留萌市に暮らすUさんご夫妻が、知人の紹介で旭川の薪ストーブ専門店のコロポックルと出会ったのは、築28年の自宅の雨漏りがきっかけでした。コロポックルの母体はリフォームなどを手がける建設会社。「話を聞いたところ、昔から入れたいと思っていた薪ストーブの相談にも乗ってもらえると分かって、雨漏りの修理や家の部分リフォームと一緒に薪ストーブも入れることにしました」とUさんは経緯を話します。
Uさん宅は灯油セントラル暖房でしたが、家の断熱性能の乏しさもあって、冬の高額な灯油代にも悩まされていました。そこで玄関からLDKまわりを中心に断熱を強化。リビングの一角、小上がり和室があったスペースの床面を、フラットな板張りに変えてLDKを暖める暖房として、薪ストーブを据えることにしました。
コロポックルの薦めで選んだのはドイツ・ブルナー社の薪ストーブ、アイアンドッグ(IRONDOG)の「Nº7」です。日本のユーザー向けにつくられたというこの機種は、日本の住宅にフィットしやすいサイズ感で、どのようなテイストの空間ともなじむシンプルなデザイン。Uさん宅の古民家のような雰囲気の内装にも、とてもよく調和しています。
炉台に敷いたのは、黒色の大理石。漆黒に艶めく表面に炎のゆらめきが映り込む様が、火を眺める楽しみの幅を広げてくれます。この機種はヒートシールドを標準装備していて、背面への放熱がほとんどないため、炉壁が必要ないのも特徴です。
炉内を覗くと、側面の内側にアイアンドッグのエンブレムが浮かび上がっているのが見えます。「こういったさり気ない遊び心も、機種ごとにつくりやデザインに独特の個性のあるアイアンドッグシリーズの大きな魅力ですね」と、コロポックルの橋口宏二さんは話します。
リフォームやリノベーションで薪ストーブを設置するには、基本的に煙突を新設することになります。屋根や壁に穴を開けるため、雨漏りなどの不具合が起こらないよう確実な工事が不可欠です。「その点、コロポックルさんはリフォーム工事にも精通しているので安心でした」とUさん。今回は特に雨漏りの修繕工事と煙突の施工を同時に行ったため、より安全にスムーズに煙突工事も実施できたといいます。
Uさんたっての希望で入れた薪ストーブですが、今、一番よく触っているのは普段家にいることの多い奥さんです。実は奥さんは当初、薪ストーブの導入には大反対でした。「ヒーターならスイッチ一つで操作できますが、薪ストーブは火をつけなきゃいけないでしょう。自分でできるか不安でしたし、薪も必要で使うのが大変だと思ったので」と当時を振り返ります。
しかしいざ使い始めると「火の扱いは思っていたより簡単で、イメージが変わりました」。あれこれ試しながら火をつけるテクニックが少しずつ上達して、今は毎日の楽しみになっていると話します。奥さんが最も幸せを感じるのは、薪ストーブの前にムートンを敷いてのお昼寝タイム。「気持ち良い暖かさにすっかり魅せられています」と笑顔を見せます。
Uさん宅では、薪を燃やすことで定期的に出る灰も有効活用しています。「灰はアルカリ性なので、酸性土壌を中性化してくれる作用があります。それに融雪剤代わりにもなるので、たまるとその都度庭に撒いているんですよ」と、庭の様子も見せてくれました。
薪は、近所で林業を営んでいる方から丸太を融通してもらって、薪割りをして使っています。橋口さんは「しっかり乾燥させてさえいれば、針葉樹を燃やしても問題ありません。針葉樹は一気に火力が上がる瞬発力があり、広葉樹は長くじっくり燃える特徴があるので、組み合わせて一緒に使うといいですね」と薪の使い方をアドバイスします。
リフォームと薪ストーブの効果で、暖房をつけても肌寒かったLDKが暖かく安心して過ごせる憩いの空間に。「火を眺める暮らしのおかげで、けんかも減りました」とご夫妻は笑います。また冬の大きな悩みの種だった灯油代は以前の6分の1程度で済んでいて、経済的な効果も実感しています。
「周囲の人たちがみんな『薪ストーブは暖かい』と言うし、火を眺める生活への憧れもあって導入しましたが、実際使うようになって木を使うことに関心が向きました。また鋳物製で煮炊きもできるので、停電時の備えとしても心強いことに気づきました」とUさん。この冬もUさん宅のリビングでは、薪ストーブが赤々と美しい炎をたたえています。
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