築35年の住まいを一部リノベーションした店舗併用型のMさんのカフェは、豊かな緑に囲まれた札幌市南区藤野の住宅街の一角に建っています。札幌軟石のアプローチを進むと迎えてくれる珈琲と木の香り。Atelier CoCoと高杉工務店のコラボにより実現したこのカフェは、2019年5月に1周年を迎えました。塩麹、醤油麹、生甘酒などの発酵食品を使った家庭料理と、ほっと一息つけるやさしい時間を求めて、毎日さまざまなお客さんがやってきます。
Mさんの前職は小学校の養護教員。いわゆる保健室の先生として30年以上子どもたちと接する中で、「子どもも、親も、先生もみんながくつろげるような居場所をつくりたい」という気持ちが育ち、カフェのオープンを決意したといいます。
ここは決して利便性の高い場所ではないため、当初は公共交通機関の近くに店を開くことも考えていたというMさん。しかし、自身の年齢や「生涯働き続けたい」という希望を叶えるためには、通勤のない店舗併用住宅が最適だと判断し、自宅1階の一部をカフェとしてリノベーションすることにしました。
住まいと店舗は入口を分け、これまで和室として使用していた場所にキッチンカウンターを配置。台所があったという北側には、新たに大きな窓を設け、緑を眺めながらくつろげるカウンター席をつくりました。
住宅部分・店舗部分ともに断熱改修をしたことで、建物の老朽化に伴い年々厳しく感じていたという冬の寒さも解決。店内はお客さんはもちろん、Mさん自身もほっとくつろげる、こころの拠り所になるようなやさしい空間になっています。
Idea.1 空間のこだわり 〜素材や周辺環境の魅力を生かす
無垢材を使用したフローリング、南区で採掘される札幌軟石を採用した玄関アプローチや内装など、素材それぞれが持つやわらかな質感や色合いが、店内にアクセントと優しい表情を与えています。
お客さんにもっとも人気のスペースは、新たに設けた北側の窓に面するカウンター席。目の前には豊かな緑が広がり、タイミングが良ければ自由に飛び交う野鳥の姿を見ることもできます。Mさんがもっとも大切にしたかったという「こころもからだも癒される空間」は、素材や周辺環境を最大限に引き出した空間設計により実現しました。
Idea.2 インテリア 〜ものづくりを楽しむ心が空間を彩る
家具や雑貨はほとんどが手づくり。壁に札幌軟石を張って仕上げた造り付けの食器棚や、テーマカラーのグリーンを基調としたモザイクタイルをあしらったキッチンカウンター、団体客を想定した広いテーブルなど、職人のきめ細やかな手仕事が感じられる造作家具が並んでいます。
階段下の造作棚では、Mさんや友人がつくった小物を展示販売。お客さんに提供する箸置きやランチョンマットはMさんの妹さんによる手づくりだったりと、ものづくりを楽しむ心が随所に散りばめられた店内は、いつも和やかな雰囲気に包まれています。
Idea.3 職住一体のこだわり 〜店舗と住まいのつながり
カフェと住まいは1階の扉を介してつながります。店舗スペースも住まいの一部分のようなもので、Mさんは19時の営業を終えると、北側のカウンター席で一人珈琲を飲んだり料理の仕込みをしたりと、自由に過ごします。カフェ営業はMさんにとってのセカンドステージ。あえて職と住の境界をあいまいにし、長い教員生活では味わうことがなかった、「24時間常に仕事モードでありながら、くつろげる」という不思議な感覚を日々楽しんでいます。
おすすめMENU |
プレート
塩麹、醤油麹、甘酒などの発酵食を中心に、旬の道産食材をふんだんに取り入れたからだに優しい人気プレート。
Mさんのカフェは隠れ家的なお店。興味のある方は、高杉工務店さんに問い合わせをしてみては?
(有)高杉工務店
北広島市大曲光1丁目6-5
Tel. 011-377-6561
http://takasugi-k.com