着衣量クロ値が増えると表面温度が下がる
着衣量は、皮膚表面と着衣表面の温度差を変化させます。皮膚と着衣の間の空間は32℃、相対湿度50%程度の時にもっとも快適と言われています。着衣量を減らせば着衣表面温度は高くなって皮膚表面温度に近づき、着衣量を増やせば着衣表面温度は低下します。着衣表面温度が低いほど外界への放熱量は減少するので、着衣量を増やせば逃げにくくなるのです。
着衣の程度を表すのに、スーツ姿程度を1としたクロ値がよく使われます(図6)。着衣は個人がかなり自由に調整できるので、便利です。ただし、家の中で違和感なく身に着けられるのは、夏場で0.3〜0.5クロ、冬場でも1クロといったところでしょうか。
環境4要素・冬は空気と放射がメイン
人間側の代謝量(メット値)でノルマの放熱量が決まり、着衣量(クロ値)で着衣の表面温度が決まります。冬場において着衣表面から周辺環境への放熱は、周りの空気への対流と、周辺物への放射により主に行われます。周辺の空気や周辺物の表面温度(放射温度)が低いので、蒸散や呼吸による放熱がなくても十分に放熱ができているわけです。
快適指標PMVは代謝熱と放熱のバランス
こうして、人体側の2要素と環境側の4要素で、人体の代謝熱と放熱のバランスを評価することができます。さまざまな研究が行われていますが、ここではもっとも有名なPMVモデルを使ってみましょう。図7に示すPMVモデルでは、人間が快適と感じる皮膚表面温度と発汗状態において、代謝熱量=放熱量のバランスが成立しているときをゼロとしています。代謝熱量<放熱量であれば熱が逃げすぎている「寒い」マイナス側、代謝熱量<放熱量であれば熱がこもりすぎている「暑い」プラス側としています。
PMVの熱バランスに対して、不満と感じる人の比率を予測したものが不満者率PPDです。当然ながら、PMVがマイナス(寒)やプラス(暑)に大きくふれるほど、不満を感じる人は増えています。面白いのは、PMVゼロの熱バランスが成立している状態でも、5%の人は不満を感じているということです。温熱感は個人差が大きく、全員が満足する環境はない、というのがこれまでの研究の結論です。とはいえ、不満者率PPDが10%以下であれば、ほとんどの人にとって十分に快適と言えるでしょう。
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