「薪ストーブはご主人が趣味で取り入れるもの」。一昔前まではそんなふうに捉えられがちだった薪ストーブですが、今はその傾向も変化していて、奥さんのほうがお友だちの家やカフェなどで薪ストーブを知り、導入に積極的なケースが増えています。そこで今回は、奥さんの強い希望で薪ストーブのある暮らしを叶えたお住まいをご紹介しましょう。
もともと自然な素材感や風合いを好むAさんは、家づくりで叶えたいことがいくつかありました。それはパンをふっくら焼くためのガスオーブン、葡萄棚がトンネルのように沿う庭、そして薪ストーブのある暮らしです。
しかし、建築予定地は勾配のある変形地。建築に費用がかさむうえに薪ストーブを導入するとなると予算的に厳しく、またご主人が「ほかの扱いやすい暖房設備のほうがいいのでは?」という意見だったことで迷いがありました。それでも「叔父から受け継いだ大切な土地で、理想の暮らしをしたい」という強い思いが背中を押し、薪ストーブの導入を決めました。
家づくりを依頼したのは、薪ストーブのある家を数多く手がける恵庭市の北清建設です。北海道の地域工務店の会「アース21」の『北海道の家づくりの現場から』の表紙を飾った道南スギの外壁が美しい家に「すっかり心を奪われてしまった」というAさんはすぐに連絡を取り、完成見学会にも足を運んで、同社の家づくりへの理解を深めていったといいます。
薪ストーブへの憧れが強かったAさんですが、自身やご主人が簡単に扱えるものなのか、不安や戸惑いもありました。それを解消してくれたのは、担当の木島さんや北清建設の薪ストーブオーナーたちで運営する「薪割りの会」のメンバーです。木島さんは、扱い方のポイントや注意点、メンテナンスなどについて丁寧にレクチャー。薪ストーブ生活の先輩である「薪割りの会」のメンバーは実体験に基づくアドバイスをくれて、安心して薪ストーブ生活をスタートできました。
薪ストーブが発する熱でやわらかく暖まった家で過ごす時間は至福のとき。薪ストーブ1台で家全体を暖められるように工夫されたダクトからは、トイレ・和室・バックヤードへと暖かい空気が送り込まれ、家の中はどこも快適です。「夜に薪をくべておくと翌朝まで火種が残っていて、どんなに外が寒い日でも家の中は15℃までしか下がらない」とAさんはその暖房能力と住宅性能の高さを実感しています。
薪割りも生活に欠かせない仕事のひとつになりましたが、手動薪割り機を導入したところ、中学生の息子さんが薪割りを積極的に手伝ってくれるようになったそう。また、薪ストーブの導入に消極的だったご主人も一緒に薪棚を造作してくれるなど、今では家族みんなで薪ストーブライフを楽しんでいます。
薪ストーブ生活を始めて2シーズン目のこの冬は、効率良く薪を燃やすための工夫をあれこれ試して、自分なりに日々の暮らしのなかで薪ストーブと向き合ってきたAさん。来シーズンは薪ストーブ料理に挑戦したいと話します。憧れだった薪ストーブを少しずつ使いこなし、暮らしの楽しみが広がっています。
設計・施工:(有)北清建設
恵庭市黄金南3丁目1-17
https://www.hokusei-kensetsu.com