「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、青森県を拠点に注文住宅を手がける蟻塚学建築設計事務所の蟻塚 学さんです。


住宅は生活のいれもの

「住宅は生活のいれもの」であり、「生活」にはその人が歩んできたこれまでが色濃く反映されるものです。私たちは設計のプロであり、数多くの経験を積んでいますが、目の前にいる「この人(建主さん)」の住宅を設計するのは初めてで分からないことだらけ。もちろん建主さん本人も素人のケースがほとんどです。したがって「住宅とはこう設計するべき」と決めつけるのではなく、常にニュートラルなスタンスで建主さんとお話をしながら、生活の風景を丁寧に積み上げていくような設計をしていきたいと考えています。

シンプルな外観。寝室のある2階部分がブリッジしてアプローチをつくっている
シンプルな外観。寝室のある2階部分がブリッジしてアプローチをつくっている

強く、しなやかな住まい

弘前市街の準防火地域で、大きな道路から小路に入る少し小さめの土地割りのエリアに建つ住宅です。周辺には古い住宅と建て替わった新しい住宅が混在しており、これから変わっていく風景や近隣との関係を考える必要がありました。

庭から2層吹き抜けになったサンルームを望む
庭から2層吹き抜けになったサンルームを望む
階段を兼ねたサンルームは、庭とリビング、1階とプライベート空間である2階へつながっている
階段を兼ねたサンルームは、庭とリビング、1階とプライベート空間である2階へつながっている
サンルームがリビング全体を光で満たす
サンルームがリビング全体を光で満たす

建主さんはそれぞれ忙しい共働きのご夫妻で、時間の限られた中でくつろいだり、在宅の仕事をこなしたりと、お二人の生活時間帯を重ね合わせながら「合理的に過ごす」空間が必要でした。その結果、生活時間が進むにしたがって寝室に近いエリアに移動していく、ひと筆書きのような空間構成となり、1階にリビングと客間、2階に子ども部屋、浴室まわりとワークスペース、その動線のさらに奥に行った先に寝室を置くことになりました。寝室は北から南へ向かって大きくブリッジしており、その下に駐車場から玄関へと続くアプローチ空間をつくり出しています。

ダイニングテーブルと一体になったコンパクトなキッチン。家具作家との共同による造作仕様
ダイニングテーブルと一体になったコンパクトなキッチン。家具作家との共同による造作仕様
畳敷きの客間は、障子を備えた控えめな正方形の地窓から光が射し込む
畳敷きの客間は、障子を備えた控えめな正方形の地窓から光が射し込む

外観は防火性能も含めた耐久性の観点からガルバリウム鋼板でシンプルな仕上げとし、南面に大きく開いた窓は2層吹き抜けの明るいサンルームとなります。強いだけではなく建主さんの生活にしなやかに寄り添うような住宅。時間が経って周辺の風景が変わっても、この住宅は変わらず凛とした佇まいをこの地域に見せてくれています。

サンルームの上に位置するワークスペースは、明るく開放的な空間
サンルームの上に位置するワークスペースは、明るく開放的な空間
寝室と2階吹き抜け空間をつなぐワークスペース
寝室と2階吹き抜け空間をつなぐワークスペース
寝室の中にはパウダーカウンターを設けている
寝室の中にはパウダーカウンターを設けている
回遊できるウォークインクローゼットと隣接する落ちついた寝室
回遊できるウォークインクローゼットと隣接する落ちついた寝室

■建築DATA
青森県弘前市・Nさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども1人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/135.35㎡(約40坪)

設計/(株)蟻塚学建築設計事務所 蟻塚 学、古山 紗帆(元所員)
施工/(有)齋藤工務店

撮影/西川 公朗


\2022/4/18発売!「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」/

東北で活躍する建築家や建築会社によるデザイン性の高い住宅実例集のほか、2021年に宮城県石巻市で竣工したマルホンまきあーとテラス(設計/藤本壮介建築設計事務所)を取材した巻頭特集やインテリアアイテムに関するエッセイなど、住宅や建築を多面的に捉えたコンテンツで、家づくりの参考になる住宅のデザインを提案。

普段なかなか目にすることのないこだわりの注文住宅を多数掲載しています。ぜひ家づくりの参考にご覧ください!

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