ヒートポンプ、効率のカギは「温度リフト」
ヒートポンプは空気の熱を汲み上げてお湯をつくることで、エネルギー効率を向上させています。本来の効率を発揮させるには、汲み上げ元の空気(低温)と汲み上げ先のお湯(高温)の温度差「温度リフト」を小さくするのがポイントです(図12)。
温度リフトは地面の高低差のようなもの。低いところから高いところに運び上げようとすれば、しんどくて運べる量が減ってしまいます。高低差が小さければ、高効率に仕事が進むのです。省エネモードエコキュート・ガスのアシストをもらったハイブリッドでは、この温度リフトが小さくなるので効率が高くなるのです。最近では、低温の外気ではなく、より暖かい換気の排気から熱をあつめる機種がドイツなどで登場しています(図13)が、これも温度リフトを小さくする工夫といえます。
燃料電池の未来は自動車次第?
燃料電池(通称「エネファーム」)はご存知の通り、発電しつつ排熱を給湯・暖房に有効利用することで総合的な効率を上げよう……というコージェネレーションの一種です。正直、現状の本体価格ではペイするのは難しいですが、燃料電池自動車が普及してくると可能性が見えてきます。トヨタが発売発表した燃料電池車MIRAIの最高出力は実に114kW!住宅用はせいぜい0.7kWですから、まさに桁が違います(図14)。自動車で量産効果が出てくれば、家庭用でも低コスト化が進む可能性があります。
「選ばれなかった道」太陽熱給湯
太陽熱給湯については、すでに以前にも触れていますので簡単に。太陽熱は長い歴史があり、シンプルで費用対効果は今も悪くありません。しかし大規模な普及は、もはや難しいのかもしれません。
第39代アメリカ大統領(在任1977〜1981年) のジミー・カーターは、79年にホワイトハウスの屋根に太陽熱給湯パネルを設置しました(図15)。まさに太陽熱はオイルショックの申し子として、日本でもバカ売れしました。しかしホワイトハウスの太陽熱設備は、その7年後にレーガンによって撤去されてしまいました。原油の値段が1バレル100ドルから20ドルまで下がった時、太陽熱はオイルショックとともに忘れ去られました。
現在では太陽光発電やヒートポンプなどさまざまな競合技術が登場しています。以前のようなオンリーワン技術ではなくなっているのが現実でしょう。
お湯を減らすことは水道代を減らすこと
ここまで高効率な給湯機を上げてきました。給湯機は建物の影で知らない内に膨大なエネルギーを使っていますから、その削減はとても重要です。一方で日本人はお湯を使いすぎですから、お湯の量そのものを減らすことも大事です。
お湯の削減「節湯」の大きなメリットは、単に電気・ガスの節約にとどまらず水の節約につながること。図16に示すように、10分のシャワーのコスト約80円のうち、半分は上下水道代なのです。上下水道代は結構な金額ですから、まさに「1粒で2度おいしい」といえます。またエネルギーは見えませんが水は見えるので、節約意識が働きやすいのも特徴です。
図17で示すように、省エネ基準では様々な節湯型水栓が規定されています。これらは節湯になるだけでなく使い勝手もよいものが多いので、日々の生活の役にもたちます。
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