薪ストーブのある生活に欠かせないのが、薪の調達。薪はストーブ屋さんから購入する以外にも、暮らしている地域やその環境によってさまざまな調達方法があります。そこで今回は、自社で購入した森の間伐材と作業場を提供する建築会社と、その材を自身の手で割って薪づくりをするオーナーさんたちの、ちょっと珍しい薪活の取り組みをご紹介します。
北海道恵庭市にある山林の一角で、作業用の服を着込んだ方々が集まって作業をしています。皆さんは、北清建設(北海道恵庭市)で家を建てたり、リフォームしたりした薪ストーブのオーナーさんたち。土場に積み上げられた丸太を、自らの手で割って薪をつくっています。
このあたり一帯は、薪ストーブのある家づくりを積極的に進める北清建設が所有する「北清の森」。同社が「地元の森の間伐材を薪として活用しよう」と購入しました。今ではお施主さんや地域の子どもたちに開放し、社会学習や貴重な自然に触れられるフィールドとして、多目的に活用されています。
そして春と秋、主に毎週土曜日の午前中にここで行われているのが「薪割りの会」の薪づくりです。「薪割りの会」は、薪ストーブのオーナーさんたちが自主的に運営している活動で、現在は15世帯ほどが参加しています。北清建設がするのは、場所の提供や山からの丸太の切り出し、機材の貸与や困ったことがあった時のアドバイスぐらいで、あくまでもオーナーさんたちが主体というのが、この会の大きな特徴です。
作業の様子を見ていると、まずそのチームワークと手際の良さに驚かされます。薪割り機で丸太を割る人、それを補佐する人。割れた薪を運ぶ人、それをバランス良く積み上げていく人…。慣れた手つきで仕事が進み、丸太の山がどんどん小さくなって、薪の山がどんどん増えていきます。代表の相澤裕二さんによると、北清の森から切り出される木の樹種は、主にナラとタモとのこと。どちらも薪に適した広葉樹です。
休憩時間。冷たい風が吹いていて、何もせずに立っていると寒くさえ感じますが、一仕事を終えたみなさんは汗だく。しっかり汗を拭いて水分補給です。メンバーのKさんは、会の中でもリーダー的な存在。家でも原木を切って薪づくりをしていて、チェーンソーを3台も持っているそうです。周辺には薪ストーブを使っている家も多く、「チェーンソーのエンジン音が聞こえてくると、気になっちゃって」と笑います。
薪割りの会は、薪ストーブについての情報交換の場としても大事な存在。新オーナーさんは、薪ストーブや薪割りの悩みをベテランのオーナーさんたちに気軽に相談できます。また同じ機種のストーブを使っている人が見つかりやすく、そのストーブならではの扱い方について話し合えるという点でも、貴重な場なのだそう。
そして、薪割りの会最大の魅力は、何と言っても労働の報酬として自分たちで割った薪がもらえること。1回の薪割り参加で、65cm四方の箱いっぱいくらいの薪を持ち帰ることができるのです。春と秋の間にコンスタントに薪割りに参加すれば、ひと冬分に近い量の薪がもらえることになるといいます。
間伐で森はより豊かに育ち、切り出された木は、地元に暮らす人たちの家で薪ストーブの燃料として活かされる。北清の森からは、この地域の森と人にふさわしい循環が生まれていました。自ら汗して、仲間と一緒に薪活をして作った薪を燃やす。「薪ストーブが使いたくて、冬が待ち遠しい」という何気ない言葉と、皆さんの清々しい笑顔が印象的でした。
(文/Replan編集部)