「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしています。今回は、山形県を拠点に注文住宅を手がける大類真光建築設計事務所の大類 真光さんです。


ともに考え、ともにつくる

住宅は日常の暮らしの場であり、プライベートな空間。ですので、いつでもリラックスできて、自分らしくいられる普段着のような場所になるのが良いと考えています。ハレとケ(非日常と日常)でいえば、家は「ケ(日常)」です。暮らしがより豊かになる住まいの姿をお施主様とともに考え、居心地が良い、心からくつろげる建築をつくることを大切にしています。

建物は、カーポートを組み合わせてL型に配置。外壁にはスギ板とそとん壁、ガルバリウム鋼板を用いて仕上げている
「小石川にある家」はカーポートを組み合わせてL型に配置。外壁にはスギ板とそとん壁、ガルバリウム鋼板を用いた

自然の素材に包まれて
コンパクトながら居心地の良い家

山形市内の閑静な住宅街の一角に建つこの家は、家族3人で暮らすためにつくった私の自邸です。北側道路に面して3方向を住宅に囲まれているうえ、広さも約40坪のコンパクトさ。この恵まれているとはいいにくい敷地条件の中で居心地の良い住まいをつくるためのポイントとなったのは「窮屈さを感じないこと」と「プライバシーに配慮した安心感と、眺望や採光による開放感を同居させること」でした。

そこで、家族の暮らしの中心となるLDKを2階にレイアウトし、広さと眺望、採光を確保。隣家の2階の窓の位置などにも配慮して開口部を設け、カーテンを開けたままでも外からの視線を気にせず過ごせます。キッチンは音や臭いのことを考えて、ダイニングとつながりながらも独立した配置としています。

立地条件を踏まえ、2階にLDKとフリースペース、子ども室を配置
立地条件を踏まえ、2階にLDKと広いフリースペース、子ども部屋を配置。フリースペースにはピアノを置いたりみんなの本棚を造りつけたりして、リビング・ダイニングと一体的に使える
対面式ではないレイアウトを採用したキッチン。壁はタイル、ステンレス、ゼオライトの3種類の素材で仕上げた
対面式ではないレイアウトを採用したキッチン。壁はタイル、ステンレス、ゼオライトの3種類の素材で仕上げスタイリッシュな印象に
キッチンとダイニングはゆるやかにつながっていて、食事の準備や片づけをしているときも孤立感は感じない
キッチンとダイニングはゆるやかにつながっていて、食事の準備や片づけをしているときも孤立感は感じない

家族が別々の場所にいても、なんとなくお互いの気配を感じられるよう、家全体がワンルームのようなつくりを意識しました。子ども部屋はあえて2階に設け、帰宅後の子どもがそのまま自室にこもってしまわないような動線としています。家づくりでは、ライフステージの変化を見越した設計も重要です。子ども部屋は、将来的には夫婦どちらかの部屋として使うことも想定しています。

リビングから階段を挟んで奥に子ども室を配置
リビングから階段を挟んで奥に子ども部屋を配置
子ども室は、子どもが巣立った後は夫婦どちらかの個室として使うことを想定
子ども部屋は、子どもが巣立った後は夫婦どちらかの個室として使うことを想定

1階には、水まわりと家族みんなで使うクローゼット、寝室を配しました。洗濯→物干し(寝室に専用スペース)→広いウォークインクローゼットと洗濯に関わる動線を最短にして、家事の負担を軽減。また洗濯機置き場と洗面脱衣室を分けることで、限られた面積でもゆとりのある洗面スペースを実現しています。

広いカウンターで使いやすい洗面脱衣室
広いカウンターで使いやすい洗面脱衣室

居心地の良い家をつくるためには、体感的な心地よさも重要です。山形の寒い冬も快適に過ごせるよう、家は全体的に高断熱仕様で、暖房はパネルヒーターによる全館暖房としました。

また、経年変化が楽しめる自然素材をなるべく多く用いることも意識しています。この家では、構造も含め合板は不使用。床は足触りのやわらかなスギ無垢フローリングで仕上げ、壁と天井は主に素材感が優しくて消臭・調湿効果も高いゼオライトの塗り壁で仕上げました。

床はスギ無垢フローリング、壁や天井は主にゼオライトの塗り壁で仕上げた。階段脇には、手すりを兼ねたパネルヒーターを採用
床はスギ無垢フローリング、壁や天井は主にゼオライトの塗り壁で仕上げた。階段脇には、手すりを兼ねたパネルヒーターを採用
木と塗り壁の素材感によって、やわらかで優しい雰囲気に包まれる玄関ホール
木と塗り壁の素材感によって、玄関ホールもやわらかで優しい雰囲気に包まれている
玄関の壁は、解体された古民家に使用されていた土壁を漆喰に混ぜて使用した
玄関の壁は、解体された古民家に使用されていた土壁を漆喰に混ぜて使用した
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断熱木製玄関ドアは、外壁と同じ材で仕上げたもの。人を迎える玄関まわりにも木の温もりが感じられる
窓は、断熱・気密性能に優れる樹脂サッシを採用。外壁は経年変化が楽しみなスギ板鎧張り仕上げ
窓は、断熱・気密性能に優れる樹脂サッシを採用。外壁は経年変化が楽しみなスギ板鎧張り仕上げ
建物は高さを抑え、周囲の景観に溶け込むボリュームを意識して設計。日が暮れると屋内の温かみのある光に照らし出される

暮らし始めて2年半。訪ねてきた友人やお客様は今でもよく「木の香りがする」といいます。自然の素材を生かした住まいは肌触りも空気の質も快適で、私たち家族にとってこの家は、どこよりも落ち着ける居心地がいい場所になっています。

■建築DATA
山形県山形市・大類さん宅 
家族構成/夫婦40代、子ども1人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/103.19㎡(約31坪)(カーポート含む)

設計/大類真光建築設計事務所 大類 真光 
施工/古民家ライフ(株)

撮影/長岡 信也


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