地球上でさまざまな災害を引き起こしている気候変動は、人の営みや経済活動によって排出されるCO2量の増加が一因とされています。その状況を改善するために、今、食や自動車、衣料品などさまざまな分野で「脱炭素化」への取り組みが活発化していますが、それは住宅でも同じです。 今回は「住宅のIoT(アイオーティー)」をテーマに、注文住宅における現状、メリットや注意点をご紹介します。
「住宅のIoT」とは?
「IoT」とは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と言われる「さまざまなモノをインターネットやネットワークに接続する技術」のことです。
住宅におけるIoTは、家で使われるさまざまなデバイスやシステムがインターネットを介して相互に通信し、制御される技術を指します。住宅内の機能やデバイスのスマート化によって生活の質を向上させ、よりエネルギー効率の良い快適な住環境をつくることを目的としています。
「住宅のIoT」の主な目的と機能
「住宅のIoT」は、使用目的によっていくつかの機能が挙げられます。
住宅の利便性を高める「スマートホームデバイス」
住宅内のさまざまな設備や機能をインターネットを介してコントロールするためのIoTで、ユーザーがスマートフォンやタブレットを使って遠隔で制御したり、予約や自動化設定を行ったりできる家庭内のデバイスです。
例えば、スマートライト(照明)、スマートロック(玄関の鍵)、スマートカメラ(子どもや高齢者、ペットの見守りカメラ)などがあります。
省エネ・省コストを助ける「エネルギー管理」
IoTは、住宅におけるエネルギーの使用を最適化するためにも利用されます。例えば「スマートサーモスタット」は、AI(人工知能)が家の環境や住まい手の行動パターンを学習し、住まい手の好みに合わせて暖冷房を制御して室温を最適化し、エネルギーの無駄を削減。また、太陽光発電や蓄電池などの再生可能エネルギーシステムもIoTと組み合わせて機能します。
住まいの安全を守る「セキュリティーシステム」
住宅のセキュリティーシステムも、IoT技術によって身近なものになりつつあります。「スマートホームセキュリティーシステム」は、ネットワーク経由で監視カメラ、センサー、アラームなどを連携させ、周囲での不審な人の動きや住居への侵入を検知して警告。住まい手はリアルタイムで家のセキュリティー状態を監視できますし、何かあったときに迅速に対応しやすくなります。
健やかな生活を支える「健康モニタリング」
「家をより快適に、便利にすること」を目的に開発が進んできた住宅のIoTですが、今は「健康を支える」という面も注目され、住まい手の健康状態のモニタリングにも利用されます。家では行動や時間帯がある程度習慣化するため、住宅設備機器に組み込んだセンサーなどで、日常の活動量や睡眠パターン、心拍数などの基本データが取得しやすく、医療専門家との情報共有もスムーズにできます。
「住宅のIoT」のメリットと注意点
暮らしの利便性を高める住宅のIoTですが、やはりメリットがあれば、注意点もあります。導入に際してはさまざまな角度から検討して判断したうえで、安全かつ信頼性の高いシステムを構築することが重要です。
住宅のIoT 6つのメリット
01 暮らしが快適で便利になる
IoTデバイスは、住まい手がリモートで家の中の設備機器を制御できるため、安心感が持てて、生活がより便利になります。例えば、真夏に外出先から帰宅する少し前にスマートフォンでエアコンのスイッチを入れておいたり、外にいながら鍵の締め忘れや照明の消し忘れを確認したりできます。
02 省エネで光熱費が削減できる
住まいのIoT化は、家で使うエネルギーの効率を向上させ、省エネ効果をもたらします。スマートサーモスタットによって、住まい手の行動に合わせて暖房や冷房を最適化したり、採用する給湯・暖房システムによっては、その時々で価格メリットのある熱源を自動で選択したりと、結果として光熱費の削減につながります。
03 不在時の様子を確認できる
IoTを生かした監視カメラ、センサー、アラームなどの組み合わせで、誰でも比較的手軽に家のセキュリティーを強化できます。リモートでリアルタイムのモニタリングができ、不審な活動が検知されると住まい手に通知が届く仕組みも利用できます。
04 健康維持がしやすくなる
普通に暮らしているだけで住まい手の健康状態をモニタリングでき、必要に応じて遠方に暮らす家族や医療専門家とそのデータを共有することが可能に。そのため、健康問題を早期に発見したり、管理をすることが可能になります。
05 生活空間を自分好みにカスタマイズしやすい
室温や照明の色などをAIが学習して、住まい手の好みや習慣に基づいて設備機器が自動で最適化されるため、個々の生活スタイルに合った住環境が自分で手を加えることなくカスタマイズできます。スマートスピーカーを連携させれば、音声認識で操作も可能です。
06 生活データの収集や分析がしやすい
IoTデバイスを生かすと、一年を通した住宅の消費エネルギーや体調の変化など、さまざまなデータを手軽に収集して分析できます。データを上手に活かせれば自分や家族の生活パターンや習慣を数値を通して可視化でき、より効果的な選択や判断につながるでしょう。
住宅のIoT 5つの注意点
01 IT関連セキュリティーへの懸念
スマートホームデバイスやネットワークに接続されたIoTは、セキュリティー面で脆弱性を持つ可能性があります。外部から不正にこれらのデバイスにアクセスされてしまうと、プライバシーの侵害や物理的な危険にさらされるリスクが考えられます。
02 個人情報保護の問題
例えば、家庭内での会話が録音されるスマートスピーカーなど、IoTデバイスの設定によっては思いがけずにデータが収集されて、クラウドに送信されることも。さらにそういったデータに不正にアクセスされたり、情報が悪用されたりするリスクもあります。
03 不十分な標準化による不便
現在は、メーカーごとに異なるプロトコルや標準を採用しているケースが多く、IoTデバイス同士がうまく連携できないことがあります。その場合、住まい手は異なるアプリやプラットフォームを使って複数のデバイスを管理することになり、環境が複雑化します。
04 基本的な構造や操作方法への理解不足
IoTを使うことが日常になると、いざ停電や故障などでIoTが機能しないときに対応できず、困ることも。必ず設備機器の基本構造や使い方を頭に入れ、手動やアナログ方法でも操作できるようにしておく必要があります。
05 アップデートとサポートの問題
IoTデバイスは、PCやスマホ同様に定期的なソフトウェアアップデートが必要ですが、メーカーが製品のサポートを終了したり、アップデートを提供しなかったりすると、セキュリティーのリスクが高まります。また、アップデート時に互換性の問題が生じることもあります。
住宅のIoT化によって暮らしが便利になる一方で、かえって不便が生じるケースもあります。家づくりでは基本的な機能や仕組みを頭に入れたうえで、自分たちの暮らしに必要なシステムを選択し、より快適な家づくりにつなげてくださいね。
(文/Replan編集部)