寒さと不便を解消するため、
スケルトンにしてリノベーション
10年前、Tさんご夫妻は結婚後の新居として、ご主人の実家の敷地内にあった空き家に注目します。そこは亡き曾祖父母が生活していた、築40年の小さな平屋。「建物があるなら活かそう」とご夫妻は簡単なリフォームを行い、新生活をスタートさせました。間もなくお子さんが誕生して暮らしが賑やかになる中、寒さや間取りの使いづらさに日々不便を感じていたそうです。
リノベーションに踏み切ったのは3年前でした。「子どもたちが成長して部屋が必要になったということもありますが、一番の理由は寒さです。断熱材が入っていないので冬が寒い。ずっと石油ストーブで凌いできましたが、身体にも環境にも良くないと思ったんです」とご主人。そこで、デザイン性の高いリノベーションを数多く手がけるシェルターに設計・施工を依頼。木造建築に定評があり、性能面にも不安はなかったといいます。
「冬でも暖かく、日中は明るい光が入り、家族のつながりを感じられる住まいにしたい」という要望を受け、シェルターでは、既存の躯体だけを残して間取りと内装を一新するスケルトンリフォームを提案。外壁と屋根はほとんどそのまま、でも一歩中に入ると別世界のようなご夫妻こだわりの住まいが実現しました。
古い家の面影を宿しながら、
今にふさわしい住まいをつくる
新しい住まいは、シンプルですっきりとしたデザイン。間仕切りや建具を極力使わず、リビングを中心に家全体がワンルームのようにつながっています。リビング中央に設けたロフトの高窓からは優しい光が降り注ぎ、家全体を明るく照らします。
ロフトはお子さんたちの遊び場兼勉強部屋。ロフトとその下のフリースペースを仕切ると、2つの個室が完成するようになっています。「初めから子ども部屋を与えるよりも、時機が来たら子どもたち自身で必要かどうかを考えればいいと思いました」とご主人。ライフステージの変化に、フレキシブルに対応できるよう配慮した設計です。
一番の悩みだった冬の寒さ対策には、室内側から新築同様の断熱材を充填し、断熱性能を高めました。ご主人たっての要望で設置した薪ストーブが、家を隅々まで暖めます。「どこにいても家族がつながってる感じがしますね。薪ストーブは寝た後も暖かく、夜中の授乳もストレスがありませんでした」と奥さんも笑顔で話します。
曽祖父母から住み継いだ思い入れのある家の面影を残しつつ、快適な住み心地を実現したリノベーション。新しい家族が増えた今、家族に優しく寄り添い、心豊かに暮らせる時間を育んでいます。
>>コーディネートのポイント
デンマークのメーカー「モルソー」の薪ストーブは、シンプルですっきりとしたデザインのTさんの家にぴったり。暖房としての心地よい暖かさはもちろん、お子さんと薪割りをしたり、ピザや焼きいもを焼いたりと、家族の暮らしの楽しみが広がるのも魅力です。〈(株)Shelterデザインセンター・田中研一さん〉
「屋根がつくる伸びやかな家」
山形県東根市・Tさん宅
家族構成/夫婦30代、子ども3人■建築DATA
構造規模/木造・平屋建て(築40年)
リノベーション面積/約88.47㎡(約27坪)
工事期間/約3ヵ月