その昔、生粋の純和風の木造住宅しか建てたことがない大工さんが頑張って洋式の建物を建てたような、そんな家にしたい。
お施主様から投げ掛けられたこの言葉の真意を得るには少し時間がかかりましたが、それも今思えば大切な過程でした。「住まい手の求めているモノはなんだろう?」そのイメージの共有の大切さを改めて確認しました。私たちのご提案は独りよがりにならずに、住まい手の求めているものの延長にあるべき。押し付けではなくご提案。表面的ではなく、さらに深く、そして暮らしや趣味につながるものを、そう教えていただいたお家です。
敷地は閑静な、かつての新興住宅地にあります。その敷地の陽当たりをシミュレーションしながら、配置やボリュームを検討し、心地よい居場所のある暮らしを実現できるよう模索しました。忙しく過ごした後、リビングに腰をかけて庭を眺めるとホッとする。暮らし始められてしばらくしてそのお言葉を聞けた時、大切な過程から大切な結果に辿りついた気持ちになりました。
最後に〜Epilogue
私も自邸を建築しました!高断熱・高気密の家に暮らし始めて初めての冬。その寒さが忍び寄ってきましたが、家にいるとそれすら気づかない。 暖かい家のありがたみを痛感します。家族にとっても快適性は想像以上だったようで、前のアパートでの愛用品、褞袍(どてら)ともお別れを告げました(笑)。子どもたちに「この家の好きな所は?」とドキドキしながら聞いてみると、いくつか上げてくれましたが、いの一番は『暖かいところっ』と口を揃えて言ってくれます。
住まいは豊かな暮らしを受け取ってくれる器。心地よく暮らせるための工夫をいくつか仕掛けてまして、その思惑どおりに家族が過ごしてるのを見てはほくそ笑んでいますが、これがもし寒い家なら霧散していたことでしょう。先日、電気料金の請求がやってきました。アパート時代より安い金額をみて今度は家内がほくそ笑んでました(笑)