大工をしていたひいおじいさんが昭和9年に建てたという農家住宅で生まれ育ったNさん。結婚後は家を出て社宅で暮らしていましたが、ご両親がお母さんのご実家へ移ることになったため、奥さんと2人のお子さんを連れてこの家に戻ることを決意しました。「隣の別棟に住む祖父母のことも心配でしたし、親戚みんなが集える場所を残しておきたいという思いもありました」とNさん。
旧居は、冬は室内でもペットボトルが凍るぐらい寒かったことや、水まわりの劣化なども激しかったことから、リノベーションをして住むことを選択。古民家改修の経験が豊富な増子建築工業に依頼をしました。長い歴史の中で何度か修繕をしていて、築年数の割に状態は良かったことから、基礎や外壁、屋根は極力残す方向で改修はスタート。外せない梁や柱も明確だったため、レイアウトも基本的にはもとの家を踏襲したものとなりました。
リノベーションを終えたNさん宅は、フローリングやクロスがすべて張り替えられ、清潔感あふれる落ち着いた住まいに大変身。この空間を、あえて現しにした古い柱や梁、鴨居が支えています。中でも目を惹くのが、和室の天井を飾る立派な数本の太鼓梁。囲炉裏の火に長年燻されたためか、味わい深い飴色に変色していたので、むき出しのまま見せ梁として利用することにしました。「自分を含め、この家で生まれ育った人たちの思い出が残る家なので、できる限りもとの家のものを活かしたい」と考えていたNさんも、これには大喜びだったそうです。
また、玄関脇に設けられたNさんのための「アトリエ」もポイント。OSB合板仕上げのおしゃれなスペースに造作の作業台が設置され、趣味のレザークラフトの制作がはかどる空間です。「作業部屋は絶対にほしかったので嬉しいですね」と、大満足なご様子です。
一つひとつの部屋が大きいもとの家の間取りが引き継がれ、とても開放的なNさん宅。ご夫妻ともに「自由に子どもたちが走り回っている姿を見るのが幸せ」と口をそろえます。「社宅時代は周囲に気兼ねして暮らしていましたが、この家に来て気持ちが楽になりました」と奥さんが言えば、「ステイホームが続いた時期も、ストレスなく過ごせたのはこの家のおかげです」とNさんも応じます。
外壁や天井、床にはしっかりと断熱材を施工。冬の寒さに苦しむこともなくなり、築86年の古民家で大らかで心地よい暮らしを楽しんでいるNさんご一家です。
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