先日の記事では、北海道のリノベーション事例の「色」と「素材」についてご紹介しましたが、今回は東北です。

リノベーションは、住まいの選択肢として、いまやスタンダードになりつつあります。限られた条件だからこそ、工夫次第で想像以上の見た目の変化や機能の向上につながることも。もともとある空間に「色」と「素材」をどう調和させているかがリノベーションならではのポイントになるでしょう。


Case.01 戸建て × 古民家 × 風合い

600坪の敷地に立つ、築120年の古民家を自邸として選んだ建築家の橋本 剛さん。銅板屋根、構造体、外壁はそのまま利用することにし、断熱や暖房設備、窓などの改修工事を行いました。

リノベーションに当たって心がけたのは、古民家の風合いを残すこと。天井高のない和室をなくす代わりに、石敷きの土間とし薪ストーブを置きました。和室二間をつなげ、古材や古い建具を生かしてデザインされたリビングのフローリングは、畳をはがして現れた床板と同じ色を選んだといいます。光と風を採り込む北面の障子戸や2階子ども室に上がる階段はそのまま利用しました。

広いおうちでは、音や視線を気にすることなく、子どもたちをのびのびと育てられます。「歴史を残しながら住みやすく」を追求した古民家再生の一例です。

かつて養蚕農家だった古民家は増築や改修を施しながら大切に暮らしてきたことが伝わってくる良い状態だった
かつて養蚕農家だった古民家は増築や改修を施しながら大切に暮らしてきたことが伝わってくる良い状態だった
玄関に入ると広がるゆったりとした土間が、アウトドアリビングのような佇まい
玄関に入ると広がるゆったりとした土間が、アウトドアリビングのような佇まい
古材の色とコントラストを成す白色の漆喰壁は、すべて左官職人による手仕事
古材の色とコントラストを成す白色の漆喰壁は、すべて左官職人による手仕事

■福島県伊達市・橋本さん宅  ■設計 Magnifico建築スタジオ
<Replan Webマガジン掲載>

Case.02 戸建て × 鉄骨造 × 自然素材

母屋と離れを取り壊して二世帯住宅を新築するつもりだったというAさん。現地を見に訪れた建築家の佐久間宏一さんの提案で、リノベーションに舵を切ることとなりました。

木質感あふれる大きな吹き抜け空間に、バニラ色でペイントして仕上げた頑強な鉄骨の構造材が直線を描く、絶妙なバランスの心地よいLDK。その中心で和の趣をプラスさせる畳スペースが、ご家族の憩いの場になっています。内装仕上げには木・紙・土といった自然素材を用いて、鉄骨の固く冷たい表情を和らげ、優しい空間を意識。和紙を貼って仕上げた2階の窓枠兼ルーバーも、やわらかな光を演出します。全面タイル張りでアクセントになっている浴室も明るい色調です。

1階の梁の低さを利用して、深く張り出した軒と縁側を設け、石垣との間に枯山水庭園をつくりました。室内と外部ともに、自然素材の心地よさを感じられる住まいとなっています。

開放感と木質感に満ちた空間を、バニラ色の鉄骨の構造材が支える
開放感と木質感に満ちた空間を、バニラ色の鉄骨の構造材が支える
唯一個室と呼べる寝室は、障子戸で仕切ることができる。鉄骨の上を通る太い丸太は、屋根を支える垂木を受けるために組まれたもので、受け口はすべて大工さんの手刻み
リゾートライクな雰囲気の明るい浴室は、全面モザイクタイル張り
リゾートライクな雰囲気の明るい浴室は、全面モザイクタイル張り

■福島県川内村・Aさん宅  ■設計 (株)エア・コーポレーション
<Replan東北 vol.68掲載>

Case.03 マンション × 床材 × ゾーニング

地下鉄駅から徒歩すぐという好アクセスながら、北側に森が広がる閑静な住宅地。ここに立つ築33年のマンションの一室を購入し、自宅兼事務所に改修したのが、建築家の川上 謙さんです。

玄関ドアを開けるとすぐ目の前に広がるのは事務所スペース。土間の床、躯体現しの天井や壁がラスティックな雰囲気を演出します。そしてその奥に居住空間がレイアウトされています。建具で緩やかに仕切るとともに、活動的に動くダイニング・キッチンは無垢フローリング、ゆっくりくつろぎたいリビング兼寝室は畳といった具合に、床の素材を変えてゾーニングしているのが特徴的です。日本の古家具やリネン素材のファブリックなど、和と北欧のテイストがミックスされた心地よいインテリアも魅力。和室の壁・天井はご夫妻が自ら漆喰を塗って仕上げました。

建築家ならではの間取りと素材の工夫が見てとれる素敵なマンションリノベの一例です。

事務所スペースと住居とのテイストの違いは、心理的なスイッチのオン/オフにもなる
事務所スペースと住居とのテイストの違いは、心理的なスイッチのオン/オフにもなる
和室からはカフェのようなダイニング・キッチンが一望できる。キッチンの壁や畳の縁などところどころに用いた藍色と観葉植物が空間を優しく彩る
和室からはカフェのようなダイニング・キッチンが一望できる。キッチンの壁や畳の縁などところどころに用いた藍色と観葉植物が空間を優しく彩る
ダイニングテーブルは空間に合わせて設計し、造作したもの。もとはサンルームだった窓辺には空間のサイズに合うベッドを置いてソファ代わりに
ダイニングテーブルは空間に合わせて設計し、造作したもの。もとはサンルームだった窓辺には空間のサイズに合うベッドを置いてソファ代わりに

■宮城県仙台市・川上さん宅  ■設計 (株)LIFE RECORD ARCHITECTS
<Replan東北 vol.68掲載>

Case.04 戸建て × 北欧 × 壁紙

子どもたちが巣立ち、夫婦の今後の暮らしを見据えてリノベーションに踏み切ったAさん。耐久性や断熱性を高める躯体改修を行いながらも、家族の歴史が詰まった家なので、その思い出を大切にするため間取りの変更は最小限に留めました。

無垢材やタイル、こだわりの壁紙を採用し、奥さん好みの北欧テイストの空間に生まれ変わったAさん宅。カフェをイメージしたLDKは、東側の壁一面に水色の壁紙を用い、爽やかさをプラスしました。

背面にキャラクター柄の壁紙を貼ったキッチンをはじめ、ビタミンカラーの奥さんの作業スペース、壁の一面をイエロードットが彩るトイレ、壁の一面がイエローのユーティリティなど、遊び心のある壁紙使いがAさん宅のポイント。和室も、明るめの和紙畳とローラ・アシュレイの花柄の壁紙でナチュラルな趣です。好きな色やテイストに囲まれて、ご夫妻の心地よい暮らしが実現しました。

ナラ無垢フローリングと水色の壁紙で、北欧風のカフェをイメージした明るいLDK
ナラ無垢フローリングと水色の壁紙で、北欧風のカフェをイメージした明るいLDK
壁紙の色は、風水も意識しながら配色を決めたという
壁紙の色は、風水も意識しながら配色を決めたという
アールの壁とビタミンカラーのクロスが北欧テイストを醸し出す奥さんの作業スペースは、もともと階段下収納だった空間
アールの壁とビタミンカラーのクロスが北欧テイストを醸し出す奥さんの作業スペースは、もともと階段下収納だった空間
間取りはそのままに、内装をかわいらしく一新した和室は、ご夫妻の寝室として使いやすいように手を加えた
間取りはそのままに、内装をかわいらしく一新した和室は、ご夫妻の寝室として使いやすいように手を加えた

■宮城県石巻市・Aさん宅  ■設計 ヒノケン(株)
<Replan Webマガジン掲載>

12月28日(水)発売の最新号「Replan北海道vol.139」では、色と素材の選び方がとても上手な住まいの事例や、色と素材の基本を紹介しています。好みがはっきり分かれる色と素材。あなただけの正解を見つけてみてください。

(文/Replan編集部)

Replan北海道 vol.139
2022年12月28日(水)発売

北海道内の主な書店やコンビニのほか、
Replanの販売ページamazonfujisan
オンラインでもご購入いただけます。