「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2021」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、秋田県秋田市を拠点に注文住宅を手がける一級建築士事務所リリーアーキテクツの高橋 理徳子さんです。
働き住まう器の多様性
「都市とは、その通りを歩いているひとりの少年が、いつの日にかなりたいと思うものを感じ取れる場所でなくてはならない」。これは有名な建築家ルイス・カーンの言葉ですが、大人たちが自信を持って働き住まうことのできる器の可能性の広がりを示すこと。建築・住宅の設計の醍醐味はそこにあると考えています。
建築はスケールが大切です。人のスケールに近い空間は個人の個性を豊かに表現し、お散歩するのが楽しい街並みは日々の生活を気持ちの良いものに導いてくれます。地域に潜在する素材や、ものづくりに携わる人々とのコラボレーションを意識して地元を大事にしていきたい。循環型社会に対応する木を使った空間づくりを特に意識しています。
外とつながる大屋根の家
Yさんの家は30年ほど前に大規模に造成された郊外の住宅街にあります。敷地は角地ですが南側に隣家があるため、道路に面した北西側に大胆な開口部を取る方向でスタディが始まりました。
Yさんは4人家族の子育て世代。夫婦での家事のシェアはもちろん、子どもたちもお手伝いが楽しくできるよう、キッチンはアイランド型で周りに余裕を持たせ、バックヤードに入りがちなランドリールームもリビング・ダイニングの延長上に配置しました。
西側の開口部が大きい設計ですが、ブラインドやカーテンがなくても快適に暮らせるよう、大屋根の軒先を低く落とし込んで西陽と周辺の住宅からの視線を遮り、囲いながら開くという相反する要素の共存を目指しました。
リビング・ダイニングとつながる土間デッキは、天気の良い日には日曜大工やお絵かき、水遊びなど多目的に使える場に。軒下は柿や大根、魚を干すなど、昔からの食文化を生活に取り込む場としても重宝します。低い軒先には土間からの光がふんわりと反射して優しく穏やかな光が溜まり、この家に詩的な表情を印象深く与えてくれています。
■建築DATA
秋田県秋田市・Yさん宅
家族構成/夫婦30代、子ども2人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/106.26㎡(約32坪)設計/一級建築士事務所リリーアーキテクツ(株) 高橋 理徳子
施工/(株)すずきハウスプラン
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