「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2019」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、福島県郡山市で注文住宅を手がける株式会社gif(ギフ)の髙橋岳志さんです。
福島県郡山市・Hさん宅/夫婦40代、子ども2人
設計/(株)gif 髙橋 岳志
施工/信和建設(株)
gifという原風景
2018年、社名を「髙橋岳志建築設計事務所」から「gif(ギフ)」に変更した。福島に暮らし25年、言葉のイントネーションも福島寄りになっていることに気づかないくらい福島に染まっている。ただ、長く福島に暮らすことで建築をつくる基になる原風景は「岐阜」にあることに気づいてきた。住宅をつくる際、土地の周辺環境、生活スタイルや考え方、要望、そして、施主の「原風景」を汲み取り、「gif」という原風景を持つ私たちが紡ぎ出すことで魅力ある住宅をつくっていきたい。
プライベートな庭を楽しみつつ、近隣との共有も意図
建物を袋路に開く形で配置、セミパブリックな空間である袋路に面して空地(庭)を設け樹木を植えることで、住宅内部からも庭を楽しめ、周辺世帯にも開いた心地よいオープンスペースになるよう考えた。
北側から見ると 「』(かっことじる)」の形をしたファサードに設けたパイン材を張った窪みは玄関で、ドアを開けると和室を介してウッドデッキ、その先にある庭のエゴノキが目に入る。小さな玄関と小さな和室、そして庭が一体に感じられるようにすることで、小ささや狭さを感じさせないよう意図している。
また、リビング・ダイニング・和室は庭を囲んで配置。庭に接する部分は全面掃き出しのサッシを採用し、和室の仕切り壁も可動する建具で造作、最大限に外部空間を取り込めるよう工夫している。キッチン・2階の寝室・子ども部屋、どの部屋も庭とつながるようにし、結果、庭が家の中心となっている。
このように内部からも外部からも楽しめる庭はプライベートな自宅のコートであるとともに、小規模な分譲地の中で近隣の住人たちと眺めを共有できるコートとも考えられるのかもしれない。
10年経った「』の家」
「』の家」は10年ほど前に竣工した住宅である。写真に写る男の子も現在14歳。半年ほど前、ご家族にお知らせすることもなく移転したわが設計事務所の隣にある武具屋さんに偶然ご家族で来られ、ガラス越しに図面を描いている私に気づいてもらい、久しぶりに再会をした。ご夫妻は変わらずだが、子どもたちは大きくなりその変化に驚き、10年という年月を感慨深く感じた。子どもたちの変化と同じように「』の家」にも変化があるだろう。久しぶりに「』の家」に伺ってみようと思う。
■建築DATA
構造規模/木造(在来工法)・2階建て
延床面積/103.95㎡(約31坪)