関西から毎年、丘の景色や大自然をシャッターに収めるのを楽しみに通い続けてきたSさん。長くこの場所で営業していた「美瑛の丘のペンションほおずき」とは30年来の常連客という間柄でした。閉宿が決まったとき、失うものの大きさを実感。ずっと抱き続けていた、いつか北国へ移住したいという思いがついに現実のものとなりました。オーナーから、一棟のコテージと土地の一部を受け継ぐことになり、宿を経営するため、自分の住まいづくりに取り掛かりました。
移住を決意する前から、「住むならどんな場所がいいだろう、理想の家は…」と、北国に住む憧れはありました。住宅関連雑誌を眺めるたびに、目を惹くのは芦野組の家。すぐに連絡をし、遠距離での住まいづくりが始まりました。「施工事例は雑誌やWEBで確認できたし、何よりその土地での暮らしを知っている地元の会社であるという信頼感があって、安心して任せることができました」とSさんは振り返ります。
2019年4月、春の大雪に戸惑いながらも引っ越し。完成したわが家は、コンパクトな三角屋根の家。道産材を使い、丘と山々を一望できる大開口の窓、広めの土間に憧れの薪ストーブ、4.6mの吹き抜けとその高さに映える小鳥のモビールなど、リクエストがギュっと収まった理想的なものでした。
雪が融けると、道沿いの桜が移住を歓迎してくれるように満開に。同年7月には、一棟貸しのコテージ「ことりとこりす」をオープン。自身と同じように美瑛の風景を愛する旅人の受け入れも始めました。丘の景色に魅せられて来訪するお客様とは、自然と意気投合。すでに次の季節の予約もいただく順調なスタートとなりました。何よりも、この土地で生きていく励みになったのは、両親や元同僚が訪れ、Sさんがどれほどこの土地を愛しているかに共感してくれたことだそうです。
いよいよ、本格的な冬の到来です。初めての冬を迎えますが、薪ストーブでじっくり温める料理や、庭をスノーシューで散策するなど、冬の楽しみ方は尽きません。深い雪に包まれる丘の景色、真っ白な旭岳、朝陽に輝くダイヤモンドダスト、めぐる季節の風物詩一つひとつが、憧れの土地での生活を彩ります。