マニフィコ建築スタジオ / 伊達市・橋本さんご夫妻、子ども2人
8割は施主がやりたいこと、残りの2割にプロのアドバイスを。マニフィコ建築スタジオの家づくりに決まりはありません。ナチュラルも、無機質も、古民家再生も。手がける住宅のテイストをひとくくりにできないのは、「施主のつくりたい家をつくってあげたい」という信念を貫いているからです。
そんなコンセプトで家づくりを手がける同社の代表・橋本 剛さんが自邸として選んだのは、築120年の古民家再生です。2年前、設計を担った福島市の古民家再生が「第35回福島県建築文化賞特別部門賞」を受賞。蕎麦店としてよみがえった築130年の古民家は風土に調和し、地域の空き家利活用の可能性を広げると評価されました。
第2子が誕生し、広い家で子育てをしたいと考えていた橋本さんご夫妻。この古家付き土地が売りに出されていることを知り、見学に訪れました。「大きな銅板屋根の外観を一目で気に入りました。古民家は、使いこなせれば地域の財産になります。これほどの古民家を取り壊してしまうのはもったいないと思いました」と橋本さんは当時の思いを語ります。
600坪の敷地に建つ、かつて養蚕農家だった古民家は増築や改修を施しながら大切に暮らしてきたことが伝わってくる良い状態でした。「築130年の古民家再生を見ていたので、古くてもきれいになることは分かっていました。これまで賃貸のアパートや一戸建てに住んできましたが音を気にしたり、視線を気にしたり、人との距離感をストレスに感じていました。ここは隣家との距離が適度にあり、でも付き合いもある。自分たちの空間にも暮らしにもゆとりが持てると思いました」と奥さんは振り返ります。
リノベーションにあたって心がけたのは、古民家の風合いを残すこと。銅板屋根、構造体、外壁はそのまま利用することを決定し、改修工事をスタート。床下の基礎断熱にスタイロフォームを施し、リビングとキッチンダイニングに床暖房を設置しました。窓は既存の窓を残し、外側に新しい窓を取り付けて二重窓に改修しています。
「収納を造り付けることができないので1室を収納部屋にしましたが、暮らしてみるとやっぱり部屋ごとに収納があった方が便利だなと気づきました。そういったことも今後手を加えながら改善していきたいですね」。古民家のリノベーションは、一部現在進行形のところも。ゆくゆくは3階に子ども室を設けるなど、住みながら直していく予定だといいます。
「新築は家族のライフスタイルに家を合わせる。古民家の場合は、住みやすく手は入れるけれど、私たちがこの家の暮らしに合わせていく感じです。不便もありますが、それも含めてどう直すか、どう暮らしていくかを楽しんでいきたいです」。