「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2019」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、宮城県石巻市で注文住宅を手がけるヒノケン株式会社です。


子に継ぐ100年住宅を目指して。
ていねいに住まいをデザイン

わたしたちは、空間(家のカタチ)・性能(家の心地よさ)・ライフスタイル(家への思い)の3つすべてを大切に考え、お客様とじっくり向き合いながら一棟一棟ていねいにつくることが住宅のデザインだと考えています。

そのために、日々進化する住宅性能に関する技術としっかり向き合うこと、宮城という地域の気候風土に根ざすこと、そして現代の生活スタイルを汲み取り生かすことを意識し、親から子へと安心して受け継がれる家づくりを心がけています。

家族構成や趣味嗜好で、ご家族のライフスタイルは異なります。ライフスタイルの違いから生まれた個性あふれる3つの住まいをご覧いただきましょう。

吹き抜けのリビングで、ゆったり。
庭と空を愛でる暮らし

3方向を住宅に囲まれている、北道路という立地を最大限に生かした住まいのコンセプトは「建物と庭の一体感」です。太陽の位置、風の向き、隣地の窓の位置、全てを考慮して、その土地の持っている可能性を十分に引き出したデザインを提案しました。

外構が周囲の景観と美しく調和。スタイリッシュなデザインと玄関まわりの木の素材感がやわらかな表情を魅せてくれる
外観は、周囲の景観と調和するよう外構も含めて設計。庭やライティングまでデザインすることで、住宅としての魅力が高まる

玄関を入るとすぐ目の前に見えるのが、正面に設けられた大きな窓の向こうにある庭の風景。帰宅した時、緑に癒されホッと心が和む空間です。家の中で感じられる木の香りや大きな窓からゆるやかにつづく庭の緑と空気感が、家族で過ごす時間を大切にした家づくりとなっています。光と風のとり入れ方や照明効果、素材の質感にまでこだわり、開放感あふれる住まいです。

珪藻土の塗り壁と木のぬくもりが優しく包み込むLDK。どこからでも庭が見える空間を演出
珪藻土の塗り壁と木のぬくもりが優しく包み込むLDK。どこからでも庭が見える空間を演出
リビングの見下ろし。外のテラスへとタイル貼りの床がつながっていく
リビングの見下ろし。外のテラスへとタイル張りの床がつながっていく
洗面室からも庭が見えるように工夫した
洗面室からも庭が見えるように工夫した
玄関に入ると正面に庭の植栽。ライトアップし、昼夜を問わずに庭を楽しめる
玄関に入ると正面に庭の植栽。ライトアップし、昼夜を問わずに庭を楽しめる

■建築DATA
仙台市・Oさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども2人
構造規模/木造(在来工法)・2階建て
延床面積/145.87㎡(約44坪)(ガレージ含む)

主な外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板、外壁/金属系サイディング 一部スギ板張、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:樹脂サッシ(トリプルガラス)
主な内部仕上げ
/ナラ無垢材、壁/クロス 一部珪藻土塗壁、天井/クロス
住宅性能
UA値:0.48W/KC値:0.2/

工事期間/平成2611月~平成272月(約4ヵ月)

 

住宅性能とデザインを両立した
中庭を囲む回廊のある家

Sさん宅は中庭をぐるりと囲むような回廊型の間取り。中庭を設けたことで建物の奥まで光が届き、どこにいても暗さを感じません。また、ピクチャーウィンドウとして風景を美しく切り取るFIX窓を適所に配置するなど、設計では「室内外のつながり」を重視しました。

平屋を思わせる外観デザイン。.庭に面した南側を低くし、奥の北側2階に居室をまとめた
平屋を思わせる外観デザイン。庭に面した南側を低くし、奥の北側2階に居室をまとめた
ピクチャーウィンドウ
ピクチャーウィンドウで、中庭をフレーミング。四季折々で変化する一枚の絵のような風景が楽しめる

冷暖房にはイニシャルコストやメンテナンス性も考慮して、第1種熱交換換気システムにヒートポンプ式エアコンを組み込んだ全館空調を採用。さらにメンテナンスが楽な外装材や設備機器の採用、家事動線への配慮、間取り変更がしやすい可動式収納など、なるべく手間や費用をかけないための工夫も満載です。

ダイニングテーブルはキッチンと一体化させたカウンタースタイルに。家事をしながら会話も弾む家族の光景が目に浮かぶ
ダイニングテーブルはキッチンと一体化させたカウンタースタイルに。家事をしながら会話も弾む家族の光景が目に浮かぶ
回遊動線の中心に置かれた中庭は、この家の象徴的な存在に
回遊動線の中心に置かれた中庭は、この家の象徴的な存在に
シンプルでスタイリッシュなデザインの内装デザイン。2階の窓からも中庭の木を感じられる
白を基調としたシンプルな内装デザイン。2階の窓からも中庭の木を感じられる

■建築DATA
東松島市・Sさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども1人
構造規模/木造(在来工法)・2階建て
延床面積/174.73㎡(約53坪)

□主な外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板、外壁/金属サイディング 一部塗壁、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:樹脂サッシ 一部木製サッシ(トリプルガラス)
□主な内部仕上げ
床/ナラ無垢材、壁/珪藻土、天井/クロス 一部レッドシダー張
□住宅性能
UA値:0.47W/㎡K、C値:0.2㎠/㎡

工事期間/平成26年10月~平成27年2月(約5ヵ月)

味わい深い経年変化と
変わらない心地よさが魅力

築9年を迎えたOさん宅。室内の印象が新築時とほとんど変わらないのに対し、総板張りで仕上げた外観は年月を重ねて味わいを増しました。これは建築当時にあえて塗装せず、自然の変化を楽しみましょうとご提案したもの。「想定通りに色合いが変わってきましたね」と味わい深い経年変化を楽しんでいただいています。

新築時の外観
新築当時の外観。外壁材は防火認定をクリアした国産天然木材
こちらは、新築当時のLDK
こちらは、新築当時のLDK

9年の歳月を経て黒みを帯びビンテージ感を高めた外壁。玄関ポーチと一体化したウッドデッキも味わいが増している
9年の歳月を経て黒みを帯びビンテージ感を高めた外壁。塗装なし&ノーメンテナンスで現在の経年美を実現した。玄関ポーチと一体化したウッドデッキも味わいが増している
フローリング材も少しずつ飴色に変化している
フローリング材は少しずつ飴色に変化。大きな吹き抜けと庭に開く大窓が明るさと開放感を演出している

ご夫婦ともに寒さが苦手ということで、暖房方式は低温水式パネルヒーターを採用しました。家のなかはムラなく程よく暖かく、温風でホコリが舞ったりもしないので、お子さんにも安心です。南から入ってくる海風が吹き抜け上部の北窓へと通り抜けるよう設計したことで、入居してから今までクーラー要らずの生活だそうです。 

造作の水まわり
造作の水まわりは、腐食もなく汚れも目立たない
低温水パネルヒーターによる全館暖房を採用しているが、ご主人のこだわりで薪ストーブも設置した
低温水パネルヒーターによる全館暖房を採用しているが、ご主人のこだわりで薪ストーブも設置した
主寝室からテラスと庭方向を見る。L字型の間取りはプライバシーの面でも安心
主寝室からテラスと庭方向を見る。L字形の間取りはプライバシーの面でも安心

■建築DATA
石巻市・Oさん宅
家族構成/夫婦30代、子ども2人
構造規模/木造(在来軸組工法)・2階建て
延床面積/154.00㎡(約46坪)(ガレージ含む)

□主な外部仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板、外壁/木板張、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:樹脂サッシ
□主な内部仕上げ
床/パイン無垢材、壁/漆喰、天井/クロス
□住宅性能
UA値:0.29W/㎡K、C値:0.2㎠/㎡

工事期間 平成21年2月~6月(約4ヵ月)