蔵王に程近く、最近は県外からの若い世代の移住者も増えてるという宮城県川崎町。別荘地が点在するエリアを貫く国道457号線からほんの少し奥まった木立の中に静かに佇む小屋のようなカフェが、自家焙煎したスペシャルティコーヒーの専門店 BLUE COFFEEです。「近所の人たちが気軽に集って過ごせる場所を」と、この近くで20年以上暮らしてきた佐々木克也さんが2014年にオープンしました。
お店をつくるにあたって佐々木さんが初めにイメージしたのは「倉庫風」の空間でしたが、設計を依頼した仙台市の建築家、三浦正博さん(設計島建築事務所)と話をするうちに見えてきたのは片流れ屋根で木外壁の「小屋」のような空間。「もともと古い納屋があって、それをリノベした、というイメージかな」と三浦さんは話します。国定公園内でもある敷地内の木をなるべく切らないで済むように建物や駐車場を配置して、木立の一部のようなこの憩いの場所が形づくられていきました。
カウンター席を含め全16席の店内は、天井が高くて開放的で、しんとした穏やかな空気感に満ちています。「全体的に木を活かして自然の素材を使った建物にしたいと思っていて。インテリアはなるべく色を使わずトーンが合うように選び、家具や照明は、シンプルで機能的で長く使えるものを吟味しました」。そう話す佐々木さんの見立てでコーディネートされた店内は、室内の木の飴色が深まり、床や家具が使い込まれて空間になじんだ以外は、オープンから6年を経た今も開店当初とほとんど変わっていないといいます。
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佐々木さんいわく、コーヒーの美味しさを決めるのは「豆の品質と鮮度」。そのためBLUE COFFEEでは、品質を見極めて仕入れた豆を自家焙煎し、焙煎して1週間以内のものだけを提供しています。ハンドドリップで1杯ずつ丁寧にいれるコーヒーの美味しさはもとより、そのコーヒーに合うように厳選した素材で佐々木さんが手づくりしたスイーツも評判を呼び、今では一年を通して県内外からお客さんが訪れます。
店内で長い時間を過ごすお客さんも多いというBLUE COFFEE。美味しいコーヒーとスイーツ、そしていつ訪れても変わらない安心感と、家にいるようにリラックスしてくつろげる心地よさが、若者からシニアまで世代を問わず人々を惹きつけています。
Idea.1 風景を切り取る窓の配置
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採光、景色の見え方、視線コントロール、断熱性能、建物のデザイン性など、「窓」は空間の心地よさを決めるとても大切な要素。BLUE COFFEEでは客席側に、幹線道路の近くながら周囲を木に囲まれているというロケーションを効果的に活かす位置とサイズに配慮して窓を設けました。吹き抜けに伸びるスリット状の縦長窓は、すぐ外の大きな山桜を鑑賞するためのもの。春には満開の桜を愛でることができます。
Idea.2 居心地の良さを演出するこだわりの照明
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店内に散りばめられた照明器具はすべて、佐々木さんが好みのものをセレクト。その多くは、兵庫県にある照明の専門店flameで購入したそうです。ホーローや布、ガラスなど、シェードやパーツの素材はさまざまながら、色味やかたちにはどことなく共通項が。遊び心を感じさせつつも統一感のあるセレクトは、家づくりでも参考になりそうです。
Idea.3 DIYで手仕事の温かみや個性をプラス
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レジ脇のコーヒーのメニュー表や、漆喰の壁、シンクまわりの壁のタイルなどは、佐々木さんが自らDIYしたそう。説明されなければ分からないほどの精度の高さです。また食器を並べている棚や客席のテーブルは、大工さんにオーダーしてつくってもらった棚板や天板と、大阪の家具専門店SQUARE Furnitureから取り寄せたアイアンのパーツやテーブル脚とを自分の手で組み上げたもの。手仕事の温かみやほのかに滲む個性が、空間に彩りを添えています。
おすすめMENU |
BLUE PLUS(オリジナルブレンド)深煎り
ブラジル・インドネシア・インドの豆を独自にブレンドしたコーヒー。深煎りでほろ苦さの中にコクが感じられます。
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プリン
牛乳・砂糖・卵を蒸して作った自家製プリン。材料がシンプルな分、素材にこだわっているそうで、やわらかな食感と甘味がやみつきに。
BLUE COFFEE所在地:宮城県柴田郡川崎町大字前川字手代塚山1-363
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