「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、岩手県を拠点に注文住宅を手がける佐藤工夢店の佐藤 誠さんです。
景色を暮らしに取り込み、住まいが景色に溶け込む
今、暮らしている地域にはどんな景色がありますか? これから住まいをつくろうとしている地域には、その地域だけが持つ歴史や文化、景色があります。例えばそれは趣ある城下町だったり、良き田園や稜線を望む里山だったり、綺麗な川の流れる街だったり、豊かな海を望む高台だったりします。
そこに建築する住まいは、今後その地域の一部になります。建築は今後の地球環境や地域の気候と向き合いながら、ひとつになることを意識することになります。そこで暮らす家族にとって何気ない日常の暮らしがかけがえのないひとときとなり、誇らしく気持ちのいい空間となるデザインを心がけています。
故きを温ねて新しきを知る
今回、住まいの計画にあたり新築ではなくリノベーションを選択した理由。それはどちらであっても温熱的な心地よさをデザインできることに端を発します。
建具や仕切りが多いため使いづらい間取り、また家の中がー10℃にもなる厳しい寒さから閉鎖的な空間だった以前の住まいは、築70年で培った佇まいを残したまま、新しいのになじみ深い暮らしへと生まれ変わりました。
南側のパノラマの大開口はくつろぎ空間から外の景色が広がり、床面積以上の立体感を生み出します。真冬は太陽熱を取り入れ、少しのエネルギーで家中どこでも快適に過ごせるのでいつでも素足で暮らせます。ご希望だった家族が集まるLDKと、吹き抜けでつながるセカンドリビングをマルチファンクションスペース化。LDKと同じ空間にいながら別々のことをする現代の多様な暮らし方にもぴったりです。吹き抜けはエアーシャフトとして、外が心地よい季節、夜間は地窓と高窓を開けるとファンを使わなくても冷たい空気が循環します。
建築は研鑽を積むことで不可能だったことが可能になる奥深い一面を持っています。時間が経つ毎に暮らしが昇華される経年変化を求め「傷や色の変化を楽しめる居心地のいい空間」を、というご希望を多角的に実現した住まいが出来ました。
■建築DATA
岩手県一関市・Sさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども2人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/179.26㎡(約54坪)設計/佐藤工夢店(株) 佐藤 誠
施工/佐藤工夢店(株)
撮影/小川 祐
\2022/4/18発売!「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」/
東北で活躍する建築家や建築会社によるデザイン性の高い住宅実例集のほか、2021年に宮城県石巻市で竣工したマルホンまきあーとテラス(設計/藤本壮介建築設計事務所)を取材した巻頭特集やインテリアアイテムに関するエッセイなど、住宅や建築を多面的に捉えたコンテンツで、家づくりの参考になる住宅のデザインを提案。
普段なかなか目にすることのないこだわりの注文住宅を多数掲載しています。ぜひ家づくりの参考にご覧ください!
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