高断熱窓の低価格化でみんなの暮らしが暖かく
窓の高断熱化が進むと、断熱全体のコストを大きく下げることが可能です。低断熱窓を禁止したドイツでは、高断熱窓の低コスト化が進み、DIYショップなどでは日本の何分の1といったビックリするような安さで、トリプルガラス+樹脂サッシの高断熱窓が売られています。おかげで低所得者向けの賃貸住宅においても高断熱化が積極的に進み、国民みんなに高断熱の恩恵が届くようになりました。窓の高断熱化は、断熱普及の最重要アイテムなのです(図5)。
日本においてもようやく、断熱上位等級の新設と窓のトップランナーの強化により、高断熱窓の普及と低価格化が進み始めることが期待されますが、さらなる強化とスピードアップは不可欠です。
気密がとれないルーバー窓と出窓は絶滅
窓の断熱強化のためには、ガラスやサッシの選択が重要なのは当然です。窓断熱の詳細については本連載の第21回で解説していますので、併せてご覧ください。
さらに、窓にはさまざまな「開き方」があり、上手に選ぶことが大事です。 以前はどの家にもついていた「ルーバー窓」と「出窓」。そういえば最近、あまり見ないような?と思われたかもしれません。実際、サッシ協会の統計によると、1993年にルーバー窓がある家が58%、出窓がある家が70%だったものが、2020年にはいずれも「ほぼゼロ」にまで減ってしまいました。
ルーバー窓は通風、出窓はデザインに優れていたのか、いずれも以前は積極的に選ばれていたタイプです。残念ながら断熱・気密の性能がひどく悪かったため、最近の家では採用されなくなったのです。ルーバー窓・出窓ともに、内窓の追加などで後から断熱・気密を強化することは非常に困難です。窓の選択においては、デザインばかりでなく性能もきちんと確保しておかないと、後で後悔することになるのです(図6)。
なんでも引き違いはNG。FIXや片引き、縦すべり出しの活用を
日本の家で最も多く使われている「引き違い」は一見便利そうですが、2枚の障子が両方動き、かつ窓枠と障子を密着させる機構がないので、どうしても隙間が多く気密性能が劣ります。また、熱が逃げやすい枠の部分が大きくなることから、断熱も悪くなります。
引き違いは、大きな荷物を運びこむ可能性がある窓にだけ、限定して選択することをオススメします。 開閉が不要な窓は、FIXにすれば気密は完璧ですし、フレームを細くできて断熱も強化できます。ガラス面積が大きくなるので景色を見るピクチャーウィンドウにピッタリなだけでなく、冬の日射取得にも有利です。
通風のために開く窓には、障子が外に飛び出してウィンドキャッチとして機能する「縦すべり出し」が最適でしょう。閉めたときには窓枠と障子が密着するので、断熱・気密の確保も容易になります(図7)。
今回は、断熱の上位等級新設、そして窓の断熱強化について考えました。ようやく国が住宅の断熱強化に乗り出したのは、まさに歴史的な出来事であり、大変素晴らしいことです。一方、その恩恵をみんなに届けるためには、窓の性能向上とコストダウンが欠かせません。窓の上手な選択を通して、性能とデザインのバランスが上手にとれた家づくりが広がっていくことを期待しましょう。
【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
vol.006/窓の進化
vol.007/断熱・気密はなぜ必要なのか?
vol.008/冬のいごこちを考える
vol.009/電力自由化! 電気の歴史を振り返ってみよう
vol.010/ゼロ・エネルギー住宅ZEHってすごい家?
vol.011/冷房を真面目に考えよう
vol.012/ゼロ・エネルギーハウスをもう一度考える
vol.013/冬の快適性を図る指標「PMV」を理解しよう!
vol.014/エネルギーと光熱費最新事情
vol.015/夏を涼しく暮らすコツを考えよう
vol.016/冬の乾燥感
vol.017/採暖をもう一度科学する
vol.018/ゼロエネルギー住宅ZEH、本格普及へ
vol.019/夏の快適性をエリアで考える
vol.020/Wh(ワットアワー)とW(ワット)で考える非常時のエネルギー
vol.021/窓こそ省エネ・快適の最重要パーツ
vol.022/職住近接は地球にも人生にも優しい
vol.023/未来の気候に備えた敷地選びと家づくり
vol.024/日当たりを考えた敷地と建物
vol.025/健康・快適なリフォームの3つのポイント
vol.026/在宅勤務の普及で家づくりが変わる!
vol.027/二世帯住宅とエネルギーの関係
vol.028/平屋づくりのポイントを考える
vol.029/住宅地での日当たりを考える
vol.030/住宅の脱炭素
vol.031/住宅の脱炭素 その2
vol.032/断熱リフォーム
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