのが非常に便利です。

アイアンドッグNo.07は日本向けに使いやすさを追求し、開発された機種。横型の大きなフロントガラスから、揺らめく炎が楽しめる。サイドにもドアがついているので、多方向から薪をくべることができる
IRONDOGの「No.07」は日本向けに使いやすさを追求し、開発された機種。横型の大きなフロントガラスから、揺らめく炎が楽しめる。サイドにもドアがついているので、多方向から薪をくべることができる
本体の側面に取り付けたのは、アイアンドッグのオリジナル温度計。マグネットタイプで、上面や側面など使いやすい場所につけることができる
本体の側面に取り付けたのは、IRONDOGのオリジナル温度計。温度計は、適正な温度管理に欠かせない薪ストーブアイテム。これはマグネットタイプで、上面や側面など使いやすい場所につけることができる
室内の薪ラックには焚き付け用の細薪と、燃焼用の太い薪を並べている
室内の薪ラックには焚き付け用の細薪と、燃焼用の太い薪を並べている

「薪ストーブを後付けする際、設置場所は必然と限られてきます。Kさん宅の場合は以前ストーブが置かれていた景色の良いLDKの窓際が設置場所に最適でした。大きな吹き抜けもあるので、室内全体に空気を回すにも最良の場所と判断しました」。

また、薪ストーブを後付けする場合、煙突を壁出しにするケースがよく見られますが、Kさん宅は軒の出がかなり深かったこともあって、屋根から外へ出す煙突を採用。大きな吹き抜けを、長さ10メートルの煙突がまっすぐに貫く姿は壮観です。

Kさん宅は屋根裏も大きく、高さは3階建て相当。長い煙突が天井を貫く
Kさん宅は屋根裏空間も大きく、その高さは3階建て相当。長い煙突が吹き抜けの大空間を貫く

炉台は、フローリングの上に直張りしたタイルを採用。シーズン中はウッドデッキを薪置き場として活用するため、デッキとの出入りに利用する掃き出し窓までタイルを敷いています。

また、「IRONDOG Nº07」は底面にも熱が伝わるため、ストーブの下は耐火ボードを2枚敷くことが必須。ストーブ周りは耐火ボードの上にタイルを重ねることで生まれた段差が、空間のアクセントになっています。

炉壁は、海辺で拾ってきた丸い石をスチールプレートに敷き詰めた奥さんの自作。「時間はかかりましたが、楽しみながらつくりました。遊びに来た友人たちからも好評なんですよ」と笑顔で話します。

シーズン中はウッドデッキを薪置き場に活用するため、外と行き来する窓辺までフローリングに直張りしたタイルを敷き詰めている。「Kさん宅のように薪ストーブを後付けする場合、ストーブ周りだけ床の張り替え工事をするのではなく、このようにタイルを貼ると手間も最小限に留めることができます」と橋口さん
「薪ストーブを後付けする場合、ストーブまわりだけ床を張り替えるのではなく、このようにタイルを張ると工事を最小限にできます」と橋口さん
炉壁は奥さんによる自作。海辺で拾った石を一つ一つ貼り合わせ、他ではあまり目にしない独特な形状になっている
炉壁は奥さんによる自作。海辺で拾った石を一つ一つ張り合わせ、個性的で薪ストーブによく合う存在感のあるデザインに仕上がっている

昨年7月に薪ストーブを設置し、初めて迎えた冬。奥さんは「薪ストーブがもたらす暖かさには本当に驚きました。家中くまなく暖まり、主人も手袋なしでぐっすり眠れるようになりました」と話します。

お湯を沸かしたり、冷凍したパンを解凍したり、保温やオーブンの予熱代わりに活用するなど料理の場面でも活躍中。灰はアク抜きに使ったり、家庭菜園に撒くなど、無駄なく活用しています。

空気調整をしながら、熾火を育てるのも薪ストーブライフの楽しみの一つ
空気調整をしながら、熾火を育てるのも薪ストーブライフの楽しみの一つ

「暖をとりながら料理ができるのは一石二鳥ですし、ガス代が高騰している今、薪ストーブはとても経済的ですよね」と大満足の様子です。

大きなガラス面に映る炎を眺めるために、ストーブ設置に合わせてラウンジチェアを新調したという奥さん。薪ストーブの前で読書や会話を楽しむひとときは、奥さんが夢に見た炎のある暮らしそのもの。山登りで知り合った友人たちやご近所さんが、薪ストーブを見に来るなど賑やかです。

室内の薪ラックには焚き付け用の細薪と、燃焼用の太い薪を並べている
薪ストーブが主暖房のKさん宅。初めてのシーズンで消費した薪はおよそ8立米。薪ストーブユーザーが多いエリアということもあり、薪は近隣から譲り受けたり、コロポックルから購入したりして調達している
ストーブの前で過ごすことを目的に新調した椅子に腰を下ろし、薪のはぜる音、炎のゆらめきを夫婦で眺めてくつろぐ時間が何よりの宝物
ストーブの前で過ごすことを目的に新調したラウンジチェアに腰を下ろし、薪のはぜる音、炎のゆらめきを夫婦で眺めてくつろぐ時間が何よりの宝物

「普通の暖房に比べると、薪ストーブは確かに手がかかります。けれど、暖かさと安らぎは何事にも代え難い価値があると思います。実は当初、主人は薪ストーブ導入に反対していたんです。けれど、いざ導入すると薪の支度や焚き付けなど、私と一緒に張り切って楽しんでくれています」と、笑顔で話す奥さんでした。


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