光や外からの視線を遮るために、住宅に欠かせない「ウィンドウトリートメント」。昔は「カーテン」が一般的でしたが、今はさまざまな選択肢があります。
特に最近注目で、商品の進化が目覚ましいのが「バーチカルブラインド(縦型ブラインド)」です。今回はそのメリットや選び方のポイントをインテリアコーディネーターの本間純子さんに教えていただきます。
「バーチカルブラインド」とは?
「ブラインド」というと、スラット(羽根)が水平で、その回転角度によって光の量を調整する「ベネシャンブラインド(横型ブラインド)」を思い浮かべる人が多いと思いますが、今回ご紹介するのは「バーチカルブラインド(縦型ブラインド)」です。
「バーチカルブラインド」は、名前のとおり、垂直(バーチカル)に並ぶルーバー※を左右に開閉して光の量をコントロールし、明るさやまぶしさを調整するブラインドです。
※インテリア事典とインテリアテキストに基づくと、羽根の呼称はベネシャンブラインド(横型ブラインド)では「スラット」とバーチカルブラインド(縦型ブラインド)では「ルーバー」です
クリニックや事務所など、非住宅の建物で使われるイメージが強いかもしれないですが、ヘッドレールの軽量小型化や、色柄豊富な織物(布)のルーバーや透け感のあるレース生地などの登場で、住宅のインテリアになじみやすくなりました。
また空間がスタイリッシュな印象に仕上がるので、シンプルモダンなデザインが好まれる現代の住宅建築と相性が良いという点も、採用が増えている大きな理由でしょう。
「バーチカルブラインド」を住宅で使うメリット・魅力
メリット1:光の量が調節しやすい
ブラインドの一番の特徴は、「光の量を調節し、室内の明るさやまぶしさを繊細にコントロールすることができること」です。ルーバーに遮光性の高い生地を選べば、室内をかなり暗くすることもできますし、レース生地のルーバーにして、やわらかな明るさを演出することもできます。
メリット2:部屋をすっきりと見せられる
窓に「ドレープカーテン+レース」を組み合わせるには、室内壁(窓)から15〜20㎝ほどカーテンのスペース(出代)が必要です。その点バーチカルブラインドは、ルーバーの幅=出代(奥行)で、その寸法は10㎝程度です。パネルヒーターと窓の間に、ウィンドウトリートメントを収めるようにプランするなど、「奥行きを小さく抑えたい」、「室内空間をできるだけ広く確保したい」という場合にメリットを発揮します。
メリット3:スタイリッシュな印象に仕上がる
住宅用バーチカルブラインドは、アルミ製の羽根のベネシャンブラインドよりもソフトな雰囲気であり、素材が同じ布製の「ドレープカーテン+レース」よりも、スタイリッシュな装いです。
そのためシンプルモダン志向の現代のインテリアとの相性が良く、実際に近年人気が高まっています。ルーバーの多色展開によって個性的な配色も可能で、施主自身でルーバーの位置を変えて、配色の変化を楽しむこともできます。
メリット4:1枚から洗えて、交換もできる
ウィンドウトリートメントは汚れも気になるところ。バーチカルブラインドは、ルーバーが汚れたら外して端からクルクル巻き、洗濯ネットに入れ洗濯機で洗えるので、メンテナンスは比較的容易です。傷んだルーバーだけを交換することもできます。
「バーチカルブラインド」のデメリットや注意点と、その対策
デメリット1:開閉時、しばらく揺れる
開閉のためにルーバーを動かすと、しばらく揺れます。風によっても揺れますし、急いで開けたり閉めたりすると、なかなか揺れが止まりません。私は揺れを見ていると、乗り物酔いのような気持ちの悪さを感じることがあります(笑)。「スペーサーコード※」をつけると、揺れが早く収まります。
※スペーサーコードとは?
バーチカルブラインドのルーバーは、ヘッドレールのランナーに1枚ずつ接続していて、裾にはウエイトが付いています。ルーバーはこのウエイトで安定させていますが、強い風でルーバー同士が絡まったり、開閉時の揺れが収まりにくいことがあります。その問題を解消するのが「スペーサーコード(ボトムコード)」です。ルーバーのウエイト付近をこれで順につなぐと、絡まりが防げて、揺れを早めに落ち着かせることができます。
デメリット2:ルーバーの間から室内が見えやすい
これは夜間などの室内が外より明るい場合ですが、ルーバーの角度によっては、室内が見えます。ベネシャンブラインドでも同じですが、ルーバーごとの間隔が広いバーチカルブラインドのほうが、より見えやすいです。
気になる方は「厚地+レース」仕様(バックレース、センターレース、ペア アンサンブル)のものを選ぶと、外から室内が見えにくくなります。ルーバーごとの重なりが深い仕様でも、室内が見えにくくなる効果が期待できます。
デメリット3:カーテンよりは断熱性に乏しい
ドレープカーテンはそれなりに厚みのある一枚の布でできているため、冬は窓からの冷気を遮断します。その点、バーチカルブラインドはルーバー間に隙間があって空気が動くため、ドレープカーテンよりは断熱性に乏しいといえます。
またルーバー間の空気の流れによって、弱い風を感じることがあります。これはベネシャンブラインドも同様です。
- ルーバーの重なりを深くする
- 「厚地+レース」仕様を選ぶ
などの工夫で空気の流れを少なくすると、弱い風は感じにくくなります。
デメリット4:自力で修理するのが難しい
ブラインドやロールスクリーン全般に言えることですが、
- ルーバーが回転しない
- 開かない
- 閉じない
- チェーンが切れた
などの不具合は自力で直すのが難しいため、メーカーに対応を依頼する必要があります。直るまで使えない状態になりますので、不具合が出たら早急にメーカー、または取り付け業者に連絡して対応を依頼しましょう。
相性の良い窓・良くない窓
バーチカルブラインドは、その特徴から相性の良い窓と良くない窓があります。私見ではありますが、参考にしてみてください。
【相性 ◎】 掃き出し窓(テラス窓、フランス窓)
バーチカルブラインドは、縦の長さがあるほうが見栄えがするので、「床までの高さがあって出入りが可能な掃き出し窓」と相性が良いです。天井から床までの高さ寸法のバーチカルブラインドは、天井を高く、空間を広く見せる効果があります。
引き違い窓でも、縦すべり出し窓でも開き方は問いません。スペーサーコードなしにすると、出入りが自由になります。スペーサーコードありの場合は、出入り側が開くように、開閉仕様を決めます。
【相性 ◯】 高さのある腰窓
天井近くから付いている腰窓との相性も良いです。窓の幅がある場合(横に長い窓)は、ルーバーの縦ラインが連続してより美しく見えます。窓の幅が広い場合は、開閉の際の移動距離が長くなるバトン操作よりも、コード(チェーン)操作か電動操作が適しています。
【相性 ◯】 大きな高窓(ハイサイドライト)
高い位置にある大きい窓で、日射量を調整したい窓に向いています。下の窓にバーチカルブラインドを付けている場合は、上下をそろえるとスッキリとまとまって、美しく見えます。
高窓に付けたバーチカルブラインドは、コード(チェーン)操作は可能ですが、サイズが大きいとその分重量もあってかなり力が必要。操作するパーツにも大きな負荷がかかって故障しやすいので、電動操作が便利です。
家づくりの際、高窓の近くにあらかじめコンセントを用意しておくと、電動操作が可能なブラインドやロールスクリーンなどが、電気工事なしで設置できます。
【相性 △】小さな窓、縦or横に細長い窓
小さな窓や縦に長く幅の狭い窓は、必要なルーバーの数が少なく、バーチカルブラインドの魅力が生かされません。横に長く高さのない窓も、ベネシャンブラインドやロールスクリーンを組み合わせたほうが、機能も見た目も効果的です。
【相性 △】内開き窓
バーチカルブラインドに限らず、ウィンドウトリートメントの選定や取り付けには要注意です。窓を開くとルーバーに当たってしまいますので、バーチカルブラインドを付ける場合は、バーチカルブラインドを窓から離してたたむなどの工夫が必要です。
バーチカルブラインドを選ぶときの5つのポイント
1. デザイン
最近のバーチカルブラインドは、デザインが豊富。ベーシックな色柄はもちろん、空間のテイストやデザイン、住まい手の好みに合わせたさまざまなタイプが選べます。
2. ルーバーの幅
ストレートタイプのルーバー幅の標準は100㎜幅。メーカーや生地、仕様によって75㎜・80㎜等もあります。サイズが小さめの窓の場合は、幅狭タイプのほうがバランス良く仕上がります。
また、窓とパネルヒーターの間にルーバーを落とすように取り付ける場合も幅狭タイプがおすすめ。パネルヒーターと窓の間の幅を狭くできるので、その分スペースや通路の面積を広くできます。
3. スペーサーコード(ボトムコード)の有無
先ほども触れましたが、スペーサーコードを付けると、強い風によるルーバー同士の絡まりや、開閉時の揺れを抑えやすい、というメリットがあります。
スペーサーコードなしのメリットは、「バーチカルブラインドのどこからでもルーバーを引き分けて出入りできる」こと。出入りが多い掃き出し窓やテラス窓と組み合わせる場合は、スペーサーコードがないほうが便利です。
ただ、常に同じところを引き分けていると、ルーバーの左右が擦れてほつれたり、そこだけ汚れてしまうことも。面倒でもブラインドを一旦開けて通ったほうが、故障や不具合などのトラブルが減らせます。
4. 左右に引き分ける or 片側に寄せる
カーテンと同じで、バーチカルブラインドもルーバーを「左右に引き分ける」または「片側に寄せる」の2パターンの開閉方法が考えられます。基本的には
- 窓のサイズ
- 窓からの出入りの有無、頻度
- ブラインドを開けたときの「たたみ代」の納まり
などを踏まえて検討します。
大きな窓につけたバーチカルブラインドを「片側に寄せる」場合は特に、「たたみ代(ブラインドを開けたときにできるルーバーの束の厚み)」をあらかじめ計算しましょう。
というのは、取り付け方によっては、ブラインド開けた際に、ルーバーの束が窓ガラスに大幅に被ってしまうことがあるためです。窓の横に壁の余白がある場合は、レールを延ばしてたたみ代を壁面に逃すのも手です。開閉方法は、取り付け後は変更ができませんので、使い勝手をイメージしながら慎重に決めましょう。
5. 操作方法
- バトン操作
- コード(チェーン)操作
- 電動操作
の3種類があります。
A. バトン操作
「バトン」による押し引きで開閉する方法。一般的なカーテンを開閉する感覚に似ていて、直感的に使えます。掃き出し窓の出入りや窓の開け閉めなど、次の動作に移りやすいのも大きなメリットです。ルーバーの角度調整は、バトンを回すタイプと、バトン(角度調整)+コード(開閉)のタイプがあります。
B. コード(チェーン)操作
自分自身は移動せず、コード(チェーン)を引いて操作する開閉方式は、大きな窓やハイサイドライト(高窓)でも使えます。
ルーバーの角度調整には「回転用グリップ」か「回転用コード」を使うタイプが多いですが、開閉と角度調整が一つのチェーンでできる仕様の商品もあります。これだとチェーンとコードが絡まったり、操作を誤ったりすることがなく、見た目もすっきりします。
なお、コード(チェーン)は床近くまで長くすると、何かの折に引っかけてしまったり、子どもの事故につながったりする恐れがあります。コードクリップで止める、高めの位置にとどまる長さに設定するなどしておくと、安心です。
C. 電動操作
複数のバーチカルブラインドを一度に操作したい場合や、手が届きにくい吹き抜けのハイサイドライトなどには、リモコン操作による電動式がおすすめです。
ただこの場合は、窓付近への電源コンセントの取り付けが必須なので、基本的には新築やリノベーションの設計段階で電動式ブラインドの取り付けを決めておく必要があります。
とはいえ、プランニング段階ではまだそこまで考えが及ばず、住んで初めて吹き抜けの窓からの陽射しの強さに気づいて困ってしまう、というケースも多く見られます。ベネシャンブラインドやロールスクリーンにも電動式はありますので、どのウィンドウトリートメントを選ぶにせよ、設計段階で吹き抜けの大きな窓に電源コンセントを付けておくと、対策の選択肢が広がります。
入居後の電気工事は、露出配線で見栄えが悪くなりますし、工事費もかかります。家づくりではあらかじめ「高窓の横」や「カーテンボックスの内側」などにコンセントを設置しておくと、後付けでも見栄えよく仕上がりますし、結果として工事費を少なく抑えられます。