太陽光発電、大ピンチ?
震災以降の電力需給の逼迫を受け、国は太陽光発電の普及を強力に後押ししました。電気ほど使いやすいエネルギーは滅多にないのですから、屋根に載せるだけで電気が直接得られる太陽光発電自体は大変素晴らしい自然エネルギー利用技術です。しかし、その急激な普及は問題を起こしています。
天気のよい日に太陽光発電を載せた家が一斉に電気を送り出す(逆潮流)一方で、電気を使う人が少ない場合に、系統に電気があふれてパンクしてしまうのです(図10)。特に、昨年夏に九州電力が系統連携を保留すると発表して、大騒ぎになりました。これまでは目一杯大きな太陽光発電を屋根に置いて、できた電気を系統に売りまくるのが一番合理的でしたが、これからは難しくなりそうです。
電力の送電線は、需要が少ないほど細くつくられています。ところが、需要が少なかった郊外の地域は太陽や風に恵まれている場合が多いものです。需要がなかったところから突然大量の電気が湧いてきたとしても、従来の貧弱な電力網は受け止めようがないのです。系統への負担を減らすには、住宅ごとに電気を貯めるのが一番ですが、なにぶん蓄電池は高価。寿命まで考えると簡単にペイするものではありません。いかに系統に負担をかけずに太陽光発電を増やしていくか、大きなテーマになるのは間違いないでしょう。
電力自由化。電気代は安くなる?
エネルギー業界の最大関心事は、この「電力自由化」です。2016年度からは、住宅でも電気を買う相手を自由に選べるようになるそうです。今までの地域の電力会社以外にも多くの小売事業者が参入し、今までにない料金体系や電力以外のサービスとのセット販売など、多くの提案がなされるでしょう。海外では、以前より自由化が進んでいる地域があります。そうした先行事例についてもレビューしてみたいと思います。
センシング技術
最後に取り上げたいのは、センシング、つまり計測や知覚です。これは建物性能そのものを改善するわけではありませんが、筆者は非常に重要だと思っています。温熱環境や空気質が悪い場所にいれば、不快だということは誰でも気づきます。しかし、その原因が何なのか、どれくらいひどいのか、なかなか理解することはできません。
昨年(2014年)、iPhoneに接続できる簡易な赤外線カメラが話題になりました(図11)。室外や屋内の温湿度や空気質を計測してくれる分かりやすい装置も登場しています。ネット上のアップルストアやアマゾンでごく簡単に入手でき、価格もかなり手頃です。
こうした機器のほとんどは、インターネットへの接続を前提としています。設置した本人はどこからでもアクセスできるのは当然として、他人とデータをシェアすることも極めて容易です。操作画面もカッコよく、従来の計測は難しくてダサい、という固定観念を変えてくれます。測ることはカッコよくて楽しい、エンターテイメントになるのです。温度や空気質が「可視化」されることで、自分の住む環境に対して意識的になることが期待されます。
残念ながら、こうしたセンシングや制御の分野は欧米ベンチャーにほぼ独占されている状況です。日本メーカーが何もやっていない、というわけではないのですが、どうも自社製品の囲い込みが優先する「セコさ」が気になります。現在のネット社会では制御ロジックをオープンにして、ユーザーにどんどん活用方法を考えてもらう、というほうが結局は広く普及するのです。
日本のメーカーの中にもようやく、ユーザーが自由に組み合わせられるブロックのような制御部品を使って、住まい方の提案を考えるような企画が見られるようになりました。現代社会で一番革新が進んでいるのは、こうした情報産業やセンシング機器です。その最新トレンドにもキャッチアップしたいと思います。
以上、今後の連載で取り上げてみたいテーマをいくつか上げてみました。住宅にはまだまだできることがあります。「家はもっと人のためになれる」をテーマに、一緒に住宅の未来を見ていきましょう。
※次回のテーマは<窓の進化>です。
【バックナンバー】
vol.001/断熱・気密の次の注目ポイント!蓄熱大研究
vol.002/暖房の歴史と科学
vol.003/太陽エネルギー活用、そのファイナルアンサーは?
vol.004/「湯水のごとく」なんてとんでもない!給湯こそ省エネ・健康のカギ
vol.005/私たちの家のミライ
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