当別町で活動するクリエイターの創造拠点「CREATORS in the STREET」

札幌市近郊にありながら花や田園が実り咲き、雄大な自然を感じる北海道当別町。この街では今「CREATORS in the STREET(クリエイターズインザストリート)」と呼ばれる、新たな取り組みがスタートしています。

「CREATORS in the STREET」は、国内外からアーティストを招いて滞在中の活動を支援する「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」事業の一環としてスタートしました。国内では1990年代より関心が高まってきたAIRは、地方自治体の主催で「アーティスト支援」や「地域創生」を目的に、街の新たな価値を再発見する機会になることが期待されています。

旧・カネヨよねぐち呉服店
旧・カネヨよねぐち呉服店

当別町「CREATORS in the STREET」の拠点となる旧・カネヨよねぐち呉服店には、さまざまな分野で活躍するクリエイターたちが集まってきています。プロジェクト内ではクリエイターは、地域の人々に身近な存在と感じてもらえるよう「sakkaさん」と呼ばれています。


当別町で活躍する4人のsakkaさん

■小島 柚穂さん 染色作家もう一つの作業場で染色制作中の小島さん天然素材や伝統的な染色技法を用いて、テキスタイルや作品を生み出す染色作家の小島さん。金沢市工芸展をはじめ多くの入選歴を持つ若手実力派です。当別町で育てられた染色の素材である紫根や、花や実・葉などを地元の農家さんから譲り受けて制作に活かしています。「染色などの工芸はその土地に根付いているものです。制作の場が変わると扱う素材も自ずと変わり、作品に生まれる変化がとても楽しみです」。

小島さんの染色作品。モノトーンのストールは松を燃やした煤を溶いて染める「松煙染め」という染色方法で制作されたもの
小島さんの染色作品。モノトーンのストールは松を燃やした煤を溶いて染める「松煙染め」という染色方法で制作されたもの

■浜地 彩さん 絵画/イラスト作家

イラストレーターとしての作品制作ではペンタブを使うことが多いという浜地さん

同事業をきっかけに当別町へ住まいを移した浜地さん。似顔絵やキャラクター考案など街に根付いたアート活動を行っています。さまざまなコンテスト等で受賞を重ねながら、ファンタジーなイラストを中心に多彩な表現方法で多くの作品を制作。街の雛祭りイベントでは、自然素材をモチーフにした巨大なインスタレーションの制作に尽力するなど、素材そのものの新たな価値創造に意欲的です。

油絵やアクリルなど多彩な画風の浜地さん。アトリエの壁面では、その幅広い画風の一端を楽しむことができる
油絵やアクリル画など多彩な画風の浜地さん。アトリエの壁面では、その幅広い画風の一端を楽しむことができる

■梅田 真紀さん ワークショップデザイナー/グラフィックデザイナー

アートの魅力を語る梅田さん地元長野県と道内各地でワークショップをデザインし、アートでコミュニケーションをとる場をつくり続けてきた梅田さん。子育ての経験を活かし、いろいろな素材に触れることができる『こども美術室』を開催しています。この日は「雪の公園を描こう」をテーマに、ふかふかでキラキラの雪を塩で表現し、そこに亜麻の茎を添える当別町ならではの作品が完成。「アートは、まだ言葉では表現できない子どもたちの『気持ち』や『感性』を伝えてくれる」と梅田さんは語ります。

ただ教えるのではなく、アートを通じて子どもたちと会話をしたい。上手に描けたところを丁寧に教えてくれる子供の姿に成長が感じられます
「ただ教えるのではなく、アートを通じて子どもたちと会話をしたい。上手に描けたところを丁寧に教えてくれる子どもの姿に成長が感じられます」

■NATSUMI さん イラスト作家

イギリスの美術大学でアートを学んだNATSUMI さん。コロナ禍により渡米を断念した際に当別町の事業を知り、アーティストとして新たな一歩を踏み出しました。NATSUMI さんは鉛筆とペンを使ったアートを得意とし、日記を書くように心で感じ取ったことを絵で表しています。現在は商店街に飾るアートと、自身の活動の中でもっとも大きなキャンバスとなるウォールアートの制作に力を注いでいます。

エコシステムをテーマに、人が自然でいること、自然の 一部であることを感じてほしいと描いた作品
エコシステムをテーマに、人が自然でいること、自然の 一部であることを感じてほしいと描いた作品

街と人と ーアートが拡がる当別の街ー

旧・カネヨよねぐち呉服店のカウンターでドライフラワーの展示販売をしているハナツムギさん。ご近所さんから譲り受けた花で作品づくりをしたり、町内の企業や店舗とのコラボレーションも積極的に行っています。今後はワークショップや花材の販売も行う予定です。
ドライフラワー1
ドライフラワー2
太美のお菓子屋dililiにてドライフラワーをコーディネート。作品の委託販売も行っている
太美のお菓子屋dililiにてドライフラワーをコーディネート。作品の委託販売も行っている
当別町産・農薬不使用の亜麻を原料に商品をつくる、亜麻公社の協力により亜麻の茎を使った作品づくりも計画中
当別町産・農薬不使用の亜麻を原料に商品をつくる亜麻公社と協力し、亜麻の茎を使用した作品を計画中

 

第8回 春待つ 「北の雛飾り×アート」開催

商店街に飾られる色とりどりの「吊るし雛」をひと目見ようと、毎年多くの方が町内外から訪れる「北の雛飾り×アート」。手づくりのかわいらしい吊るし雛に加え、今年度は当別町内外のアーティストが多数参加し、展示会場が多くのアートで彩られました。(※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンライン開催となりました。)

色とりどりの可愛らしい「吊るし雛」。一つひとつの作品に個性が出る
色とりどりのかわいらしい「吊るし雛」。一つひとつの作品に個性が出る
当別内外のアーティストが多数参加。展示作品はオンラインで見ることができる
当別町外のアーティスト作品を展示している郵便局会場
北の雛飾り×アート作品
レンガ倉庫では旧・カネヨよねぐち商店で活動しているsakkaさんの作品を展示

「好き」を仕事にして、人と街をつなぐクリエイターたち

アートという側面から、新たな街の魅力や面白さを見せ始めた当別町。この地で活躍するクリエイターたちは、自分のイメージをそれぞれの作品を通じて発信し、人や街をつないでいきます。クリエイターの「好き」から生まれるさまざまな作品が街を彩る、彼らの活躍と今後の街づくりに期待です。

 

(文/Replan編集部)