「良いデザインの家」とは、見た目も間取りも、省エネ・省コストにつながる住宅性能も、トータルに考えデザインされた家。Replanでは「美しく暮らす 東北のデザイン住宅2023」の発刊に合わせて、そんな家づくりに取り組む東北の住まいのつくり手の声をお届けしていきます。今回は、青森県弘前市を拠点に注文住宅を手がける蟻塚学建築設計事務所の蟻塚 学さんです。
性能の良さも含めた美しい空間を
何かと不安定な時勢の中で、UA値0.28をクリアするような断熱性能が高く室内環境が安定した住宅のご依頼が続いています。コストバランスが取れるように効率的に性能を向上させるための研究を行い、昨年完成した新しい事務所でもサンプル空間として実践しています。
「住宅は生活のいれもの」であり、住宅の設計とは常にニュートラルなスタンスで住まい手の生活の風景を一つひとつ丁寧に積み上げていくような作業です。その中で、外とつながる開放感、無駄のない家事動線、温かみのある素材感などと並んで「熱的な快適さ」も美しい空間をつくる重要なポイントとしてとらえ、引き続き追求していきたいと考えています。
日々の成長を見守る、安定した不整形プラン
弘前市の市街地に立つ、ご夫婦とお子さん4人の計6人が暮らす住宅です。近所の子どもたちも庭で一緒に遊ぶような関係性もあり、望まれたのは安心して遊べる庭とそれぞれの個室、大きな収納スペースでした。
お話を聞きながらさまざまなプランを検討するうちに、玄関から客間、LDK、パントリーからなる平屋と、寝室と水まわり、クローゼットがまとまった2階建てで庭を挟む配置計画が出来上がりました。
結果としていびつな外形にはなりましたが、断熱材の入れ方をシミュレーションし、基礎と天井の断熱を強化することで効率的に外皮性能を高めることができています。
ここは、敷地南側で接道するいわゆる南向きの土地ですが、リビングの開口はあえて北側に大きく開いています。これは外皮性能を高めることで冬の熱損失を減らしていくうちに、冬の日射取得よりも夏のオーバーヒートの懸念が大きくなってきたためで、夏の日射を避けて冷房負荷を減らし、一年を通じて安定した光と温度の空間を目指しています。
素材は質の良いフローリング(ブラックウォールナット、カバザクラ)、拭き掃除などのお手入れのしやすいビニールクロス、湿度を調整してくれる漆喰塗りなど適材適所で全体の空間を整えています。
暑い夏も雪の多い冬も活発で楽しい生活を支える空間として、この先長い時間をかけて子どもたちの成長を安心して見守る住まいになることを願っています。
■建築DATA
青森県弘前市・Mさん宅
家族構成/夫婦40代、子ども4人
構造規模/木造・2階建て
延床面積/224.52㎡(約67坪)
設計/(株)蟻塚学建築設計事務所 蟻塚 学 漆山 里沙
施工/(株)堀江組
写真/西川 公朗
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