「北の住まい設計社」の家と家具に囲まれて

白樺の木々が立ち並ぶ景色の中に、穏やかに佇む平屋の家。十勝連邦と美瑛の丘を望みながら読書にふけり、隣接する森を散策する穏やかな日々を楽しんでいるのは九州から移住してきたTさんご夫妻です。かねてから「大きな森に小さな家を建てて余生を楽しみたい」と考えていたTさん。仕事で全国各地を訪れる中で、もっとも心惹かれたのが北海道らしい雄大な自然と美しい丘を持つ美瑛でした。

セカンドライフの拠点となる新居は、景色に溶け込む自然素材を生かした家づくりと、職人の丁寧な手仕事が伝わる家具づくりに憧れ、北の住まい設計社に依頼。2018年に完成した新居は、仕切りのないひとつながりの平屋。床や柱にニレ、梁には希少とされるエゾマツを使い、北海道生まれの木に包まれた美しい住まいです。リビングの窓の向こうには、まるで絵画のような美瑛の丘が広がり、流れる時間も景色も豊かさで満ちています。

そんな素敵な家を彩る家具選びで奥さんがもっとも大切にしたのは、「住まいとの調和」。「この心地よい住空間になじむのは、北の住まい設計社の家具だけ」と考えて、新居の家具のほとんどを同社のものでコーディネートしました。家具の樹種は白い木肌に清潔感と美しさを備えた「イタヤカエデ」を選択。やわらかで明るい色の木の家具たちが、自然と室内全体の照度を上げています。

住まいを彩る詩情豊かなインテリア

道産無垢材の心地よさと、美しい景色が溶け合うこの空間に、アクセントを効かせているのが、奥さん厳選のインテリアアイテムの数々です。福岡県にあるお気に入りのアンティーク家具屋「krank marcello」で出会った照明や、熊本県の雑貨屋「Ecru et pousse」で購入した存在感のあるヤギのオブジェ(石原稔久さんの作品)、全国の作家さんの手仕事の品々を扱う美瑛の店「スイノカゴ」で求めた装飾雑貨など、奥さんの物を見る目と美しい組み合わせが、住まいの魅力をより一層高めています。

うっすらと景色が透けるリビング窓のローマンシェードも、奥さんお気に入りのアイテムの一つ。カーテン生地は奥さんが大ファンだという「ミナ ペルホネン」のファブリックで、ローマンシェード用に買い求め、自ら手縫いしたものです。絵は画家の山口一郎さんの作品、ファブリックはミナ ペルホネン、小家具や照明はkrank marcelloと、家や家具の雰囲気と奥さんの「好き」に的を絞ったアイテムのセレクトが、空間に統一感をもたらしています。

草木花と「余白」で生まれる心地よい空間

「自然素材の家なので、家に置くものはなるべく木や土など自然の素材でつくられたもの選んで、お部屋になじむようにしています」という奥さんは、白樺の丸太をはじめとした庭で調達した草木もインテリアの一部に。「お家が素敵だから、その雰囲気を壊さないよう試行錯誤しています」と笑顔で謙遜されますが、インテリアを引き立てるアレンジや空間とのコーディネートはさすがの一言。

また、奥さんは心地よい空間にするため、「余白」をつくることも意識しているとも話します。「余白を生むためにも、なるべく物を増やしすぎないように気をつけています。それでもいいなと思うものに出会ったときは、お部屋との調和をかなり吟味して選ぶようにしています」。

2021年から本格的に拠点を美瑛に移し、北海道で新たな暮らしを楽しみ始めたTさんご夫妻。無垢材を活かしたシンプルで美しいフォルムの家と家具が、自然の草花やナチュラルな素材感の古家具、陶器のオブジェやお気に入りの絵画など、奥さんの琴線に触れた個性豊かなアイテムと呼応して、この家ならではの世界観をつくり上げています。

owner’s selects

item1 ラウンドテーブル /北の住まい設計社

ダイニングテーブルは円形をセレクト。角がなくやわらかな印象を与えるフォルムが、自然素材に包まれた住空間によくなじみます。イタヤカエデを使用した端正な天板は、キッチンワークトップに使用している人工大理石の質感や色との相性が抜群。脚部は天然塗料で白く仕上げていて、丸みのある意匠が優しい味わいを演出しています。

item2 ラウンドスツール /北の住まい設計社

スツールの張地は、リビング窓のローマンシェードと同じく奥さんの好きなミナ ペルホネンの「タンバリン」。小さな粒を並べて円を描いたデザインは、ミナ ペルホネンの代表的なテキスタイルです。生地は奥さんによる持ち込みで、北の住まい設計社に張り替えてもらったそう。普遍性のあるシンプルなデザインが空間と暮らしに溶け込んでいます。

item3 n’frame BOX /北の住まい設計社

用途や目的に応じて引き出しや扉をプラスして、自由につくることのできる北の住まい設計社の家具シリーズのひとつ。Tさん宅は、木扉と天然塗料でカラーリングした引き出しを組み合わせたチェストにしています。キャビネットの上はキャンドルやオブジェを置いたディスプレイコーナーに。

item4 椅子・照明  /krank marcello

美しい緑を映す寝室の窓に置かれた椅子は、福岡県のアンティーク家具・雑貨のお店「krank marcello(クランク マルチェロ)」の作品。ヨーロッパで見つけた椅子と、動物のオブジェを組み合わせたもので、古材の質感と可愛らしくも詩的な動物の姿は、隣接する森の風景と相まって、まるで童話世界のような雰囲気を醸します。krank marcelloの作品は、熊のモチーフを用いたペンダントライトをはじめ、いくつもTさん宅の随所に配されていて、室内に彩りを与えています。

取材協力/北の住まい設計社