宮島君の建てた家

私のこうした思いが具現化されている実例をご紹介したいと思います。北海道札幌市でフーム空間計画工房という設計事務所を主宰する宮島豊君の設計した住宅です。宮島君は室蘭工業大学の卒業で、若くから設計事務所を構え、高断熱住宅にも早くから取り組み、以前にも私の雑誌の記事で彼の住宅を紹介させてもらったことがあります。

写真や図-3〜6は、ちょうどこれまで述べたような中2階のある平屋建て住宅になっています(実際は中2階の天井高が1.58mのため法規上は2階建てですが、ここでは便宜上平屋とします)。私が述べてきた平屋は高価だという話とは違って、お施主さんがこの記事を読むと「あれ?」と思われるのではないかと思うほどローコストな印象が図面や竣工写真から見て取れます。しかし完成後に、暮らしながらのDIYで住宅を理想のかたちに向けてつくり続けているそうです。

西側外観。総2階建てよりも建物の高さが抑えられているとともに、手前の玄関ポーチによって美しい佇まいとなっている
西側外観。総2階建てよりも建物の高さが抑えられているとともに、手前の玄関ポーチによって美しい佇まいとなっている
リビング・ダイニングから見る。階段の上が中2階
リビング・ダイニングから見る。階段の上が中2階
中2階の一角にあるご主人の書斎スペース。こちらの机や収納もDIYとのこと
中2階の一角にあるご主人の書斎スペース。こちらの机や収納もDIYとのこと
 
中2階
中2階
 

天井高1.58mの中2階。DIYでつくった2つの収納を背中合わせにして間仕切りにもなっている
天井高1.58mの中2階。DIYでつくった2つの収納を背中合わせにして間仕切りにもなっている
図-3 平面図(1階)
図-3 平面図(1階)
図-3 平面図(2階)
図-3 平面図(2階)
図-4 立面図
図-4 立面図
図-5 矩計図
図-5 矩計図
図-6 断面図
図-6 断面図

この家づくりには私も強く共感させられます。こちらの住宅の場合は、予算に合わせてローコストにコンパクトにつくった、平屋のもう一つの典型かもしれません。そしてこうした条件だからこそ、中2階を設けることが必然の結果であるような気がします。高さのある天井がとても気持ちのよい空間を形成し、きれいに暮らすためにも中2階が役に立っているような気がします。外観も総2階建てよりはるかに低いプロポーションが美しく、私たちはこの設計を参考にQ1.0住宅の一つのプロトタイプができるのではないかとも考えています。