太陽住宅の世界大会。ソーラーデカスロン
では、太陽光発電だけドンドン載せていけばよいのでしょうか。ここで世界の状況をみてみましょう。フランスはヴェルサイユ、かの大宮殿の隣で開催されたソーラーデカスロン2014を筆者が見学してきた結果をご紹介しましょう(図3)。
ソーラーデカスロンはアメリカでは2002年から、ヨーロッパでは2010年から始まった太陽エネルギー活用住宅の世界大会で、世界中からおよそ20もの大学が集まり、学生主体で基本コンセプトから要素技術の選択、実施設計から施工(たった10日間!)・見学者への説明・審査員へのプレゼンテーションまで、その全てをこなすハードなイベント。「陸上の王」といわれるデカスロン(十種競技)の名にふさわしく、表1に示す10の項目について計測と審査員評価を通して各大学が競うことになります。
太陽の恩恵を全ての人に
すでに対策は出尽くしたということなのか普通の戸建住宅の展示は少なく、代わりに「地震や津波など災害への対応」や「既築集合住宅の改修」、「低所得者層への対応」など、よりチャレンジングなテーマが割り当てられていました。
とりあえず、太陽光発電で電気を稼ぐのは基本です。設置可能な容量は全大学共通で決まっているので、パネル種類の選択や設置方法で工夫することになります。筆者が晴天日の開示データを見ている限り、図4のシンプルな片流れ屋根のデンマーク(総合8位)やドイツ(総合7位)が発電量最大でした。設置状況は似ている台湾(総合12位)の発電量が低迷したのは、パネルの実発電効率が低かったからかもしれません。
太陽光発電で一番頑張っていたのは、図5のインド(総合18位)でしょう。朝から夕にかけて太陽を追尾することで、1日の発電パターンが他とずいぶん違っています。えらく素朴でチープな家の上に大仕掛けの太陽光発電の組み合わせは、正直かなり笑えます……。
ドイツ(総合4位(図6))・イタリア(総合1位)は、日射制御と太陽光発電をセットにした提案をしていました。優勝したイタリア(図7)は発電量自体大したことないのですが、太陽光パネルを季節や時間帯により移動させることで、屋外テラスの空間にも役立たせるという建築的提案が評価されたのでしょう。
発電は当たり前。勝負は発電量にあらず
興味深いことに今回の評価項目では、太陽光の発電量そのものは採点されていません。表1のように、「4 電気バランス(計120点)」中の小項目「4.2 電力プラス(15点)」で間接的に評価されているだけです。実は、「4.3 発電と消費の相関(25点)」「4.4 需要ピーク時間帯(17〜21時)の買電抑制(25点)」「4.5 買電ピークの抑制(15点)」といった系統関係項目の方が重視されているのです。
この後半の3つは、単純に言えば「系統に迷惑をかけるな」「系統をあてにして好き勝手に売電・買電するな」という規定です。昼間には冷房を我慢してでも太陽光の発電分をありったけ売りまくり夜は買い戻すという日本で当たり前のやり方は、ここでは「身勝手な自己中」として減点の対象なのです。
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