増え過ぎた太陽光。系統の負担を低減せよ
こうしたルールが定められる背景には、昨今のヨーロッパの事情があります。よく知られているように、ドイツやイタリアでは再生可能電力の優遇買取政策(FIT)により、爆発的に風力・バイオマス・太陽光発 電が普及しました。そのおかげで2014年前半ではドイツの電力の実に31%が再生可能エネルギー由来になるという大成果を上げますが、一方で電気代が10年間で2倍以上に跳ね上がるという「副作用」が出てきてしまいました(図8)。
この電気代暴騰の理由として、晴天時に太陽光からの売電がどっと流れ込む一方で夕方には今までどおりの買電が発生する現状では、系統上流側の発電所や配電設備に負担がかかりコンパクト化できない点が挙げられます。そこで最近の政策では太陽光の売電価格を大幅に引き下げるとともに、太陽光発電を一定割合自家消費した場合の優遇価格を設定しました。ようするに、「作った電気は自分で使いなさい」ということです。
次は蓄電池がホット?
こうした政策の変化を受けて、ドイツでは太陽光の新規設置が急減するとともに蓄電池を設置するのがちょっとしたブームです。発電を昼間は蓄電して自家消費優遇をゲットしておき、夜は放電して高い買電量を減らすのが経済的に合理的になったのです。
デカスロンでも蓄電池を上手に活用していた住宅が、電気バランスで高評価でした。図9のようにアメリカ・フランス(総合9位)は安価な鉛蓄電池ながら系統負荷低減を効果的に達成していましたし、ドイツ(総合7位)には非常にコンパクトな蓄電池が活用されていました。デカスロンという学生主体のイベントのルールにまで、最新の社会事情が反映されているのは興味深いことです。
ちなみにこうした政策転換の背景には、太陽光発電の世界市場の7割以上が中国メーカーに席巻されている現実もあります。太陽光パネル生産は典型的な装置産業であり、大型の生産設備を輸入してしまえば後は作るだけ。ドイツの国内メーカーも倒産してしまった今、日本メーカーの行く末も明るいとはとても言えません。
日本の現状の政策はドイツを見習ったものです。日本でも太陽光の買取価格はやがて下がり、自家消費の推奨も始まるでしょう。太陽光発電が大規模に導入された街区では、すでに系統昇圧・発電抑制の問題が起きています。蓄電池は震災後にわずかに注目を集めたきりですが、今後また脚光を浴びるのやもしれません。
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