共働きのMさんご夫妻が家を建てようと考えたとき、真っ先に希望したのは「家事ラクな回遊動線」でした。新居でも賃貸マンションのワンフロアで生活していたときのような動線を継続できるよう、LDK・寝室・水まわりを2階にまとめるプランに。LDKを中心に、寝室とそれにつながる一部屋分ある広いクローゼットルーム、ユーティリティ、ワークスペースまでぐるりと通り抜けできる回遊動線が便利です。
暮らしやすさに重点を置いた家づくりですが、唯一当てはまらない要素は玄関に設置された薪ストーブ。パネルヒーターと床暖房を併用しているため、薪ストーブは補助暖房ですが、ぼんやりと炎を眺めていると日々の疲れが癒やされ、輻射熱の暖かさも心地いいそう。少しの手間ひまが暮らしに豊かさをプラスしてくれています。
Mさん宅は、家事効率と同時にデザイン性も高い空間づくりを目指しました。白を基調としたスッキリとした空間を、キッチンや土間などのブラック・グレーが引き締めます。「家づくりで大切なのは、間取りや動線、設備などの機能性と、お客様の嗜好に沿ったデザイン性を両立させること。それと同時に、どこに予算をかけ、どこを削るかなどのコストバランスをしっかりと考え提案できることだと思います。そして建てたあとにも愛着を持って、暮らしに合わせて育てていける可能性を持つ家を、お客様と一緒につくり上げていくのが私たちのモットーです」とネオス建築の佐藤祐樹代表。
白とグレーの無地がベースのシンプルな家で印象的なのは、構造用の合板を自然塗料で仕上げた床や素地現しの建具です。「素材そのものの質感が生きる空間で、住んでみるととても雰囲気が良く、自分たちの好みに合わせて変えていけるのがいいと思いました。今後は、建具を北欧風のプリントクロスにしたり、趣味の食器ももう少し飾ったりしたいですね」と、楽しそうな奥さん。今までは仕事人間だったというMさんも、これからはDIYや薪ストーブ、庭づくりなど、家で過ごす時間を取りたいと話してくれました。
あえて余白を残した可変性のある空間は、暮らしの変化とともに徐々に家を育てていく楽しみもあります。10年後、20年後、どんな家に育っているのかが気になるMさん宅です。