ガラスの性能だけで比較~トリプルよりペアの方が熱収支はプラス
図1・2では各社のサッシで、各社の採用するガラスの組み合わせで計算しましたが、サッシの枠およびガラスの性能は一長一短であまり変わらない結果でしたが、サッシ枠を同じにして、ガラスによる違いを見てみたいと思います。
図3はサッシをA社のサッシとして、いろいろなガラスを組み合わせた場合の計算結果です。
同じく引き違いのサッシで南面のみを示します。標準的なペアとトリプルでは、はっきりとペアの方が収支でプラスになることが分かります。新型ガラスには2種類あり、日射侵入率を重視したものと熱損失を重視したものです。
これで見ると、ペア・トリプルともに日射侵入率が高い方が収支では圧倒的に良く、ここでもペアの方がわずかに収支で良くなります。当然のことながら、日射遮蔽型のガラスでは収支はマイナスになり、帯広でもプラスは小さくなります。熱損失はわずかに小さくなることが多いのですが、やはり南の窓には使うべきではありません。
このことから、ペアガラスで十分という結果には必ずしもなりません。トリプルガラスでは、熱損失がかなり小さくなります。サッシだけで熱収支を考えると図1~3のようになるのですが、熱損失が小さくなる分、住宅全体の熱損失も小さくなりますから、評価は住宅全体の暖房エネルギーがどうなるかで評価する必要があります。
住宅の暖房エネルギーで評価するとやはりトリプルガラスがいい
今度は、C社のサッシで、ガラスを変えて住宅の暖房エネルギーを計算してみます。計算する住宅は、120㎡のモデルプランで、断熱レベルはQ1.0住宅レベル3す。2地域のQ1.0住宅レベル3の標準仕様例では、このC社のトリプルガラスが使われています。窓構成に、南窓にハニカムサーモブラインドを設置する例も加えます。計算結果を図4に示します。
札幌では、ほぼ開口部の熱損失の順に暖房エネルギーも小さくなりますが、帯広では少し様子が変わります。標準のトリプルガラスに比べて、新型のペアガラスのときの暖房エネルギーがほぼ同じになり、ハニカムサーモをつけるとかなり暖房エネルギーが少なくなることが分かります。新型のトリプルガラスはさらに小さくなり、新型ガラスが窓の熱収支だけでなく、住宅全体の省エネにも大きな貢献をすることが分かります。ハニカムサーモブラインドの効果は、今省エネ基準の規定でブラインドを12時間下ろすという計算をしていますが、北海道では冬の日没が早く、ブラインドの使用時間はもっと長くなることが想定できますので、この効果はもっと高くなると思われます。
窓の大きさによる比較~大きな窓の組み合わせでデザインを
図5に窓の大きさや開閉方式で比較した結果を示します。
窓の大きさが違えばそのままの比較はできないので、窓面積当たりの数値で示します。これを見ると明らかに大きなサッシが有利であることが分かります。これはガラスのU値の方が、サッシ枠のU値よりも小さくなっているためで、全体の面積に対してサッシ枠の占める割合が少ない方が、熱収支のプラスが大きくなるわけです。FIX窓がその傾向が大きくなります。
住宅のデザインとして、南面の窓を大きく取りパッシブソーラーハウスの方向を目指すとき、できるだけ大きなサッシを組み合わせることがいいといえます。小さな窓をたくさん並べて全体で大きな南面開口部を構成しても、あまり省エネにはならないのです。