武部建設(株)/岩見沢市・Tさん宅 夫婦60代、息子30代


この地で代々農家を営んできたTさん一家。築60年以上経った古い家を、次世代へ受け継ぐ二世帯住宅へと建て替えました。「以前から老朽化が激しく建て替えを考えていたんですが、元々ここは道からの借地。自分たちで買い取るための許可申請や手続きに10年ほどかかりました。その間にどんな家を建てようかと夢を膨らませていたんです」とTさん。

1階部分はカラマツの板張り、2階部分は漆喰塗りの外観が田園地帯にしっくり馴染む

土地に根ざした家業ゆえに、やはり地元の無垢材を使った家にしたいと考え、武部建設の見学会へ。道産材を使った家づくりはもちろん、農家の家も数多く手がけている実績があり、間取りや使い勝手も熟知している同社。地元の工務店としての評判も耳にしていたことから、早い段階からぜひ武部さんにと切望していました。

玄関にはルーバーと雨よけの庇。手前が客用玄関、奥には作業中に出入りしやすい勝手口も
断熱は200ミリ。南側に大きく取られた窓も気密性の高い木製サッシを採用している

念願叶って無事土地も取得。親子3人が上下で生活空間を分ける分離型の二世帯住宅を建てることとなりました。夏は朝早くから畑に出て、昼は食事をしに戻り、また日暮れまで働く忙しい生活。繁忙期は一家総出で農作業です。対して冬は書類仕事や所属する団体の会議などで忙しい中にも、余暇を楽しむ時間が少しは取れる季節。効率的に仕事や生活ができ、かつ趣味も楽しめる家として、親世帯、子世帯それぞれが理想の空間を武部建設とともにつくりあげました。

薪ストーブ周りの壁は江別レンガ、敷石には札幌軟石、腰壁にはタモの羽目板を採用

前の家でも暖房の主力は薪ストーブ。輻射熱の暖かさと便利さを知るだけに、もちろん今回も薪ストーブを設置。高断熱・高気密のおかげで冬の暖かさに加えて、夏の涼しさにも驚いています。

1mほど土台をかさ上げしたことで、見える風景が一変。リビングからの開けた景色に「うちってこんなに遠くまで見通せる土地だったんですね」と嫁いで40年近い奥さんも初めて気づいたとか。

水まわりは目隠ししながらも収納兼作業台が対面式になったキッチンは明るく機能的
リビングから続く和室は障子を開ければ大空間に。ナラの無垢フローリングとも調和

客用玄関のほかに、長靴や作業着のまま出入りができる勝手口と広い土間を設けるのは、農家の家の定番。ふたつの玄関から水まわり、LDKまでがぐるりと回遊式で職住一体の生活スタイルに効率的です。

客用玄関と勝手口の両サイドから使えるシューズクロークは上着や仕事道具も収納できる大型
勝手口の土間を広く取り、右手には土足で出入りできる大型の食品庫も設けた

映画好きな息子さんが最もこだわったのはシアタールーム。音響メーカーの専門家も交えて音から設計。完全防音、100インチスクリーンとドルビーアトモス7.1.4chシステムを導入しました。

100インチのスクリーンと映画館並みの7.1.4ch音響機器が揃う2階のシアタールーム
二世帯共用の玄関も広く取り、息子さんがそのまま2階のスペースにあがれる階段も
2階の息子さん居住部分には、趣味の写真や仕事ができる書斎スペースを造作
2階のリビングは天井を高く取り開放的。壁面収納は可動式で息子さんの手づくりだ
1階の薪ストーブの煙突を2階にもまっすぐ通し、冬はここからの熱でかなり暖かい
上下に窓を設けて明るい造作洗面台は壁面やシンク下を活用した収納もたっぷり

「何かを相談して『できない』と言われたことがないんですよ。家づくりに関する引き出しの多さに脱帽です」と息子さん。ご主人は薪ストーブの前で火を眺めながら過ごすのがお気に入り。代々住み継いだ土地で、これからも家業を受け継ぎながら楽しい暮らしが続いていきそうです。

取材風景