「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2023」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、岩手県盛岡市を拠点に注文住宅を手がけるオオツカヨウ建築設計の大塚 陽さんです。

「場」と「想い」をつなげる

住宅の立つ場所、また周辺環境の持つ記憶や風土、光や風や匂いなど、人の身体に呼応するものを丁寧に拾い上げ、それに施主のイメージや想い、具体的な暮らしの要望を重ね合わせた住宅にしたいと考えています。

住む人が機能的で快適な暮らしができるようにと意識し、時間が経過しても古びることのない住宅。また静かな佇まいで、周辺地域に溶け込んだ住宅になるようなデザインを心がけています。

庭に面した大きな開口部と吹き抜けのある開放的なダイニング

庭を介して家族がつながる暮らし

盛岡市内の落ち着きのある静かな住宅地での建て替えです。敷地周辺は、道路が比較的狭いために家々が密集しています。敷地は住宅やアパート、畑などに面していて、今後どのように変わっていくかは未知数です。

そこで周囲に対しては、できるだけ開口部を設けずに閉じた構えとし、その内側に中庭を設けることで、風・光・緑を取り込む計画としました。

中庭に面して開口部を多く設け、内部に自然を取り込んでいる
軒を低く抑えた玄関ポーチが、優しく人を受け入れる
軒を低く抑えた玄関ポーチが、優しく人を受け入れる
玄関土間の引き戸を開けると、キッチンやパントリーへ直接アプローチできる
玄関土間の引き戸を開けると、キッチンやパントリーへ直接アプローチできる

玄関から続く土間リビングと一段上がったダイニング、その奥にある寝室は、庭を取り巻くようにコの字型に配置し、各所から庭を楽しめます。

2階も同様で、図書コーナー、リビングコーナー、寝室は庭を介して外とつながるとともに、吹き抜けを介して上下階で家族の気配を感じられるように意図しました。

 

天井をアカマツ板張りで仕上げ、床には大谷石を敷いた土間リビング。広がりが感じられるように、床や天井はそのまま外部とつながる
キッチンの背面収納の引き出しは、収納する物に合わせて高さを計画している。キッチン横には、奥様の家事コーナーを配した
庭の見える1階寝室。天井には味わい深い表情のヨシベニヤを張って仕上げた

土間リビングにある薪ストーブの火を眺めながらソファでくつろいだり、ダイニングでお茶をしたり、あるいは2階の図書コーナーで勉強をしたりと、家族の個々の暮らしの場面が同時進行する中でも、互いの距離が近からず遠からずの「ちょうどいいバランス」を中庭が与えてくれます。

土間リビングの床には温水パイピングを施し、温熱環境を整えている
天井までの高さの本棚と、低い棚を組み合せた大きなデスクがある2階図書コーナー
浴室、洗面脱衣室まわりは同じ素材でそろえて、まとまりのある空間としている

「経年変化し味わいが増すような住宅にしたい」という施主の思いを受け、内装や家具、開口部の素材を一つひとつ一緒に吟味しながら選んで仕上げました。これから少しずつ、庭や街並みに対して緑を増やしていく予定で、より周辺と調和するような住宅になっていくのが今から楽しみです。

■建築DATA
岩手県盛岡市・Sさん宅 
家族構成/夫婦40代、子ども1人、両親、叔父
構造規模/木造・2階建て
延床面積/175.99㎡(約53坪)

設計/オオツカヨウ建築設計 大塚 陽
施工/(有)岩井沢工務所

写真/奥山 淳志



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