「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2019」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、秋田県大仙市で注文住宅を手がける有限会社もるくす建築社の佐藤欣裕さんです。
秋田県秋田市・Sさん宅/夫婦40代、子ども2人
設計/(有)もるくす建築社 佐藤 欣裕
施工/(有)もるくす建築社
ゆらぎのある普遍的な住まいを
住まいにおける豊かさとは、自然を享受しながら心地よい空間で時を過ごすところにあります。厳しい風雪に耐える屈強なハードは安心感のある室内環境を提供し、外へ意識を向けさせてくれます。また長く建築を使うためには、理にかなった細部と小手先でないマッシブな計画が重要です。現代の要求を組み入れながら、世代を超えて使い続けられる建築にするためには何が必要かを、常に模索しています。
開放と連続性で建築を構成する
商人町として面影を残している通り沿いに建つ小住宅です。建物は道路から車3台分を後退させ、前面から続く植栽を玄関や中庭に練り込ませるように配置。吹き抜けた中庭を中心にプランが展開し、玄関から台所に至るまで外部と連続的に繋がっています。植栽を建物のギリギリまで近い位置に植えることで、樹木の気化熱による涼房を狙っています。
敷地に沿った細長い形状のほぼ中央に階段を配置し、その直上に設けた越屋根で高さを出して、夏の排熱を効果的にしています。気密が取れているので高低差の分だけ重力差換気が有効となり、夜間蓄冷も期待できます。
温熱計画を綿密に行いながら、無駄なボリュームを省いてギリギリまで開口部を大きく設けたことで、明るさと落ち着きを同時に獲得できました。切妻屋根の開きを抑えるために設けた、水平方向の構造材を避けるようにR天井にすることで、空間がやわらかい印象に。
クライアントは、京町屋のような通り土間と開放的な空間を希望されていました。狭さの解消に加え、明るさの確保も必要です。南面の建物が抜けている部分に中庭を計画するところからプランが展開しました。西側のリビングもバルコニーを併設させて、厳しい西陽を和らげて室内にとり入れています。
簡素なスギ板のファサードは将来のメンテナンスを最小限にし、ディテールは長期的に風雨から守るために防水を優先的に考えました。長く住むことを第一に考えた計画は質実な印象となり、自然を取り入れた「いい頃加減」な建築は、誠実なクライアントの雰囲気にも合っていると思います。
■建築DATA
構造規模/木造・2階建て
延床面積/106.24 ㎡(約32坪)
有限会社もるくす建築社
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