ヒートポンプ、効率のカギは「温度リフト」

ヒートポンプは空気の熱を汲み上げてお湯をつくることで、エネルギー効率を向上させています。本来の効率を発揮させるには、汲み上げ元の空気(低温)と汲み上げ先のお湯(高温)の温度差「温度リフト」を小さくするのがポイントです(図12)。

図12 温度リフトを小さくすれば効率アップ
図12 温度リフトを小さくすれば効率アップ
ヒートポンプは文字通り「熱のポンプ」。熱を汲み上げる時の温度差「温度リフト」が大きくなると、しんどくなって効率が落ちます。沸き上げるお湯の温度を下げたり元々の熱の温度を上げたりすることで、温度リフトを小さくして効率を上げることができます。

温度リフトは地面の高低差のようなもの。低いところから高いところに運び上げようとすれば、しんどくて運べる量が減ってしまいます。高低差が小さければ、高効率に仕事が進むのです。省エネモードエコキュート・ガスのアシストをもらったハイブリッドでは、この温度リフトが小さくなるので効率が高くなるのです。最近では、低温の外気ではなく、より暖かい換気の排気から熱をあつめる機種がドイツなどで登場しています(図13)が、これも温度リフトを小さくする工夫といえます。

図13 排気の熱を給湯に活用
図13 排気の熱を給湯に活用
ドイツでは換気時の排気熱を活用することで、通常の外気熱源よりも高い効率を発揮するヒートポンプも登場しています。NEDO太陽熱実証事業における北海道伊達市の実証住宅(小松建設)では、OMソーラーとの組み合わせで寒冷地での給湯省エネを目指しています。

燃料電池の未来は自動車次第?

燃料電池(通称「エネファーム」)はご存知の通り、発電しつつ排熱を給湯・暖房に有効利用することで総合的な効率を上げよう……というコージェネレーションの一種です。正直、現状の本体価格ではペイするのは難しいですが、燃料電池自動車が普及してくると可能性が見えてきます。トヨタが発売発表した燃料電池車MIRAIの最高出力は実に114kW!住宅用はせいぜい0.7kWですから、まさに桁が違います(図14)。自動車で量産効果が出てくれば、家庭用でも低コスト化が進む可能性があります。

図14 燃料電池のMIRAIは車とともに?
図14 燃料電池のMIRAIは車とともに?
コージェネレーション(コジェネ)とは、電気と熱の2つを生み出すという意味です。さまざまなタイプがありますが、主流はPEFC(固体高分子型)です。燃料電池自動車はこのPEFCスタックを大量に使いますので、車で量産効果が出て水素インフラが整備されればコストダウンが進むかもしれません。

「選ばれなかった道」太陽熱給湯

太陽熱給湯については、すでに以前にも触れていますので簡単に。太陽熱は長い歴史があり、シンプルで費用対効果は今も悪くありません。しかし大規模な普及は、もはや難しいのかもしれません。

第39代アメリカ大統領(在任1977〜1981年) のジミー・カーターは、79年にホワイトハウスの屋根に太陽熱給湯パネルを設置しました(図15)。まさに太陽熱はオイルショックの申し子として、日本でもバカ売れしました。しかしホワイトハウスの太陽熱設備は、その7年後にレーガンによって撤去されてしまいました。原油の値段が1バレル100ドルから20ドルまで下がった時、太陽熱はオイルショックとともに忘れ去られました。

図15 「選ばれなかった道」太陽熱給湯
図15 「選ばれなかった道」太陽熱給湯
当時のカーター大統領はオイルショックのさなかの1979年にホワイトハウスの屋上へ太陽熱給湯パネルを設置しました。日本でも太陽熱給湯はオイルショックの時に爆発的に普及しましたが、現在ではすっかり尻すぼみ。太陽光発電の急激な普及の前に見る影もありません。

現在では太陽光発電やヒートポンプなどさまざまな競合技術が登場しています。以前のようなオンリーワン技術ではなくなっているのが現実でしょう。

お湯を減らすことは水道代を減らすこと

ここまで高効率な給湯機を上げてきました。給湯機は建物の影で知らない内に膨大なエネルギーを使っていますから、その削減はとても重要です。一方で日本人はお湯を使いすぎですから、お湯の量そのものを減らすことも大事です。

お湯の削減「節湯」の大きなメリットは、単に電気・ガスの節約にとどまらず水の節約につながること。図16に示すように、10分のシャワーのコスト約80円のうち、半分は上下水道代なのです。上下水道代は結構な金額ですから、まさに「1粒で2度おいしい」といえます。またエネルギーは見えませんが水は見えるので、節約意識が働きやすいのも特徴です。

図16 お湯の節約は1回で2倍おいしい?
図16 お湯の節約は1回で2倍おいしい?
高効率給湯機の採用は、非常に大きな省エネ効果があることが分かります。最近はシャワーに簡単に取り付けられる湯量メーターもあります。

図17で示すように、省エネ基準では様々な節湯型水栓が規定されています。これらは節湯になるだけでなく使い勝手もよいものが多いので、日々の生活の役にもたちます。

図17-1 節湯の工夫それぞれ(H25省エネ基準の定義)

図17-2 節湯の工夫それぞれ(H25省エネ基準の定義)
図17 節湯の工夫それぞれ(H25省エネ基準の定義)

省エネ基準においても、さまざまな節湯措置が定義されています。配管や浴槽は施工時に仕込んでおく必要がありますが、シャワーなどは後からでも容易に交換が可能です。
節湯A1(手元止水)ワイヤレスリモコン(写真上の左)やタッチボタン(写真上の中央)、クリックスイッチ(写真上の右)など手元に近いところで容易に止水できる機構。効果は利用する人の「マメさ」に大きく影響されます。
節湯B1(小流量吐水。写真下の左端):少ない流量で快適に使える工夫がされているシャワーヘッドなど。特に浴室のシャワーは長時間使う人が多いので効果が大きい。交換も簡単でコストパフォーマンスはピカイチです。
小口径配管(写真下の左から2番目):ヘッダー方式の配管とすることで配管の口径を小さくできます。口径を小さくすることで配管内湯の熱損失低減だけでなく湯待ち時間の短縮にもつながります。シャワー系統は内径13mm台所・洗面は10mmで十分。効果が永続的で利便性も上がるためオススメです。
節湯C1(水優先吐水。写真下の右から2番目):台所・洗面のシングルレバーは従来品では中央で給湯が混じり必要がない場合でも燃料を消費します。水を優先的に吐水する工夫により給湯の省エネにつながります。ただし節水にはならないことに注意。
高断熱浴槽(写真下の右端):浴槽壁体の二重化・蓋の高断熱化により湯温の低下を抑えます。家族がバラバラの時間帯に入浴する場合には追焚負荷を大幅に減らすことができます。ただし家族がまとまって入浴する場合には効果は小さくなります。蓋をしっかり閉めないと保温効果はなくなるので要注意。

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