「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2022」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、宮城県を拠点に注文住宅を手がける菊池佳晴建築設計事務所の菊池 佳晴さんです。


世代を超えて持続可能な住まい

異常気象が毎年のように続き、地球環境や自然との向き合い方を社会問題としてだけでなく、各個人が考えさせられる時代になってきました。そんな今だからこそ、新建材や機械設備にできるだけ頼らず、身近にある自然素材(木、土、石…)や自然エネルギー(太陽、風、水…)を意匠的にも機能的にも住まいの設計に生かして、周囲の自然の恵みを感じながら長く愛され、使い続けられる住まいをつくることが必要だと感じています。

将来の地球環境を見据え、自然環境と呼応しながら、世代を超えて持続可能な住まいを設計したいと考え、実践しています。

敷地南東からの建物全景。角度のついた屋根の形状が印象的

雪国の屋根のデザインと気持ちのいい内部空間

多い年では積雪量が1.5〜2mにもなる豪雪地帯で、日照時間は年平均1300時間と山形県の中で最も短いエリアのため、建築にあたっては雪処理の負担が少なく、暖かく快適に過ごせる家が求められました。

木立の中のアプローチ
木立の中のアプローチ
子どもたちが走り回る南側テラス
子どもたちが走り回る南側テラス

まずは屋根の形状から考え、出入り口や眺望のための開口部と、屋根から落雪する場所をずらし、建物の角の3ヵ所に集められるようにしました。開口部の先に雪がないので、日照と眺望を確保することができます。

建物の外側に雪囲いになるような壁を設け「入れ子状」にすることで、厳しい風雪から外壁や開口部を守るとともに、間の空間を雪かき道具や漬物が置ける場所として機能するようにしました。冬でも外に出やすくなり、子どもたちにとっても嬉しいです。

大開口や吹き抜けから光が射し込むリビング・ダイニング
大開口や吹き抜けから光が射し込むリビング・ダイニング
リビングへと視線がつながる吹き抜け
リビングへと視線がつながる吹き抜け

ファミリーホールに隣接する子ども部屋
ファミリーホールに隣接する子ども部屋
薪ストーブ1台で家全体が暖かい
薪ストーブ1台で家全体が暖かい

夏は、外側の壁が日照を遮ることで、冷輻射を感じられる涼やかな入れ子空間となります。室内にある吹き抜けが1階と2階をつなぎ、庭から室内上部のトップライトへ風が抜けることにより、暑い夏でも涼しい風を感じながら過ごすことができるよう計画しました。冬は、高い断熱性能の壁により少ない薪の量でも、薪ストーブの輻射熱で室内全体が隅々まで暖まる家となっています。

風雪から建物を守る雪囲いのような入れ子空間
風雪から建物を守る雪囲いのような入れ子空間
冬の風景 撮影/菊池 佳晴
建主が自作した薪棚 撮影/菊池 佳晴

近所の友人や親戚家族が集まり、一年を通して四季の変化や自然の豊かさを感じながら、気持ちよく過ごすことができる住まいになりました。

■建築DATA
山形県最上町・Sさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども2人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/237.22㎡(約71坪)

設計/(株)菊池佳晴建築設計事務所 菊池 佳晴、遠藤 和郎
施工/共栄ハウジング(株)、(株)沼澤工務店
構造設計/名和 研二(構造設計室なわけんジム)
外構工事/(株)最上振興
植栽工事/川村 博崇(Natures Rock Kawamura Garden)

撮影/西川 公朗


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東北で活躍する建築家や建築会社によるデザイン性の高い住宅実例集のほか、2021年に宮城県石巻市で竣工したマルホンまきあーとテラス(設計/藤本壮介建築設計事務所)を取材した巻頭特集やインテリアアイテムに関するエッセイなど、住宅や建築を多面的に捉えたコンテンツで、家づくりの参考になる住宅のデザインを提案。

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