リノベーションして住むことを前提に、築20年の中古マンションを購入したSさん。「欧米の家によくあるスタジオルームのような、部屋の区切りがなく一つの大空間になっている間取りに憧れていたので、広さのある物件を探しました」と言うとおり、手に入れたのは約25坪、4LDKの広々としたマンションです。
「中古の戸建てだと構造上取り外せない柱や壁があり、大空間の間取りを実現するのは難しい面があります。その点、マンションなら空間のすべてをスケルトンにしてから自由な間取りを創り上げることができるのが魅力でした」。中古マンションのリノベーションを選択した理由を、そう語ってくれました。
リノベーション後は、1LDK+ウォークインクローゼットへと大胆な間取り変更がなされています。元は仕切られていたリビング・ダイニング、キッチン、和室、洋室の壁を取り払い、27帖もの大空間LDKを実現しました。
「とにかく大きい空間がほしかったので、本当はバスルームも寝室も仕切りをなくしてワンルームにしたかったのですが、さすがに妻に反対されました」と苦笑するSさん。ですが、思い描いていたとおり、夫婦二人でゆったりと暮らせる住まいへと変貌を遂げました。
この家の最大の特徴といえるのが、壁や天井、建具などにさまざまな左官仕上げが施されている点。「フロアシートやクロスなどの貼り物は使いたくなかったんです。クレア工業さんの本業は左官屋さんだというのも、リノベーションを依頼した大きな理由の一つでした」とSさんは言います。
多い時には最大で6名の左官職人が現場入りし、パーツごとに材料や塗り方を変えて仕上げられたというSさん宅。3種類の漆喰を使い分けた白壁を筆頭に、左官業界で今注目されている日本、ドイツ、ベルギー製の左官材が各所に用いられています。例えばキッチンや洗面カウンターなどには、防水性があり、表面強度も強く、水まわりに最適なベルギー製のセメント系左官材を採用しました。
塗り壁はパターンが一緒でも全く同じ柄にならないため、世界に一つだけの風合いを楽しめるのが左官仕上げの良さ。加えて「漆喰の面が多いので、焼肉をしても匂いが残らないし、空気がきれいに感じられます。以前のビニールクロスの家と比べて格段に快適です」とSさん。
適材適所の左官材選びと、創業以来50余年にわたり培った左官技術を駆使し、施主の好みに合わせて塗り上げる―。まさにリクレアならではのこだわりと矜持が詰まった住まいです。