専門家と建築家の協働で
これまでの問題点を解決
雪が多く、氷点下10度ほどまで下がる栗山町の冬。老朽化が進んでいた旧施設は暖房を入れていても底冷えして、灯油ストーブも併用していたといいます。また、十分な加湿もできていなかったため室内の空気が乾ききり、喉を痛める原因にもなっていました。「室内の寒さは、高齢の患者さんのヒートショック、ファンヒーターによる空気の乾燥はほこりやウイルスを舞い上げる原因にもなります。新しい施設ではそれらの問題点を解決したいと思いました」。
そう語る古野さんは13年前、院長の妹さんの自宅の新築工事も手がけ、ピーエスの設備を採用していました。「空気感が自然で、通年で心地よい家になったと、とても喜ばれ、クリニックにもピーエスの設備の採用を決めました」。そこで、古野さんは建築計画のスタートと同時にピーエスに相談。設計プランと並行して、クリニックにふさわしい室内環境づくりにも取り組みました。
「メーカーである私たちと建築家がプラン時から協働することが、理想的な現場への近道です。共有するイメージがより鮮明にでき、建物に適した設備、ベストな大きさや配置を実現できますから」と古野さんと一緒にプランニングに当たった木村マネージャーは話します。
暖房も冷房も意識しない
潤いのある室内環境を実現
新クリニックの建物は、省エネ基準の最高レベルの性能を採用した平屋造り。そのうえで自然な暖かさ・涼しさをつくりだす除湿型放射冷暖房PS HR-Cを3基、そのほか放射暖房PS HRヒータを適所に設置しました。「気流感のないピーエスの暖冷房設備は、冷房の風のような体への負担が少なく、患者さんがリラックスできる環境を実現できます。また、周りの湿度を集めて温度差で水に替え、排水する機能も備えています」と木村マネージャー。
体調に不安を抱える人が集まるクリニックでは、感染症予防のためにも、適正な湿度管理も必要不可欠です。ウイルス対策には、湿度を60%に保つのがベストといわれています。旧施設で悩みの種だった空気の乾燥は、蒸気式加湿器を設置することで解決。「ピーエスの蒸気式加湿器は、自動で滅菌水をつくるので衛生的。24時間自動で適正な湿度を保ち続け、給水やメンテナンスをクリニックのスタッフが行う必要もありません」と、木村マネージャーは話します。
ピーエスの暖房設備は壁や天井、床を暖め蓄熱するので、湿度を60%に保っていても壁に結露やカビが発生しません。「人にも建物にも衛生的な環境を保てるので、クリニックの暖房には最適だと思います」と古野さん。
想定外のウイルス流行にも
きれいで快適な空気に安心感
2018年12月に完成した新クリニックは、ウォールナットやチェリー、チークなど、木の温もりを生かした平屋造り。待合室や診察室には暖冷房を兼ねたパーティーションが設置され、冬は春の陽だまりのような暖かさ、夏は木陰のような涼しさで患者さんを迎えています。
「クーラーのような風がなく、夏はパネルについた水滴が涼しさを感じさせてくれるので、患者さんにも大好評です。窓を開けて換気をしても、涼しさが損なわれないため、コロナウイルスの感染予防にも役立ちました」と、クリニックのスタッフ、藤田良枝さんはにこやかに話します。また、診療時間中は湿度を手間なく60%に保てたことも「安心感があった」といいます。
新クリニックの建築に当たって、古野さんはランニングコストを圧縮するため、地中熱ヒートポンプも採用しました。これにより、最低限の電気使用量で通年、快適な室内環境を保っているといいます。「今できる最高の性能とピーエスの設備、地中熱や日射などの自然の力が三本の矢となって力を発揮し、経済的にも負担感のない環境整備ができました。省エネ化と脱炭素化が求められる今、さまざまな建物づくりに有効な手立てだと再確認しました」と、古野さんは力強く話してくれました。
取材協力/ピーエス株式会社、一級建築士設計事務所エフプラン
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