超空気質

人間は食料がなくても30日は生きられるそうです。水がないともっと大変ですが、それでも3日は大丈夫。しかし空気は3分なければ死んでしまいます。かように空気は人間にとって不可欠であり、室内の空気をキレイに保つことは住宅の機能の中でも最重要のはず。しかしなぜか、日本ではこの空気質がまともに扱われていません。

2000年頃に、建材から出る化学物質による体調不良、いわゆるシックハウス問題が注目されました。建材の化学物質が規制されるとともに、建築基準法により常時24時間換気の設置が義務化されたのですが、義務化されたのはあくまで「設置」であり、「運転」ではありません。建築基準法に従って仕方なく設置したけど、電気代がもったいないから運転なんかしなくていいですよ……などとアドバイスする住宅供給者さえいるそうです。

よく日本人は自然を愛し繊細な感性をもっているといいます。しかし、空気をキレイにするというと、「空気清浄機」を連想する人が多いのではないでしょうか。確かに空気清浄機は室内の花粉や微量の汚染物質を除去します。しかし、人間に不可欠な酸素を外から取り込み、人間が吐き出したCO2を排出する、という最も重要な仕事は何もしません。

そもそも、日本ではガスや石油を燃やした排気ガスを室内に直接吹き出す「開放型」暖房機が主流。膨大なCO2や酸化窒素・酸化硫黄などの汚染物質が室内へ盛大にぶちまけられているわけです(図8)。欧米では室内の空気を清浄に保つ換気装置はとても重視されており、見た目にも重厚で「設備の王様」といった風格があります(図9)。

図8 見えない空気を可視化せよ
図8 見えない空気を可視化せよ
換気が重視されない要因の一つに、空気の汚れ具合が分かりにくいことがあります。最近では、室内の温湿度だけでなく、CO2濃度も常時モニターできる、安価で見た目もクールな計測機が登場しています。
図9 換気装置は設備の王様
図9 換気装置は設備の王様
キレイな空気は人間にとって最も重要なはずですが、日本では換気装置はゾンザイに扱われています。海外では換気装置は重厚で、確実に清潔な外気を届けることが重視されています。最近では、暖冷房・給湯装置が組み込まれたり、窓枠と組み合わせた製品などが登場しています。

一方で日本のものは「換気扇」に毛が生えた程度の頼りないものがほとんどです。換気の本来あるべき姿を追いかけていきましょう。

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