2021年9月に札幌市豊平区にオープンした「ugo」は、多彩な用途を備えた複合施設。1階はインテリアや生活雑貨が並ぶショップやカフェ、2階にはコワーキングスペースと、水タバコを嗜むスペースを設けています。
もともとは民泊施設だった築50年の建物を自らリノベーションしたのは、ugoのオーナーである伊藤莞太さん・夏帆さんご夫妻。「さまざまな文化を発信するための拠点となるお店をつくりたい」という夢を実現させるため、東京から札幌に移住し、ご夫婦で運営しています。
水パイプを使用して、タバコの煙を水にくぐらせて喫煙する「水タバコ」。以前はアンダーグラウンドのイメージが強かったものの、ここ数年は徐々に人気が高まっていて、札幌市内でも水タバコを扱うカフェやバーが増えてきています。
燃焼時間の長い水タバコは、ゆっくりと煙をくゆらせながらリラックスした時間を楽しむのが醍醐味。この非日常的な時間をさらに豊かにしてくれるのが、薪ストーブです。
「火を囲みながら水タバコを楽しむ環境をつくることが大前提でした」と伊藤さんが話すように、このお店にとって薪ストーブの導入は必須。店舗設計を担当したデザイナーの紹介を受けてさっそく訪れたのが、札幌市内にある「神楽ストーブ」のショールームでした。
「具体的な機種を想定していたわけではないのですが、理想はいくつかありました」と振り返る伊藤さん。重視したのは、炎を眺めるための大きな窓がついていること、ストーブトップで乾燥対策のために湯を沸かしたり、料理が楽しめるように背面から煙突が出せること、そして、デザインが優れていることの3つでした。
期待を胸に、神楽ストーブに足を運んだご夫妻が、ひと目で心を奪われたのが、ショールームの置かれていた「アイアンドッグ Nº05」です。
Nº05はドイツの彫刻家がデザインした薪ストーブで、ひとつひとつ手仕事で仕上げられた繊細な彫刻の美しさが、他に類を見ない個性を放っています。「他の機種に目移りすることなく、すぐに気持ちが固まりました」と、ご夫妻は即決したといいます。
「これ以上にデザイン性の高い薪ストーブはないですよね。さらに窓も大きく、背面から煙突を出すこともできて、理想そのもの。築50年の古い建物なので、暖房機器としての優秀さも求めていましたが、馬力もあって暖かさも申し分ないということで、Nº05以外の機種は考えられなくなりました」と、その魅力を語る伊藤さんの言葉に熱がこもります。
薪ストーブの設置、煙突や屋根の板金などは、神楽ストーブが担当。同社を運営する(株)リーテックは、住宅補修などを手がけるリペア業を行なっているため、屋根や壁に新たに穴を空けることになる住宅や店舗の工事でも、薪ストーブ関連の設置・施工を安心して任せられます。
「薪ストーブの前は『特等席』と呼ばれているんです。今日は特等席は空いていますか?と事前に電話でお問い合わせをくださるお客様もいるほど、大好評でした。薪ストーブのあるお店、と宣伝もしてくれるんですよ」と夏帆さん。
「使い勝手も良いですし、お客様も率先して薪をくべています。ストーブトップでは1階のショップで取り扱っているダッチオーブンを使ってさまざまな料理にも挑戦しました」と、初めて過ごした冬の日々を振り返ります。
薪は室蘭市にある夏帆さんの実家の山から切り出し、自分たちで自作。ご両親も薪づくりを一緒に楽しんだそうで、「自分たちの家にも薪ストーブの導入を検討中で、先日神楽ストーブさんに行ったんですよ」と、夏帆さんは笑います。
「ugoは札幌の都心部から少し離れています。雪の降る寒空の下、それでもお客様が足を運んでくださる大きな動機のひとつにこの薪ストーブがあります。ugoでしか味わえないゆっくりと炎を眺め、煙をくゆらせる唯一無二の時間をもたらしてくれるこの薪ストーブは、お店を支える大切な相棒です」と伊藤さん。
夏は薪づくりや薪棚の自作など、次のシーズンに向けて準備する予定だそうで、「やることが結構たくさんあるんですよ」と話すお二人は、とても楽しげでした。
取材協力/ugo https://www.ugo-lifestyle.info