「カフェを開きたい」という要望を
女性視点の細やかな設計で実現
盛岡市の南部に位置する紫波町。すぐそばを雄大な北上川が流れ、東根山を一望できる地にIさん宅は建っています。「初めてこの地を訪れたとき、360度開けた自然豊かな風景が気に入り、移住を決めました」とご夫妻は語ります。
しかし、中古住宅を購入して新生活をスタートさせたはいいものの、冬は家の中まで極寒だったそうです。寒さに耐えきれず新築を決意したIさんご夫妻。Iさんは一級建築士の資格をお持ちですが、「ブランクがあるのと、雪国の家の仕様に詳しくないので」と、自分で設計することは断念。この地の気候を知り尽くした地元の大森典子建築設計事務所に依頼することにしました。「自分と同じ女性の建築家さんに活躍してほしいという想いもありましたね」とIさんはいいます。
新しい家ではパンをつくって販売し、週末にはカフェを開きたいと考えていたIさん。設計はその希望に沿って進められました。「大森さんからのプランは女性目線が活かされていて、一目で気に入りました。特に、普段は家族用のダイニングとして使い、営業時だけカフェとして開放するという共用の形が取られたカフェスペースは、限られた空間を有効活用できる素晴らしいアイデアだと思いました」。
四季を通して心地よい空間で
自然に寄り添う暮らしを謳歌
無農薬野菜を栽培するご主人と、天然酵母のパンを手がけるIさん。自然志向のお二人に合わせて、室内には岩手県産カラマツの無垢床やウッドチップの壁紙などの自然素材がふんだんに取り入れられています。家の中から豊かな自然が望めるよう、窓の大きさや位置も吟味されており、居心地の良さは満点です。
また、紫波型環境循環住宅を掲げる紫波町のエコタウン「オガールタウン」をきかっけに、地元工務店のタックホームとタッグを組み、環境に優しい高性能でエコな住宅を手がけてきた建築家・大森さん。Iさん宅でも、壁200㎜、天井300㎜という極厚の断熱材を使用し、冬が暖かいのはもちろん、夏も涼しい躯体を実現しました。暖房にはご夫妻の要望で導入した薪ストーブに加え、高断熱・高気密住宅と相性の良い床下エアコンを採用。「家全体が常に一定の暖かさなので、冬も活動的に過ごせるようになりました」とご夫妻ともに大満足のご様子です。
「大森さんとはセンスが似ていて、楽しく家づくりができました。女性同士ということもあり、細かい要望もお伝えしやすかったですね」と振り返るIさん。「早くカフェをオープンさせて、地域の方においしい野菜やパンを味わっていただきたいです」と目を輝かせていました。
8年前に新規就農でこの地にやって来ました。私自身、建築士の資格を持っていることもあり、普通の施主より要望が細かくて大変だったと思いますが、大森さんもタックホームさんも快く対応してくださって感謝しています。建築中は毎日現場を訪れて見学していたので、家に対する愛着がさらに湧きました。新居は本当に快適。畑仕事をして帰ってくる主人も「体が休まる」と喜んでいますし、娘たちも猫たちものびのびと過ごしています。(Iさん談)